「審査請求・再審査請求の受給例を知りたい。」
このような疑問に、わかりやすくお答えします。
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋で13年以上にわたり、累計3,600件以上の「障害年金申請の相談」に応じてきました。
今回は、障害年金の審査請求・再審査請求を行い認定された事例を紹介いたします。
ご覧いただくと、不服申し立てがいかに手間と時間がかかるものか、ご理解いただけると思います。
新規に障害年金の最低請求をするとき、最初に認められるように最大限に頑張りましょう!
てんかん・知的障害の再審査請求
埼玉県久喜市在住の男性で、障害基礎年金の更新時に支給停止になってしまい、再審査請求を行っています。
この方は、知的障害(精神遅滞)とてんかんの障害の方です。
2回目の更新時、てんかんの発作が治まっていることから2級不該当とされました。
しかし、日常生活の能力から見て、知的障害(精神遅滞)だけで、2級に該当する状態です。
就労は保護された環境下での単純作業に限られ、お給料も10万円に届きません。
就労と審査請求
審査請求では、就労が続いていることを理由に2級に該当しないとして請求が棄却されました。
2つ以上の障害がある場合、1つの障害が良くなると障害の状態を軽く認定される傾向があります。
再審査請求の公開審理と処分変更
公開審理には、代理人である私のみ出席するつもりでした。
お母さまに請求人である息子さんの日常生活の状況などをお聞きし、陳述する意見書をまとめていたところでした。
年金事務局から連絡があり、公開審理前に処分変更になりました!
主張が認められたということです。
昨年11月分からの支給停止分を受給できることになります(実際に振り込まれるのは3,~4か月後になると思いますが)。
頑張った甲斐がありました!
リスフラン関節切断の事例
こちらは、お恥ずかしながら、審査基準に届かなったため、認定されなかった事例です。
50代の男性で東京都葛飾区在住です。
ご依頼いただいた方は、リスフラン関節切断の初診日が昭和42年でした。
右の下肢に障害(リスフラン関節で切断)を持たれており、障害厚生年金の3級に該当する状態です。
しかし、昭和61年4月より前の場合、現在の法律ではなく古い法律が適用され、納付要件は古い法律で見ることになります。
障害認定日も異なります。
かなり昔のことですので、発病日・初診日の証明が難しいですが、頑張りました。
却下の連絡
残念なお知らせがありました。
却下通知が届いたとの連絡がありました。
却下の理由は「発病日が厚生年金の被保険者であった間であることを、確認できない為」。
事故が昭和42年の厚生年金加入時なのは間違いないのですが、証明する書類がなく、第3者の申立書等を付けたのですが、認められませんでした。
審査請求へ
その後、審査請求を行いました。
再審査請求まで行いましたが、結果初診日はほぼ認められたものの、切断の深さがリスフラン関節には少し届きませんでした。
数ミリの違いです。
診断書にはリスフラン関節と記載がありましたが、レントゲンの所見上違うと判断されました。
あと5mm切断が深ければ認められたのですが、釈然としません。
しませんが、これ以上は裁判しかありません・・・。
網膜色素変性症の審査請求で処分変更
千葉県市川市在住の方です。
昨年、網膜色素変性症でご相談・ご依頼を受け、障害厚生年金を請求しました。
治療法がない傷病のため、障害認定日頃は受診されていませんでした。
障害認定日より数カ月前の診断書と現在の診断書、障害認定日請求を希望する旨の申立書等を提出し、結果を待ちました。
結果は事後重症で障害厚生年金2級というものでした。
当初から審査請求も視野に入れておりましたので、すぐに審査請求の準備に入りました。
主治医から意見書も頂き、審査請求の理由は論理立てて記載することが大切です。
障害認定日での障害厚生年金2級を求めて審査請求を行いました。
請求書を提出してから81日目、社会保険審査官から通知が届きました。
審査請求の取下げ書を提出
処分変更になるため、審査請求の取下げ書を提出してほしいというものでした。
つまり、障害認定日で障害厚生年金2級を認めるということですので、不服とする事項は解消されるため取下げ書を出すという意味です。
喜んで取下げ書を出します。
喜んで取下げ書を出します。ご依頼頂いてから1年。ようやく、終了です!
うつ病で審査請求により障害厚生年金2級
こちらは、うつ病で審査請求をした事例です。
初診は平成18年。障害認定日と現在の診断書を提出し、遡及請求をしました。
結果は事後重症3級。
診断書と遡及
確かに障害認定日時点の診断書はかなり軽かった(病状も軽かった)ので、遡及は無理だろうと思っておりました。
予測通りで、遡及分は不支給となりました。
現在は2級に該当するのでは?と思っておりましたが、結果は3級。
請求時の予想に届かなかったのは実は今回が初めてです。
この件に関しては、ご依頼者と相談のうえ審査請求をいたしました。
3級の認定を不服として、審査請求をしましたが争点は障害の程度です。
2級という認識だったのですが、3級の決定でした。
本日、社会保険審査官より決定書謄本が届き、ドキドキしながら開封しました。
冒頭に「厚生労働大臣が、審査請求に対し、平成25年○月○日付で行った~の原処分は、これを取り消す。」
そして最後に「2級の障害給付を支給することが妥当であると判断する。」
よかった。力が抜けました。
認定の結果に納得がいかない場合は、審査請求・再審査請求があります。
あきらめずに請求しましょう!
審査請求書に記載するべきこと
新規での障害年金請求についてのご相談の他に「自分で請求したが、不支給の通知が来てしまったので、専門家に頼みたい」という不服申立て(審査請求)を希望する方からのご相談も多いのです。
最初に提出された診断書や申立書の写しを拝見すると、正直これでは認定は難しい...という内容も多く、請求をされる前にご相談・代行依頼をしていただけたならと思ってしまいます。
障害年金申請は、一発勝負と考え最良の書類を出しましょう。
アドバイスとして
審査請求書には「痛い」「苦しい」「経済的に困っている」という内容ではなく、現実的に障害の状態がどうなのかを客観的に記載することが重要です。
本人、ご家族にとってはそれがいかに苦しく大変なことか、わかったうえであえて書きます。
あえて・・・です。
それは、認定基準に「痛い」「苦しい」「経済的に大変だから」という基準がないからです。
ご本人にとっては大変なことだと思います。
ただ、現状ではそれを訴えても認定はされません。
法律の問題ですから、その認定基準に照らし合わせ、それに沿った書類を作成していくことが大切です。
基本的なことですが、それが一番大事なことです。
年金の決定に不服があるときは、決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に文書または口頭で、地方厚生局内に設置された社会保険審査官に審査請求することができます。