外傷性脳損傷の後遺症によって日常生活や仕事に支障が残った場合、障害年金を受給できる可能性があります。
片麻痺、高次脳機能障害、言語障害、視野障害などが対象となることがあり、初診日、保険料納付要件、後遺症に応じた診断書、障害認定日の確認が重要です。

このようなお悩みはありませんか。
- 外傷性脳損傷の後遺症で障害年金はもらえるのか
- もらえる金額や実際に受給した例を知りたい
- 症状固定の時期や、交通事故の場合の申請方法を知りたい
この記事では、外傷性脳損傷で障害年金を受給するための条件、実際の受給例、金額、障害認定日、後遺症の認定基準、申請時の注意点について解説します。
外傷性脳損傷で障害年金は難しいのか
障害年金の判断では、外傷性脳損傷という病名だけでなく、残った後遺症が日常生活や仕事に与える影響が重要です。

外傷性脳損傷は、病名だけで障害年金の等級が決まるわけではありません。
外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などをきっかけに発症し、治療後も後遺症が残ることがあります。
後遺症の内容は人によって異なり、体の麻痺、しびれ、視野障害、言語障害、高次脳機能障害など、複数の障害が関係することもあります。
障害年金では、傷病名そのものよりも、受傷後にどのような後遺症が残り、日常生活や仕事にどの程度の支障があるかが重視されます。
たとえば、次のような障害が残った場合、障害年金を申請できる可能性があります。
- 片麻痺、しびれ、筋力低下などの肢体の障害
- 視野欠損などの眼の障害
- 言語障害
- 記憶、注意、遂行機能などの高次脳機能障害
- 遷延性意識障害など、重い意識障害
そのため、外傷性脳損傷で障害年金を申請する場合は、後遺症の内容に応じて、肢体、眼、精神、その他の診断書など、どの診断書で請求するかを整理することが大切です。
外傷性脳損傷の障害年金受給例
実際に、外傷性脳損傷による左不全麻痺などが認められ、障害基礎年金2級と3年6か月分の遡及請求が認定された事例があります。

実際に受給した例は参考になると思います。
ここでは、外傷性脳損傷により左不全麻痺や平衡感覚の障害が残り、障害基礎年金2級が認定された事例をご紹介します。
外傷性脳損傷で障害基礎年金2級(遡及請求3年6か月)
| 認定 | 障害基礎年金2級 遡及請求3年6か月 |
|---|---|
| 相談者 | 50代女性 群馬県太田市 |
| 傷病 | 外傷性脳損傷(左不全麻痺) |
| 金額 | 年額約80万円 遡及金額約230万円 |

外傷性脳損傷の障害年金申請を他の社労士に依頼されていましたが、説明された内容に誤りがあり、改めてご相談いただいたケースです。
外傷性脳損傷により、左不全麻痺と平衡感覚の障害が残っていました。
外傷性脳損傷は、現在の状態を示す診断書の現症日が重要です。
今回は肢体の診断書を使用し、すでに取得されていた診断書の内容を一部訂正していただきました。
交通事故が原因でしたので、第三者行為事故状況届や事故証明書なども同時に準備し、障害年金を請求しました。
その結果、障害基礎年金2級、3年6か月の遡及請求が認められました。
外傷性脳損傷で障害年金の金額はいくら?
外傷性脳損傷でもらえる障害年金の金額は、年金の種類、等級、家族構成などによって異なります。

- 障害基礎年金:1級・2級
- 障害厚生年金:1級・2級・3級
初診日に加入していた年金制度によって、受け取れる年金の種類が変わります。障害厚生年金1級・2級では、原則として障害基礎年金もあわせて受け取ります。
受給後は、国民年金保険料の法定免除の対象になる場合もあります。

