「今から障害年金を申請したいが、精神疾患の審査の現状を知りたい」
「障害年金の精神の等級判定ガイドライン認定基準を知りたい」
このような疑問に、わかりやすくお答えします。
はじめまして。
東京の障害年金専門社労士の但田美奈子(ただみなこ)と申します。
精神疾患の障害年金審査は、その程度を明確に数値化することが難しいため、具体的なガイドラインが設けられています。
実際にガイドラインにより、精神疾患の審査は厳しくなったのでしょうか。
このガイドラインのポイントを解説していきます。
精神の障害に係る等級判定ガイドラインとは
従来、障害厚生年金の審査は全国で一箇所に集中して行われていましたが、障害基礎年金の審査は都道府県ごとに行われていました。
そのため、同じ障害認定基準を持つはずの審査でも、特に精神の障害に関しては地域ごとの格差が生じ、多くの問題が発生していました。
例えば、同じ診断書の内容でも、ある県では障害等級2級が認定されるのに対し、別の県では支給が認められないといったケースが見られたのです。
こうした問題を解決するため、国民年金・厚生年金保険において「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が導入されました。
このガイドラインの運用により、精神疾患(うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害等)における障害年金の審査が大きく変わることとなりました。
特に「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」に基づいて点数が算出され、その点数が等級判定の重要な指標となります。
これだけで、決定される訳ではありませんが、かなりのウェイトを占めると予想されます。
この後順番に階解説していきます。
日常生活能力の評価と判定平均
表:厚生労働省:障害年金の診断書を作成する医師の方へより抜粋
精神の障害に関する診断書の裏面には、「日常生活の7つの場面」における疾患による制限の度合いが記載されています。
これらの項目は、各場面での生活能力を4段階で評価し、点数化されます。
緑部分「日常生活の7つの場面」において、疾患による制限の度合いを、それぞれ1~4の4段階で評価することになっています。
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬(要・不要)
- 他人との意思伝達及び対人関係
- 身辺の安全保持及び危機対応
- 社会性
それぞれの項目を、程度の軽い方から重い方に1〜4の点数に置き換えます。
- できる
- 自発的に(おおむね)できるが時には助言や指導を必要とする
- (自発的かつ適正におこなうことはできないが)助言や指導があればできる
- 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
表:厚生労働省:精神の障害に係る等級判定ガイドライン~障害等級の目安より抜粋
これらの7項目について、それぞれの点数を合計し、その合計を7で割ったものが「判定平均」となります。
これは、障害等級を判断するための重要な指標となりますが、あくまで目安であり、他の要素も総合的に考慮されます。
日常生活能力の程度
診断書の裏面右側(黄色部分)には、「3 日常生活能力の程度」欄があります。
ここでは、「日常生活能力の判定」で評価された7つの場面を含めた、日常生活全般における制限度合いを、より包括的に評価します。
疾患による制限の度合いを(1)~(5)の5段階で評価します。
診断書には、「精神障害」と「知的障害」の2つの欄があります。
知的障害が含まれている場合は「知的障害」欄、それ以外の場合は「精神障害」欄のいずれか一方を用いて評価します。数字が大きいほど、障害の程度が重くなります。
この「日常生活能力の程度の5段階評価」が「程度」を示し、障害年金の審査において重要な要素となります。
等級判定の基準と目安
「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」は、障害年金の等級を判定するための重要な基準となります。
これらは表にまとめられ、点数換算によって等級の目安が示されます。
これだけで、決定される訳ではありませんが、かなりのウェイトを占めると予想されます。
等級判定ガイドラインでは、「判定平均」と「程度」の組み合わせによって、認定される等級の目安が設定されています。
例えば:
- 判定平均が3.0で、日常生活能力の程度が3の場合、2級相当とされます。
このように、数値化された評価に基づいて等級が決定されますが、あくまで目安です。
実際の等級決定には他の要素も考慮されます。それでも、この「判定平均」と「程度」の評価は、等級決定において非常に重要な役割を果たします。
審査の状況とその影響
重要なのは、それで今後の審査がどうなっているかです。
感覚的には、以前は2級と3級の中間程度の方も2級に認定されることが多かったものが、今では、限りなく2級に近くないと認定されないような厳しい審査に変わってきています。
適正と言えばそうなのでしょうが、厳しくなってきたような印象が強いです。
審査の厳格化
等級判定が厳しくなったことで、更新時に支給が停止されたり、新たな障害年金の請求時に、以前とは異なる判断が下される可能性があります。
特に、精神疾患に関する障害年金の審査は、値で明確に表すことが難しいため、身体疾患に比べて難しい傾向があります。
さらに、現在の審査基準では、働いている場合(たとえ週に数回や時短勤務でも)も、かなり厳しい判断がなされるようになっています。
障害年金の本質的な目的が「所得保障」であるため、仕事をしていることが審査に影響を与えるのです。
診断書と病歴就労状況等申立書の整合性
また、精神疾患で障害年金を申請する際、診断書と病歴就労状況等申立書の内容が一致していることが非常に重要です。
しかし、実際には、本人の状況と医師の記載内容に乖離が生じることがよくあります。
これは、コミュニケーション不足や診療期間の短さが原因かもしれません。
また、医師が患者を元気づけるために「大丈夫」と言うこともあるでしょうし。
精神疾患に関する申請では、医師の意見を尊重しつつ、自分の現状を正確に伝えることが重要です。
診断書と病歴就労状況等申立書の内容に整合性を持たせることで、より適切な審査を受けることができます。
ガイドラインの運用と更新時の注意点
このガイドラインは、新規請求時、額改定請求時、再認定(更新)時に運用されます。
再認定(更新)時においては、障害の状態が従前と変わらない場合、「当分の間」は等級非該当への変更は行わないとされていますが、この「当分の間」がいつまで続くのかは明確ではありません。
精神疾患で障害年金を請求する際や更新時には、慎重な準備が必要です。
障害年金請求をお考えの方で、不安や疑問がある場合は、ぜひご相談ください。
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『障害年金(精神の障害)の認定の地域差改善に向けた対応』の概要
障害基礎年金や障害厚生年金等の障害等級は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されていますが、精神障害及び知的障害の認定において、地域によりその傾向に違いが生じていることが確認されました。