障害年金の審査請求・再審査請求|認定された事例と実務ポイント

障害年金の審査請求・再審査請求|認定された事例と実務ポイント

障害年金の審査請求 手続方法と認められる確率

障害年金の審査請求・再審査請求は、不支給や等級に納得できない場合の不服申立てです。

ただし、不服申立てをすれば必ず結果が変わるわけではありません。

認定基準に照らして、原処分のどこに問題があるのかを客観的に整理することが大切です。

このようなお悩みはありませんか。

  • 障害年金が不支給になり、納得できない
  • 思っていた等級より低い決定になった
  • 審査請求や再審査請求で認められた事例を知りたい
  • 審査請求書に何を書けばよいのか分からない

このページでは、障害年金の審査請求・再審査請求の考え方と、実際に認定された事例、認められなかった事例を紹介します。

このページでわかること

  • 障害年金の審査請求・再審査請求とは何か
  • 審査請求・再審査請求の最新統計
  • 実際に処分変更・認定された事例
  • 認められなかった事例から分かる注意点
  • 審査請求書に記載するときの考え方

執筆者紹介|障害年金専門社労士 但田美奈子

はじめまして。

当事務所で障害年金の申請サポートを担当しております、但田美奈子です。

経験15年以上・累計相談件数4,250件(令和8年8月末現在)・受給率97.8%。
うつ病をはじめ、さまざまな傷病のご相談に対応してまいりました。

障害年金は、病気やケガで日常生活や仕事が難しくなったときに支給される大切な制度です。

この記事では、障害年金の審査請求・再審査請求の受給例と、請求時に大切な考え方を解説します。

不支給や等級に納得できない方は、ぜひ最後までご覧ください。

審査請求・再審査請求とは

審査請求・再審査請求は、障害年金の決定に不服がある場合に行う手続きです。

障害年金を請求した結果、不支給になった場合や、想定していた等級より低い決定になった場合には、不服申立てを検討することがあります。

最初に行う不服申立てが審査請求です。

審査請求の結果にも納得できない場合に、さらに行う手続きが再審査請求です。

ただし、審査請求・再審査請求は、単に「困っている」「納得できない」と主張する手続きではありません。

障害認定基準や提出済みの診断書、申立書、医療記録などを確認し、原処分のどこに問題があるのかを整理する必要があります。

最新統計から見る不服申立て

令和6年度の社会保険審査会全体では、容認53件、処分変更あり56件でした。

厚生労働省が公表している社会保険審査会の統計では、令和6年度の処理状況は、取下げ80件、容認53件、棄却841件、却下132件、処理計1,106件とされています。

