「人工弁で障害年金を受給した例を知りたい。」
「今から障害年金を申請するが、もらえる金額や認定基準を知りたい。」
そのようなご相談に向けて解説致します。
はじめまして。
この記事の執筆者 社会保険労務士の但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、12年以上(累計約3,500件)「人工弁など障害年金申請のサポート」に携わってまいりました。
人工弁で障害年金の申請を忘れていませんか?受給例・金額・認定基準を専門の女性社労士が解説します!
具体的にどうすれば、人工弁で障害年金を受給できるのでしょうか?以下の順でお話します。
- 申請するために大切なこと
- 受給事例
- もらえる金額
- 受給資格(認定基準)
人工弁で申請するために大切なこと
人工弁で障害年金を受給するために大切なことです。
- 臨床所見の自覚症状
- 他覚所見かつ異常検査所見
以上をしっかり確認してください。
また初診日が数年前の健康診断で指摘されており、古い記録になることも多くあります。
病院自体やカルテが既に無いなどの問題があり、「初診日確定」のために、診断を受けた医療機関をまとめていきましょう。
人工弁の障害年金受給例
最初に受給事例をいくつかご紹介いたします。
大動脈弁閉鎖不全症で障害厚生年金3級
認定 | 障害厚生年金3級 認定日請求 |
相談者 | 40代女性 埼玉県富士見市 |
傷病 | 大動脈弁閉鎖不全症 |
受給額 | 約70万円 |
1年程前にご依頼を受けた方(無事、障害厚生年金3級受給)からのご連絡。
奥様が会社の健康診断で心雑音を指摘され、精査の為受診。
精密検査で、中度から重度の大動脈弁閉鎖不全症と診断。
それ以前に指摘をうけたことはなく、又自覚症状も全くなかった為すごく驚かれたようです。
セカンドオピニオンで他院も受診。
手術適応の状態であるが、6か月の経過観察を指示。
しかし5か月後に「空咳、易疲労感、むくみ、しびれ」の症状が悪化し人工弁置換等の手術を受けることに。
初診日から1年6月を経過する前の「人工弁置換術」ですので、手術日を障害認定日とする特例で障害厚生年金を申請。
請求から決定まで77日間。
初診日が厚生年金加入中の方で、人工弁置換術を受けられた方は、就労されていても収入が高くても障害年金が受給できます。
まだまだ、人工弁で障害年金が申請できることをご存知ない方が多いと感じています。
ご自分が対象になるかどうか、ご相談ください。
特に大動脈弁閉鎖不全症の相談が多いため、受給例をまとめました。
大動脈弁閉鎖不全症の人工弁置換による、障害年金の相談も多くあります。
(感染性心内膜炎)僧帽弁人工弁置換で障害厚生年金3級
認定 | 障害厚生年金3級 事後重症請求 |
相談者 | 30代男性 東京都板橋区 |
傷病 | 感染性心内膜炎 |
受給額 | 約60万円 |
人工弁に置換の為入院中に、メールで障害年金についてお問い合わせ。
その後日本橋の事務所にてご相談。
初診日が12年以上前でしたが、そのときは厚生年金加入中でした。
障害厚生年金の請求に向けて準備に。
カルテは12年以上前のため、初診の大きな病院では既に廃棄。
数日後に受診された、近所の内科クリニックに残っており、無事受診状況等証明書を取得することができました!
