
呼吸器疾患で障害年金はもらえる?
結論から申し上げますと、呼吸器疾患でも障害年金を受給できる可能性があります。
ただし、受給できるかどうかは病名だけでは決まりません。呼吸機能検査、動脈血ガス分析、在宅酸素療法の有無、日常生活への支障、診断書の内容を総合的に確認する必要があります。
「呼吸器疾患で障害年金の対象となるのか知りたい」
「肺結核・じん肺・呼吸不全の認定基準を確認したい」
「在宅酸素療法をしている場合、障害年金を受給できるのか知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方に向けて、専門家の視点から解説します。
このページでわかること
- 呼吸器疾患で障害年金の対象となる主な傷病
- 肺結核・じん肺・呼吸不全の認定基準
- 動脈血ガス分析値や予測肺活量1秒率の見方
- 在宅酸素療法をしている場合の取扱い
- 1級・2級・3級の目安
- 申請で大切な診断書と日常生活状況の整理
呼吸器疾患でも、適切に準備すれば障害年金を受給できる可能性があります。
肺結核、じん肺、慢性気管支炎、気管支喘息、膿胸、肺線維症、肺気腫、呼吸不全などが対象となることがあります。
この記事の内容は以下からすぐ確認できます。
執筆者紹介|障害年金専門社労士 但田美奈子
はじめまして。
当事務所で障害年金の申請サポートを担当しております、但田美奈子です。
経験15年以上・累計相談件数4,250件(令和8年8月末現在)・受給率97.8%。
呼吸器疾患をはじめ、さまざまな傷病による障害年金のご相談に対応してまいりました。
呼吸器疾患で障害年金の対象となる主な傷病
呼吸器疾患による障害年金では、主に次のような傷病が対象となる可能性があります。
- 肺結核
- じん肺
- 慢性気管支炎
- 気管支喘息
- 膿胸
- 肺線維症
- 間質性肺炎
- 肺気腫
- 呼吸不全
呼吸器疾患の障害年金は、病名だけではなく、肺の機能、検査数値、日常生活や仕事への支障などから総合的に判断されます。
呼吸器疾患の障害年金認定基準

呼吸器疾患の障害年金では、肺結核、じん肺、呼吸不全など、それぞれの状態に応じて認定基準が定められています。
| 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められ、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
| 2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められ、日常生活が著しい制限を受けるか、又は著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
| 3級 ※厚生年金のみ |
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
肺結核の認定基準

肺結核による障害の程度は、病状判定と機能判定により認定されます。
自覚症状、他覚所見、胸部X線所見、動脈血ガス分析値、排菌状態、一般状態、治療経過、年齢、合併症、日常生活状況などを総合的に確認します。
| 1級 | 認定時期前6か月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が重い状態で、かつ長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
| 2級 | 排菌や胸部X線所見、病巣の広がりなどを踏まえ、日常生活が著しい制限を受けるか、著しい制限を加えることを必要とするもの |
| 3級 ※厚生年金のみ |
積極的な抗結核薬による化学療法を施行しているものなどで、労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とするもの |
肺結核後遺症の機能判定については、呼吸不全の認定要領によって判断されます。
じん肺の認定基準

じん肺による障害の程度は、病状判定と機能判定により認定されます。
胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無、具体的な日常生活状況などを総合的に確認します。
| 1級 | 胸部X線所見が重い状態で、かつ長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
| 2級 | 胸部X線所見が重い状態で、かつ日常生活が著しい制限を受けるか、日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの |
| 3級 ※厚生年金のみ |
胸部X線所見が一定以上で、かつ労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とするもの |
じん肺の機能判定についても、呼吸不全の認定要領により判断されます。
呼吸不全の認定基準