また、処分変更ありは56件とされています。処分変更ありとは、保険者により原処分の変更が行われ、再審査請求が取り下げられた件数の再掲です。

単純に、容認53件と処分変更あり56件を合わせると109件となり、処理計1,106件に対して約9.9%です。

ただし、この数字は社会保険審査会全体の統計であり、障害年金だけの認定確率をそのまま示すものではありません。

数字からも、不服申立ては簡単に認められる手続きではないことが分かります。

そのため、最初の裁定請求の段階で、診断書や申立書をできるだけ整えて提出することが大切です。

てんかん・知的障害の再審査請求

障害年金について相談する様子

知的障害とてんかんの事例では、再審査請求の公開審理前に処分変更となりました。

埼玉県久喜市在住の男性で、障害基礎年金の更新時に支給停止になってしまい、再審査請求を行った事例です。

この方は、知的障害(精神遅滞)てんかんの障害がありました。

2回目の更新時、てんかんの発作が治まっていることから、2級不該当と判断されました。

しかし、日常生活能力から見ると、知的障害だけでも2級に該当する状態でした。

就労は保護された環境下での単純作業に限られ、給与も10万円に届かない状況でした。

就労が争点になった事例

審査請求では、就労が続いていることを理由に、2級に該当しないとして請求が棄却されました。

2つ以上の障害がある場合、1つの障害が良くなると、障害の状態を軽く見られてしまうことがあります。

この事例では、てんかんの発作が治まっている点だけではなく、知的障害による日常生活能力や就労の実態を見てもらう必要がありました。

公開審理前の処分変更

再審査請求では、公開審理に代理人のみ出席する予定でした。

お母さまから請求人である息子さんの日常生活の状況をお聞きし、陳述する意見書をまとめていたところ、年金事務局から連絡がありました。

公開審理前に処分変更となり、主張が認められました。

これにより、前年11月分からの支給停止分を受給できることになりました。

リスフラン関節切断の事例

日本年金機構 中央年金事務所の外観写真

リスフラン関節切断の事例では、初診日や切断の位置が争点となり、最終的には認定に至りませんでした。

こちらは、審査基準に届かなかったため、認定されなかった事例です。

50代の男性で、東京都葛飾区在住の方でした。

リスフラン関節切断の初診日は昭和42年で、右の下肢に障害があり、障害厚生年金3級に該当し得る状態でした。

しかし、昭和61年4月より前の場合は、現在の法律ではなく古い法律が適用されます。

納付要件も古い法律で確認する必要があり、障害認定日も現在とは異なります。

かなり昔のことですので、発病日・初診日の証明が非常に難しい事例でした。

却下通知が届いた理由

最初の請求では、却下通知が届きました。

理由は、「発病日が厚生年金の被保険者であった間であることを確認できないため」というものでした。

事故が昭和42年の厚生年金加入時であることは間違いない状況でしたが、証明する書類がなく、第三者の申立書等を付けても認められませんでした。

再審査請求まで行った結果

その後、審査請求を行い、再審査請求まで進めました。

結果として、初診日はほぼ認められたものの、切断の深さがリスフラン関節には少し届かないと判断されました。

診断書にはリスフラン関節と記載がありましたが、レントゲンの所見上は違うと判断されたためです。

数ミリの違いではありましたが、認定基準に届かないという判断でした。

このように、不服申立てをしても、認定基準そのものに届かない場合は認定が難しくなります。

網膜色素変性症の審査請求

障害年金の年金手帳と通帳

網膜色素変性症の事例では、審査請求中に処分変更となり、障害認定日で2級が認められました。

千葉県市川市在住の方から、網膜色素変性症でご相談・ご依頼を受け、障害厚生年金を請求した事例です。

治療法がない傷病のため、障害認定日頃は受診されていませんでした。

そのため、障害認定日より数か月前の診断書と現在の診断書、障害認定日請求を希望する旨の申立書等を提出しました。

結果は、事後重症で障害厚生年金2級というものでした。

当初から審査請求も視野に入れていたため、すぐに審査請求の準備に入りました。

主治医から意見書もいただき、障害認定日での障害厚生年金2級を求めて審査請求を行いました。

処分変更と取下げ書

請求書を提出してから81日目に、社会保険審査官から通知が届きました。

内容は、処分変更になるため、審査請求の取下げ書を提出してほしいというものでした。

つまり、障害認定日で障害厚生年金2級を認めるということです。

不服とする事項が解消されるため、取下げ書を提出する流れになります。

ご依頼を受けてから約1年で、ようやく終了となりました。

うつ病の審査請求

障害年金の支給日

うつ病の事例では、3級の決定を不服として審査請求を行い、障害厚生年金2級が認められました。

うつ病で審査請求をした事例です。

初診は平成18年で、障害認定日と現在の診断書を提出し、遡及請求をしました。