外傷性脳損傷の障害基礎年金額
障害基礎年金は、1級・2級ごとに基本となる年額が決まっています。
令和8年度(2026年4月分~2027年3月分)の金額は、次のとおりです。
| 等級 | 年額 | 月額換算 |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円 | 約88,260円 |
| 2級 | 847,300円 | 約70,608円 |
※昭和31年4月2日以後生まれの方の金額です。昭和31年4月1日以前生まれの方は金額が異なります。子の加算は含みません。
※月額換算は年額を12で割った参考額です。年金は原則として偶数月に2か月分ずつ支給されます。
障害基礎年金の子の加算
障害基礎年金1級・2級の受給者に、生計を維持している対象年齢の子がいる場合は、子の加算がつくことがあります。
対象となるのは、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子です。
| 子の人数 | 令和8年度の加算年額 |
|---|---|
| 1人目・2人目 | 1人につき243,800円 |
| 3人目以降 | 1人につき81,300円 |

外傷性脳損傷の障害厚生年金額
障害厚生年金は、過去の標準報酬や厚生年金の加入期間などをもとに計算します。
そのため、障害基礎年金と異なり、金額は一律ではありません。
| 障害厚生年金 | 基本となる金額 |
|---|---|
| 1級 | 報酬比例額×1.25 |
| 2級 | 報酬比例額 |
| 3級 | 報酬比例額(最低保障あり) |
1級・2級では、上記の障害厚生年金部分に、原則として同じ等級の障害基礎年金も加わります。
3級には障害基礎年金がつきませんが、最低保障があります。
令和8年度の障害厚生年金3級の最低保障額は、年635,500円です。
※昭和31年4月2日以後生まれの方の場合。昭和31年4月1日以前生まれの方は年633,700円です。
これは最低保障額であり、すべての方の金額が635,500円になるわけではありません。
報酬比例部分に300月みなしあり
厚生年金の被保険者期間が300月未満の場合は、原則として300月とみなして計算する仕組みがあります。
ただし、300月分の保険料を実際に納付したことになるわけではありません。
また、障害認定日の属する月より後の被保険者期間は、原則として障害厚生年金の計算の基礎には入りません。
障害厚生年金の配偶者加給年金
障害厚生年金1級・2級では、一定の要件を満たす65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金がつくことがあります。
配偶者の性別は問いません。夫が対象になる場合もあります。
ただし、配偶者自身が一定の老齢厚生年金や障害年金の受給権を持つ場合などは、加給年金が支給停止となることがあります。
令和8年度の配偶者加給年金額は、年243,800円です。

年金生活者支援給付金
障害年金生活者支援給付金は、障害基礎年金を受給している方のうち、前年所得などの要件を満たす方に支給される給付金です。
令和8年度の月額は、次のとおりです。
| 等級 | 給付金月額 |
|---|---|
| 1級 | 7,025円 |
| 2級 | 5,620円 |
障害基礎年金1級・2級の方すべてに自動的に支給されるものではありません。障害厚生年金3級のみを受給している方は対象外です。
外傷性脳損傷の時効と遡及請求
障害認定日当時に障害年金の要件を満たしていた場合は、過去にさかのぼって請求できることがあります。
ただし、遡って受け取れる年金は原則として時効により5年分が限度です。
必ず5年分を受け取れるわけではなく、障害認定日当時の障害状態や診断書などを確認する必要があります。
詳しくは、障害年金の遡及請求をご覧ください。
外傷性脳損傷で受け取れる年金額の目安|6つのモデルケース
同じ外傷性脳損傷でも、加入していた年金制度や等級、過去の標準報酬によって受給額は異なります。
実際にどのくらいの障害年金を受け取れるのか、6つのモデルケースで比較してみましょう。
以下は令和8年度の障害基礎年金額と、障害厚生年金の報酬比例部分を組み合わせた簡易試算です。
会社員のモデルは、過去の平均標準報酬額(賞与を含む月額換算)を年収300万円・500万円相当と仮定しています。
比較しやすくするため、報酬比例部分は平成15年4月以降の計算式を用い、300月みなしを適用したモデルです。
※再評価率、平成15年3月以前の加入期間などは反映していません。実際の年金額とは異なる簡易的な計算例です。
| ケース | 年収モデル | 等級 | 年金の種類 | 概算年額・月額換算 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 自営業・専業主婦など | ― | 2級 | 障害基礎年金 | 847,300円/年 約70,608円/月 |
子の加算を除く基本額 |
| ② 自営業・専業主婦など | ― | 1級 | 障害基礎年金 | 1,059,125円/年 約88,260円/月 |
2級の1.25倍 |
| ③ 会社員 | 300万円相当 | 3級 | 障害厚生年金 | 635,500円/年 約52,958円/月 |
このモデルでは最低保障額を適用 |
| ④ 会社員 | 300万円相当 | 2級 | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 約126万円/年 約10.5万円/月 |
基礎年金+報酬比例部分 |
| ⑤ 会社員 | 500万円相当 | 2級 | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 約153万円/年 約12.8万円/月 |
基礎年金+報酬比例部分 |
| ⑥ 会社員 | 500万円相当 | 1級 | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 約192万円/年 約16.0万円/月 |
1級の基礎年金+報酬比例部分の1.25倍 |
モデルケースを見るときの注意点
- ①②③の金額は令和8年度の公表額・最低保障額を用いています。
- ④⑤⑥は一定の前提を置いた簡易試算で、実際の年金見込額ではありません。
- 年収モデルは現在の年収ではなく、過去の標準報酬を賞与込みで月額換算した仮定です。
- 厚生年金の加入時期、加入期間、標準報酬、再評価率によって実際の年金額は異なります。
- 配偶者加給年金、子の加算、年金生活者支援給付金は含めていません。
- 昭和31年4月1日以前生まれの方は、基礎年金額や最低保障額が異なります。
このように、外傷性脳損傷で同じ2級に認定された場合でも、初診日に加入していた年金制度や、過去の給与・賞与などによって受給額は変わります。
ご自身の年金額について詳しく確認したい方は、 障害年金はいくらもらえる?【2026年(令和8年度)】1級・2級・3級の金額目安と早見表 で詳しく解説しています。
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外傷性脳損傷で障害年金を受給できる条件
障害年金の受給には、初診日・保険料納付要件・障害の状態という3つの要件を確認します。