呼吸不全とは、原因を問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が異常値であり、そのため身体が正常な機能を営み得なくなった状態をいいます。
認定の対象は、主に慢性呼吸不全です。
肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺などが関係することがあります。
動脈血ガス分析値
| 検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
| 動脈血O2分圧 | Torr | 70〜61 | 60〜56 | 55以下 |
| 動脈血CO2分圧 | Torr | 46〜50 | 51〜59 | 60以上 |
病状判定では、動脈血O2分圧値が重視されます。
予測肺活量1秒率
| 検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
| 予測肺活量1秒率 | % | 40〜31 | 30〜21 | 20以下 |
一般状態区分
| 区分 | 一般状態 |
| ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
| イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの。例えば、軽い家事、事務など |
| ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
| エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
| オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
呼吸不全の等級の目安
| 1級 | 動脈血ガス分析値や予測肺活量1秒率が高度異常を示し、かつ一般状態区分「オ」に該当するもの |
| 2級 | 動脈血ガス分析値や予測肺活量1秒率が中等度異常を示し、かつ一般状態区分「エ」又は「ウ」に該当するもの |
| 3級 ※厚生年金のみ |
動脈血ガス分析値や予測肺活量1秒率が軽度異常を示し、かつ一般状態区分「ウ」又は「イ」に該当するもの |
呼吸不全の障害の程度は、動脈血ガス分析値を優先しながら、その他の検査成績や日常生活状況も含めて総合的に判断されます。
在宅酸素療法をしている場合

常時、つまり24時間の在宅酸素療法を行っている場合、原則として3級に認定される可能性があります。
ただし、臨床症状、検査成績、具体的な日常生活状況によっては、さらに上位等級に認定されることがあります。
在宅酸素療法を開始した日が、初診日から1年6か月以内であれば、その開始日が障害認定日になることがあります。
呼吸器疾患の申請で大切なこと
呼吸器疾患で障害年金を申請する際は、次の点を整理することが大切です。
- 初診日がいつか
- 初診日に加入していた年金制度が国民年金か厚生年金か
- 保険料納付要件を満たしているか
- 動脈血ガス分析値
- 予測肺活量1秒率
- 在宅酸素療法の有無
- 息切れ、倦怠感、歩行や階段昇降の制限
- 日常生活や仕事への支障
- 診断書の内容
呼吸器疾患は、検査数値だけでなく、実際の日常生活や仕事にどの程度制限があるかを具体的に整理することが重要です。
よくあるご質問
Q. 呼吸器疾患でも障害年金を受給できますか?
受給できる可能性があります。肺結核、じん肺、慢性気管支炎、気管支喘息、膿胸、肺線維症、肺気腫、呼吸不全などで、検査数値や日常生活への支障が認定基準に該当するかを確認します。
Q. 在宅酸素療法をしていると障害年金の対象になりますか?
常時24時間の在宅酸素療法を行っている場合、原則として3級に認定される可能性があります。症状や日常生活状況によっては、さらに上位等級に認定されることがあります。
Q. 呼吸器疾患ではどの検査数値が重要ですか?
動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧、動脈血CO2分圧、予測肺活量1秒率などが重要です。
Q. 呼吸器疾患で2級になる目安はありますか?
検査成績が中等度異常を示し、一般状態区分が「ウ」又は「エ」に該当するような場合、2級に認定される可能性があります。
Q. 働いていると呼吸器疾患の障害年金は難しいですか?
働いていることだけで直ちに対象外になるわけではありません。ただし、仕事内容、勤務時間、息切れや倦怠感による制限、職場での配慮などを具体的に整理する必要があります。
呼吸器疾患で障害年金を検討中の方へ
呼吸器疾患の障害年金は、初診日、保険料納付要件、障害認定日の状態、検査数値、在宅酸素療法の有無、診断書、日常生活や仕事への支障によって判断が分かれます。
特に、24時間の在宅酸素療法を行っている場合、息切れや倦怠感で外出や仕事が難しい場合、検査数値が基準に近い場合は、早めに状況を整理することが大切です。
参考資料
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第10節 呼吸器疾患による障害
呼吸器疾患の障害用の診断書を提出するとき