最初の結果は、事後重症で障害厚生年金3級でした。

うつ病の事後重症による請求

障害の程度を争った事例

障害認定日時点の診断書はかなり軽く、当時の病状も軽かったため、遡及は難しいと考えていました。

予測どおり、遡及分は不支給となりました。

一方で、現在の状態は2級に該当するのではないかと考えていましたが、結果は3級でした。

この件については、ご依頼者と相談のうえ、3級の認定を不服として審査請求を行いました。

争点は、障害の程度です。

社会保険審査官から届いた決定書謄本には、原処分を取り消す旨の記載がありました。

そして、2級の障害給付を支給することが妥当であると判断されました。

認定の結果に納得がいかない場合には、審査請求・再審査請求という手続きがあります。

審査請求書に記載するべきこと

障害年金の不服申立てと審査請求

審査請求書では、認定基準に照らして、障害の状態を客観的に記載することが重要です。

新規での障害年金請求についてのご相談のほか、「自分で請求したが、不支給の通知が来たので専門家に頼みたい」という不服申立てのご相談もあります。

最初に提出された診断書や申立書の写しを拝見すると、これでは認定は難しいと思われる内容もあります。

審査請求は、最初の請求で不足していた内容を、あとからすべて補える手続きではありません。

その意味でも、障害年金申請は、一発勝負と考えて、最初からできる限り整った書類を提出することが大切です。

「痛い」「苦しい」だけでは難しい

審査請求書には、「痛い」「苦しい」「経済的に困っている」という気持ちだけではなく、障害の状態が現実にどうなのかを客観的に記載する必要があります。

ご本人やご家族にとって、それがいかに苦しく大変なことかは十分に分かります。

それでも、認定基準には「痛い」「苦しい」「経済的に大変だから」という基準はありません。

法律上の認定基準に照らし合わせて、それに沿った書類を作成していくことが大切です。

審査請求を検討する前に

審査請求を検討する場合は、まず不支給や等級決定の理由を確認することが大切です。

不服申立てをするかどうかは、通知書だけを見て判断するのではなく、提出した診断書、病歴・就労状況等申立書、認定基準との関係を確認して検討します。

また、審査請求には期限があります。

通知を受け取ってから時間が経っている場合は、早めに確認する必要があります。

内容によっては、審査請求よりも、新たに事後重症請求を行う方がよい場合もあります。

どの方法がよいかは、傷病、初診日、診断書の内容、現在の状態により異なります。

よくあるご質問

審査請求をすれば認められますか?

審査請求をしても、必ず認められるわけではありません。

認定基準に照らして、原処分の判断に問題があるかどうかが重要です。

感情的な不満ではなく、診断書や申立書、医療記録などをもとに、具体的に主張を整理する必要があります。

再審査請求とは何ですか?

再審査請求は、審査請求の決定にも納得できない場合に行う次の不服申立てです。

再審査請求は、社会保険審査会に対して行う手続きです。

公開審理が行われることもあり、審査請求よりもさらに時間と準備が必要になります。

処分変更とは何ですか?

処分変更とは、審査請求や再審査請求の途中で、もとの決定が変更されることです。

処分変更により不服とする内容が解消される場合は、審査請求や再審査請求を取り下げる流れになることがあります。

このページで紹介した網膜色素変性症の事例も、審査請求中に処分変更となりました。

不支給なら審査請求すべきですか?

不支給の場合でも、必ず審査請求がよいとは限りません。

不支給の理由、提出した診断書の内容、現在の状態によっては、再請求を検討した方がよい場合もあります。

まずは、なぜ不支給になったのかを確認することが大切です。

障害年金の審査請求を検討中の方へ

障害年金の審査請求は、認定基準に沿って客観的に主張を整理することが重要です。

不支給や等級に納得できない場合でも、審査請求をすれば必ず結果が変わるわけではありません。

一方で、診断書や申立書、医療記録、就労状況などを確認することで、処分変更や等級変更につながる場合もあります。

通知書が届いた方、審査請求をするべきか迷っている方は、早めにご相談ください。

無料相談をご利用ください

障害年金の不支給や等級決定に納得できない場合は、状況に応じて確認いたします。

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参考資料

社会保険審査会は、健康保険、船員保険、厚生年金保険及び国民年金の給付等処分に関して、第2審として行政不服審査を行う国の機関です。

令和6年度の社会保険審査会の処理状況は、取下げ80件、容認53件、棄却841件、却下132件、処理計1,106件です。

令和6年度の障害年金の認定状況について、厚生労働省から調査報告書が公表されています。

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