障害年金の審査請求で認められる確率はどれくらいあるのか。
認めてもらえる確率はどれくらいあるのか。
このような疑問に、わかりやすくお答えします。
はじめまして。
東京の障害年金専門社労士の但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋で13年以上にわたり、累計3,600件以上の「障害年金申請の相談」に応じてきました。
障害年金を申請し無事受給が認められた場合、年金証書が送られてきて障害年金〇級の〇号等記載があります。
最初の請求が認められればいいのですが、ここで問題なのは満足できない結果となってしまった場合です。
- 障害年金が不支給になった
- 予想よりも軽い等級になってしまった
- 遡及が認められなかった
いろいろな場合があります。
それでは、不支給など審査結果に不服があるときどうすればいいでしょうか?
- これも運命だから仕方ないとあきらめる
- 年金事務所や役所に電話して苦情をいう
- 年金事務所や役所まで行って苦情をいう
しかし・・・1~3番をしても、何も結果は変わりません。
この場合、法律的には障害年金の不服申し立てを行うことができます。これが審査請求です。
※誠に申し訳ございませんが、現在(2020年1月~)ご依頼多数につき審査請求からの新規ご相談・依頼はお受けできない状況です。
少し固いのですが法律的には、以下のようになります。
被保険者等が保険者(日本年金機構、全国健康保険協会、健康保険組合及び厚生年金基金等)に対して行った申請について、現行の法律等に基づいた正当な処分(決定)を行っていないと思われる時に社会保険審査官に対し行う。
障害年金審査請求の期限
期限は、「結果を知った日の翌日から3か月以内」とされています(以前は60日でした)。
この期間を過ぎると、正当な理由がない限り受け付けてもらえません。あまり時間はないのです。
審査請求で認められるための争点
審査請求は、口頭または文書で請求できるとされていますが、基本的には文書です。
管轄の地方厚生(支)局の社会保険審査官に対して行います。
審査請求で認めてもらうには、どんな書類を出せばいいのでしょうか?
いや、既に裁定請求時に診断書・申立書等を出しています。
同じような審査請求書を、前の障害年金請求時と同じように出しても、当然ですが結果は変わりません。
【審査請求でのご本人の言い分(実際に相談であったものの例)】
- 障害者手帳があるのになぜ認めないのか
- 痛い・苦しい
- 経済的に困窮している
- 自分で調べたら、障害の程度に当たっているはずだ
→お気持ちは大変よくわかります。
しかし、一度決定した処分を覆すには、社会保険審査官に対し決定のどこが不当でどのような処分変更を求めるか、そのエビデンス(根拠)は何なのか、法的論理的に訴えなくてはなりません。
普段、行政とのやり取りに慣れていない方には、かなり難しいと思います。
ポイントとしては、一点しかありません。実際に障害年金の認定事由に当たっているかどうかをどう証明するかです。
ですので、認定されないことについて、どこが法的に問題なのか?その根拠(証拠)と成り得る書類はなにが必要なのか?
1つ1つ検討していくしかないのです。
審査請求をして認められる確率
この点がもっとも関心があるかと思います。
審査請求をして、実際に障害年金が認められる件数はどれくらいなのでしょうか?
関東信越厚生局が公表した資料により件数をみてみます。
容認として認められたのは、平成23年度が6.3%。
平成24.25年度に厚生年金・国民年金について決定を行ったのは約2,800件。
そのうち認められたのは、約90件(3.2%)です。
また、処分変更という実質容認した事例も一定数あります(公表値はないが、取下げ件数から推定。容認→取下げのため)。
これを加えた場合の容認率は、おおむね約7.0~8.0% となります。
以下、年度別にざっくりとした計算を出します。
平成26年 決定2,576件 容認40 取下257 容認率10.6%
平成27年 決定2,521件 容認26 取下202 容認率9.0%
平成28年 決定2,180件 容認72 取下138 容認率9.6%
平成29年 決定2,000件 容認58 取下189 容認率12.35%
平成30年 決定2,117件 容認63 取下237 容認率12.35%
令和元年 決定2,020件 容認33 取下187 容認率10.89%
つまり、審査請求で認められるのは、おおむね1割です。
逆にいうと可能性は少ないですが、1割弱は認められているのです。やらないと可能性はゼロです。
審査請求の結果が出るまでの期間
障害年金の審査請求は提出してから、3.4カ月程かかります。
審査請求を行って、それでも処分が覆らなかったときは、次は厚生労働省社会保険審査会へ再審査請求を行います。
訴訟は最終段階です→平成28年4月より法改正になり再審査請求をしなくても、訴訟を提起できるようになりました。
審査請求できる期間
審査請求できる期間が変わりました(平成28年4月より)。
処分のあったことを知った日の翌日から60日以内
↓
(改正)処分のあったことを知った日の翌日から3か月以内(60日が3か月に延びたということです)。
審査請求と訴えとの関係
審査請求に対する決定後、再審査請求の裁決を経た後でなければ訴えを提起することはできない。
↓
(改正)審査請求に対する決定を経た後に、訴えを提起することが可能(再審査請求をしなくても訴訟できます)。
その他の主な改正内容
いずれも、審査請求が円滑にすすむことを目指しています。
- 標準審理期間の設定→決定までに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努める
- 審査請求手続きの計画的進行の創設→審査請求人や審査官が相互に協力し、計画的に審理を進行するよう努める
- 口頭意見陳述の充実化→利害関係者等を招集して行なうと共に、申立人は処分庁に対して質問できる
- 特定審査請求手続きの計画的遂行の創設→必要に応じて審査請求人等を招集し、審査請求の手続の申立に関する意見の聴取を行なう
- 審査請求人等による物件の閲覧→提出された文書や、その他の物件の謄写を求めることができる
審査請求とは、被保険者や被保険者であった者等が保険者(日本年金機構、全国健康保険協会、健康保険組合及び厚生年金基金等)に対して行った申請や請求について、保険者が現行の法律等に基づいた正当な処分(決定)を行っていないと思われる時に社会保険審査官に対し行うものです。
引用元:関東信越厚生局 社会保険審査官
審査請求取扱状況
用元:関東信越厚生局審査請求取扱状況平成27.28年度関東信越厚生局
社会保険審査官は、通常の裁判制度によらず、簡易迅速な被保険者等の権利・利益の保護を目的に、健康保険法、船員保険法、厚生年金保険法、国民年金法等に規定された資格や保険(年金)給付に関する審査請求の事件を担当しています。
引用元: 社会保険審査事務室