「呼吸器疾患で障害年金の対象となる傷病や、認定基準を知りたい」
このような疑問に、わかりやすくお答えします。
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、13年以上にわたり、累計約3,600件の「呼吸器疾患など障害年金申請のサポート」に携わってまいりました。
こちらでは、呼吸器疾患で障害年金の対象となる傷病と認定基準を解説しています。
肺結核・じん肺及び呼吸不全に区分されますが、病名よりも肺の機能や日常生活など、いろいろな観点からの判断となります。
対象となるのは「肺結核、じん肺、慢性気管支炎、気管支喘息、膿胸、肺線維症」などです。
呼吸器疾患の認定基準
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることがを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 (厚生年金のみ) |
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
肺結核
肺結核で障害年金を申請するための、認定基準について順番にお話します。
1.肺結核による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定。
2.肺結核の病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部x線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定。
3.病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
肺結核による障害については、次のとおり。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 認定の時期前6か月以内に常時排菌があり、胸部x線所見が日本結核病学会病型分類(以下「学会分類」という。)のⅠ型(広汎空洞型)又はⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
2級 | (1)認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの
(2)認定の時期前6か月以内に排菌があり、学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であるもので、かつ日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの |
3級 (厚生年金のみ) |
1 認定の時期前6か月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行しているもので、かつ労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの
2 認定の時期前6か月以内に排菌があり、学会分類Ⅳ型であるもので、かつ労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの |
4.肺結核に他の結核又は他の疾病が合併している場合、その合併症の軽重、治療法、従来の経過等を勘案した上、具体的な日常生活状況等を考慮するとともに、「障害の程度」及び「認定基準」を踏まえて、総合的に認定します。
5.肺結核及び肺結核後遺症の機能判定による障害の程度は、「呼吸不全」の認定要領によって認定します。
6.加療による胸郭変形は、それ自体は認定の対象となりませんが、肩関節の運動障害を伴う場合、本章「上肢の障害」として、その程度に応じて併合認定の取扱いを行います。
7.「抗結核剤による化学療法を施行しているもの」とは、少なくとも2剤以上の抗結核剤により、積極的な化学療法を施行しているものをいう。
じん肺
じん肺の認定基準についてお話します。
1.じん肺による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定。
2.じん肺の病状による障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定。
じん肺による障害については、次のとおりです。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 胸部x線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
2級 | 胸部x線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの |
3級 (厚生年金のみ) |
胸部x線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの |
3.じん肺の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定する。
呼吸不全
呼吸不全は、原因のいかんを問わず動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が異常値であり、そのため体が正常な機能を営み得なくなった状態をいいます。
呼吸器疾患の区分
1.認定の対象は、主に慢性呼吸不全です。
疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫・慢性気管支炎・気管支喘息・等、拘束性換気障害(間質性肺炎・肺結核後遺症・じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常等 多岐にわたります。
肺疾患のみが対象疾患ではありません。
2.呼吸不全の主要症状としては、咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等の自覚症状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見。
3.検査成績としては、動脈血ガス分析値、予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う運動負荷肺機能検査等があります。
4.動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと次のとおり。
なお、動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとする。
A表 動脈血ガス分析値
区分 | 検査項目 | 単位 | 軽度重症 | 中等度異常 | 高度異常 |
1 | 動脈血O2分圧 | Torr | 70~61 | 60~56 | 55以下 |
2 | 動脈血CO2分圧 | Torr | 46~50 | 51~59 | 60以上 |
(注)病状判定に際しては、動脈血O2分圧値を重視。
B表 予測肺活量1秒率
検査項目 | 単位 | 軽度重症; | 中等度異常 | 高度異常 |
予想肺活量 | % | 40~31 | 30~21 | 20以下 |
5.呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりで。
区分 | 一般状態 |
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
6.呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおり。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 前記4のA表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 | 前記4のA表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 (厚生年金のみ) |
前記4のA表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
なお、呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先するが、その他の検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。
7.慢性気管支喘息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況などを把握して、総合的に認定する。
8.在宅酸素療法を施行中のものについては、原則として次により取り扱う。
ア.常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級と認定。
なお、臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定。
イ.障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して1年6月以内の日に限る。)とする。
9.原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患については、前記4のA表及び認定時の具体的な日常生活状況等によって、総合的に認定。
10.慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは3級と認定。
なお、治療及び病状の経過、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定。
11.慢性肺疾患では、それぞれ個人の順応や代償という現象があり、また他方では、多臓器不全の病状も呈してくることから、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示すものとは言えない。
12.肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。
24時間の在宅酸素療法
呼吸器疾患の場合、24時間の在宅酸素療法を行っている場合、おおむねの目安で3級該当となります。
また在宅酸素療法を行っていない場合、動脈血ガス分析値や予測肺活量1秒率といった数値が一定の基準を超えていれば、これも3級です。
数値と日常生活
その後の2級、1級については、上記の数値がどれだけ悪化しているかや、通常の日常生活にどの程度影響や制限があるかで等級が決められます。
例えば、医師から自宅療養を指示されて外出もほとんどできなくなった状態が2級の目安です。
外出はできずに、行動自体が(寝たきりにはならなくても)ベッド周辺に限られる状態が1級となります。
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