外傷性脳損傷で障害年金を申請するためには、次の3つの要件が重要です。
- 初診日~いつお医者さんに行ったか
- 保険料納付要件~保険料は納めていたか
- 障害の状態が認定基準に該当するか
そのうえで、障害認定日に外傷性脳損傷の後遺症が認定基準に該当すれば、障害年金を受給できる可能性があります。
外傷性脳損傷の障害認定日と症状固定
障害認定日は原則として初診日から1年6か月後です。それまでに症状が固定した場合は、症状固定日が障害認定日となります。

障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。
なお、脳血管障害による機能障害には、初診日から6か月を経過した日以後の取扱いがありますが、交通事故や転倒による外傷性脳損傷に一律に適用されるものではありません。
外傷性脳損傷では、初診日から1年6か月以内に症状固定と認められた場合、個別の医学的な判断に基づき、その日が障害認定日となります。
症状固定が認められれば、1年6か月を待たずに請求できる場合があります。実際の傷病の経過、治療状況、診断書の内容を確認する必要があります。
※遷延性意識障害とは、高度の意識障害が起こり、意識があることを確認できない状態が継続する症状です。
一般的に「植物状態」とも呼ばれます。
ただし、肢体の状態が代償機能やリハビリテーションにより好転する可能性があるため、療養及び症状の経過を十分に考慮する必要があります。
障害年金を受給することで、少しでも経済的な負担を軽減することが可能です。
外傷性脳損傷の認定基準
片麻痺・視野障害・高次脳機能障害など、実際に残っている後遺症に応じた認定基準で判断されます。