人工弁の診断書も問題なくスムーズに準備が進み、障害厚生年金の申請。
請求から71日目で障害厚生年金3級受給。
心臓ペースメーカー、人工弁、ICD(植込み型除細動器)を装着されている方は、障害厚生年金3級に認定される可能性があります。
人工弁の障害年金はお仕事をされていても申請可能ですので、ぜひご相談ください。
大動脈弁狭窄症で障害厚生年金3級(遡及請求5年)
認定 | 障害厚生年金3級 遡及請求5年 |
相談者 | 60代男性 東京都府中市 |
傷病 | 大動脈弁狭窄症 |
受給額 | 約82万円 遡及金額450万円 |
初診日から3か月後に人工弁を装着。
人工弁装着日が障害認定日となる特例で、遡及請求が可能な事案でした。
人工弁装着が初診の1年6か月より後だった場合、事後重症の請求(初診日から1年6か月経った後の請求)になってしまいます。
遡及請求ができず、将来の分しか障害年金が受給できません。
それだけで人工弁置換術の障害年金の初回振り込み額に、数百万円の違いが出てきてしまいます。
今回、人工弁を装着していることだけでの請求(病状は安定していて、元気に働いていらっしゃいます)でした。
申出書を付け現症の診断書だけで遡及請求。
勿論、人工弁を装着するかどうかはご本人と医師の診断によります。
今回障害年金の5年遡及請求がかない、本当によかったです。
時効5年間により以前の分は、年金が遡及できず消滅してしまいました。
まだまだ人工弁で障害年金申請ができることを、ご存じない方がたくさんいらっしゃると思います。
ぜひご相談下さい。
人工弁で障害年金の金額はいくら
人工弁で障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?等級ごとの金額や加算される手当を解説していきます。
人工弁の障害基礎年金額
人工弁で障害年金が認定された後もらえる金額は、障害基礎年金か障害厚生年金かで異なります。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
もちろん全員が該当するわけではないのですが、まだ障害年金を請求していないとき、最大5年分遡ることができるのです。これを遡及請求(そきゅうせいきゅう)といいます。
障害等級 | 金額 |
障害基礎年金
1級 |
993,750円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
795,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。
一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 228,700円 |
3人目以降 | 1人につき 76,200円 |
人工弁の障害厚生年金額
人工弁で障害年金1級、2級に認定された場合、障害基礎年金に厚生年金が加算されます。
3級は厚生年金しかありません。
障害厚生年金の金額は、給与や厚生年金を納めていた期間(年齢)に比例するため、人により金額はまったく違います(給与30万円と45万円で1.5倍違います)。
障害基礎年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害基礎年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
596,300円/年
金額は一律 |
配偶者加給年金
人工弁で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるとき、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
228,700円 |
年金生活者支援給付金
人工弁の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
障害年金を受給した際「年金生活者支援給付金」が加算して支給されるようになりました。
年金生活者支援給付金は基礎年金も厚生年金も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
1級 | 月6,425円 |
2級 | 月5,140円 |
以上、もらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。
障害年金の受給が無事決まった後、金額はいくらもらえるのでしょうか?
心疾患の受給資格
受給資格を得るために以下の3つが大切になります。
初診日と保険料納付
- 初診日
- 保険料納付要件
- 認定基準
初診日と保険料納付要件まとめ。
障害年金をもらうために大切な3つの要件(初診日・保険料納付・認定基準)
心疾患の認定基準
※日本年金機構の「心疾患(弁疾患)障害年金認定基準」をわかりやすく加筆・修正。
受給資格を得るために大切なことは、心疾患の障害年金認定基準に該当するかどうかを十分に理解することです。
まず人工弁だけでなく、心疾患全体の障害年金認定基準です。
心疾患の認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とし、症状が以下のものが対象となります。
障害等級 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 身体の機能に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
心疾患による障害の程度は、呼吸困難・心悸亢進・尿量減少・夜間多尿・チアノーゼ・浮腫等の臨床症状・X線・心電図等の検査成績・一般状態、治療及び病状の経過等により総合的に判断。
人工弁も同じです。
異常検査所見があるもの全てについて、それに該当する心電図等を提出する形になります。
心疾患の生活状態などの区分表
心疾患の一般状態区分表(生活の状態などを当てはめるもの)になります。
区分 | 一 般 状 態 |
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 心身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
人工弁の認定基準
続いて人工弁(弁疾患)の障害年金認定基準。
障害等級 | 人工弁の障害状態 |
1級 | 病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 | 1.人工弁を装着術後、6ヶ月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床所見が5つ以上、かつ異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの
2.異常検査所見のうち2つ以上の所見、かつ病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの。 |
3級 | 1.人工弁を装着したもの 2.異常検査所見のうち1つ以上の所見、かつ病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの |
(注1)複数の人工弁置換術を受けている者にあっても、原則3級相当。
(注2)抗凝固薬使用による出血傾向については、重度のものを除き人工弁の認定対象としない。
人工弁(弁疾患)の年金申請はいろいろと複雑な点もあり、女性社労士が初回無料相談で受給判定や申請サポートをしています。
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第11節 心疾患による障害の程度は、次により認定する。
引用元:日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 11節 心疾患による障害