外傷性脳損傷の後遺症として、体の麻痺、しびれ、視野障害、高次脳機能障害などが残ることがあります。
そのため、障害年金では、残っている後遺症に応じて、肢体、眼、精神、その他の障害として判断されます。
外傷性脳損傷の認定基準で大切なこと
- 病名だけではなく、残った後遺症の内容で判断されます。
- 肢体の障害では、関節可動域・筋力・日常生活動作が重要です。
- 視野障害がある場合は、眼の障害としての確認も必要です。
- 記憶力、注意力、遂行機能、社会的行動などに支障がある場合は、高次脳機能障害としての検討が必要です。
複数の後遺症がある場合は、どの診断書で請求するか、どの障害を中心に申請するかを整理することが大切です。
肢体の機能障害として判断される場合
外傷性脳損傷後の片麻痺やしびれなどにより、手足や体幹に支障が残る場合、肢体の機能の障害として判断されることがあります。
| 1級 | 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
| 2級 | 日常生活が著しい制限を受けるか、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
| 3級 | 労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とする程度のもの |
肢体の機能障害で確認される主なポイント
肢体の障害では、次のような点を総合的に見て判断されます。
- 関節可動域
- 筋力
- 巧緻性
- 動作の速さ
- 耐久性
- 日常生活における動作の状態
高次脳機能障害がある場合
脳損傷に起因する認知障害全般について、日常生活又は社会生活に制約があるものは認定の対象となることがあります。
主な症状として、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害、失語、失行、失認などがあります。
交通事故が原因の場合に注意すること
外傷性脳損傷が交通事故など第三者行為による場合、通常の障害年金請求書類に加えて、第三者行為事故状況届や事故証明書などが必要になることがあります。
また、健康保険の傷病手当金や損害賠償との関係など、別の制度との調整が問題になることもあります。
そのため、外傷性脳損傷で障害年金を申請する場合は、初診日、事故の状況、診断書の現症日、後遺症の内容を整理して進めることが大切です。
よくあるご質問
外傷性脳損傷で障害年金はもらえますか?
外傷性脳損傷の後遺症により、日常生活や仕事に支障が残っている場合、障害年金を受給できる可能性があります。肢体の障害、高次脳機能障害、言語障害、視野障害など、残った症状に応じて判断されます。
外傷性脳損傷は1年6か月待たないと申請できませんか?
原則は初診日から1年6か月経過した日です。ただし、それまでに症状固定した場合は、その日が障害認定日となります。脳血管障害の「6か月経過後」の取扱いが、外傷性脳損傷に一律に適用されるわけではありません。
外傷性脳損傷では何の診断書を使いますか?
残った後遺症により異なります。片麻痺やしびれが中心であれば肢体の診断書、高次脳機能障害が中心であれば精神の診断書、視野障害があれば眼の診断書などを検討します。
交通事故が原因でも障害年金を申請できますか?
申請できます。ただし、交通事故が原因の場合は、第三者行為事故状況届や事故証明書など、通常の請求に加えて必要となる書類があるため、事故の状況や後遺症の内容を整理して進めることが大切です。
執筆者紹介:障害年金専門社労士 但田美奈子
はじめまして。
当事務所で障害年金の申請サポートを担当しております、但田美奈子です。
経験15年以上・累計相談件数4,322件(令和8年10月末現在)・受給率97.8%。
外傷性脳損傷をはじめ、さまざまな傷病のご相談に対応してまいりました。
外傷性脳損傷の障害年金では、片麻痺や平衡機能の障害だけでなく、記憶・注意・言語・視野などの後遺症が日常生活や仕事にどのような支障を与えているかを確認することが大切です。
これまでの相談経験をもとに、初診日や症状固定の時期、後遺症に応じた診断書の選び方、第三者行為による事故の手続き、実際の受給事例について解説しています。
外傷性脳損傷では、外から見える身体の後遺症だけではなく、疲れやすさ、注意力の低下、記憶障害などが日常生活に影響することがあります。
診察時には伝わりにくい困難もありますので、ご本人やご家族のお話を丁寧に伺い事故後の経過や実際の生活状況が申請書類に正確に反映されるよう、一つひとつ確認し、障害年金の受給につながるよう丁寧にサポートしてまいります。
外傷性脳損傷で障害年金を検討中の方へ
外傷性脳損傷の障害年金は、後遺症の内容、初診日、障害認定日や症状固定の時期、診断書の選択によって判断が分かれます。
特に、肢体の障害だけでなく、高次脳機能障害、言語障害、視野障害がある場合は、どの障害を中心に申請するかを整理することが重要です。
交通事故など第三者行為による場合は、第三者行為事故状況届や事故証明書などの資料も確認します。
初回のメール・電話相談は無料です
東京・神奈川・埼玉・千葉など首都圏にお住まいで、障害年金の新規申請をお考えの方はご相談ください。
「自分が受給できるか分からない」という段階でも、現在の症状や通院の経過、仕事の状況などをお聞かせください。
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