「高次脳機能障害、アルツハイマー病で障害年金を申請したいが、もらえる金額はいくら?」
「障害年金の受給例や、認定基準について知りたい。」
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、13年以上にわたり累計約3,600件の「高次機能障害など障害年金の無料相談から申請サポート」に携わってまいりました。
高次脳機能障害・アルツハイマー病・若年性認知症等で、障害年金の申請を忘れていませんか?
はずせない3つの申請ポイント
テレビや新聞でも話題になっているように、精神疾患による障害年金の申請に関する相談が急増しています。
厚生労働白書としても「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」と題し、初めて、こころの健康について論じています。
しかし、受給するのは難しいのでは?との声も多く寄せられています。
高次機能障害で障害年金を受給するために大切なポイントは、以下になります。
- 初診日を特定する(最初の原因は事故か病気か、低酸素脳症かなど)
- 高次機能障害(記憶力低下や失語症等)により、仕事や日常生活にどの程度の制限等が生じているのか、診断書に整合性をとって記載する。
- 記載した病歴・就労等申立書と、診断書の整合性がとれるようにする(日常生活能力の判定や程度等)
具体的にどうすれば、高次機能障害で障害年金を受給できるのでしょうか?
以下の順でお話します。
- もらえる金額
- 受給事例
- 認定基準
高次脳機能障害で障害年金の金額
高次機能障害で障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
実際、受給が決まっても「いくらもらえるのか」がご心配だと思います。
そこで、高次機能障害で受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。
- 基礎::1級と2級
- 厚生::1級、2級、3級
このように、基礎と厚生が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。
もらえる金額もこれに伴って説明していきます。
高次機能障害の障害基礎年金額
高次機能障害で障害年金が認定され、もらえる金額は障害基礎年金か障害厚生年金かで異なります。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
障害等級 | 金額 |
障害厚生年金
1級 |
1,020,000円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
816,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ることになります。初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。
一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 234,800円 |
3人目以降 | 1人につき 78,300円 |
高次機能障害の障害厚生年金の金額
高次機能障害で、障害厚生年金1級又は2級に認定された場合、障害基礎年金に加えて厚生年金が加算されます。
3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。
障害厚生年金の金額は、給与や勤めていた期間(年齢)に比例するため、人によりまったく違います。
例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。
障害厚生年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
612,000円
金額は一律 |
配偶者加給年金
高次機能障害で障害厚生年金の1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるとき。
配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。その場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
234,800円 |
年金生活者支援給付金
高次機能障害の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
年金生活者支援給付金は基礎も厚生も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
2級 | 月5,310円 |
1級 | 月6,638円 |
以上、もらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。
障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。
受給例
実際に受給した例は参考になると思います。
いろいろなケースがございますので、ご参考ください。
高次脳機能障害で障害厚生年金2級-110万円
認定 | 障害厚生年金2級 障害認定日請求 |
相談者 | 30代男性 神奈川県足柄下郡 |
傷病 | 高次脳機能障害 |
金額 | 約110万円 |
原因は業務中の交通事故。
最初は腰痛等の症状でしたが、事故の時に頭部を打たれていたのです。
その後、次のような各障害症状が現れ仕事は続けられなくなりました。
- 記憶
- 注意
- 遂行機能
- 社会的行動
- 学習
日常的にも援助が必要です。
交通事故の場合、怪我をさせた第三者(加害者)が絡むので大変です。
第三者行為災害による事故ですので提出する書類の準備も大変でしたが、認定日の請求をし無事厚生年金2級に決定。
※第三者行為災害とは、簡単にお話すると二重支給にならないように調整される制度。
年金と損害賠償を調整するということです。
交通事故など第三者の行為によって怪我をしたことが原因で障害年金を受給し、さらに第三者から同一事由で損害賠償を受けた場合、損害賠償額の範囲内で年金の支給額が調整されます。
これは損害を賠償しなくてはならないのは、本来、加害者である第三者であり第三者に賠償責任があるからです。
第三者が賠償を行う前に年金が支給された場合、支給した年金分を保険者(政府)が第三者に請求できます。
逆に第三者が賠償を行った後であれば、年金の一部が支給停止になる場合があります。
支給停止については、事故の発生から最大で3年間です。
この辺りは損害賠償が遅くなる場合もあり、状況により異なりますのでご相談ください。
若年性認知症で障害基礎年金2級-80万円
認定 | 障害基礎年金2級 障害認定日請求 |
相談者 | 50代男性 千葉県市川市 |
傷病 | 急性硬膜下血腫(若年性認知症) |
金額 | 約80万円 |
ご相談は弟さんからでした。
現在は有料老人ホームで生活されています。
長年のアルコール依存症および転倒による急性硬膜下血腫で、若年性認知症と診断。
ただ、そのあと取得した診断書は、大幅な訂正が必要なものでした。
「施設では、いろいろな介添えをしていただける人や設備がある。単身で生活するとしたらどうなのでしょうか?」
その観点で記載していただきたい旨伝え、訂正して頂けました。
提出した診断書は紙の中訂正印でいっぱいです・・・。
1人暮らしなのかご家族と一緒かと同じ意味なので、施設にいるから補助もあるし大丈夫なのでは?と取られると困ってしまうのです。
無事一か月程で、基礎年金2級に決定。
老人ホームは費用もかなりかかるとのこと。年金が少しでも足しになればと思います。
受給資格
高次機能障害やアルツハイマー病で障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。
初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日に「高次機能障害の認定基準に該当」すれば、受給できます。
障害認定日は初診日から1年6か月経過したところになります。
精神疾患の障害年金認定基準
まず、精神疾患全体の認定基準は共通のため、以下参照下さい。
精神疾患全体の基準は、等級について次のように規定しています。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
→身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできない又は行えない程度 |
2級 | 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
→家庭内の軽食・最低限の洗濯等はできるが、それ以上の活動はできない程度 |
3級 | 精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの →労働することはできるが、健常者と同等に労働することはできない程度。 |
実際、この表を見てもいまいちピンとこないと思いますが、以下の文章が重要になります。
精神の疾患の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとする。
精神疾患は、多種であり、かつその症状は同一原因であっても多様である。
したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する。
この内容が精神疾患の障害年金を請求する場合特有のもので、病歴や仕事、日常生活の状況により審査されるということになります。
高次機能障害がどの程度重いのかうまくお医者さんとコミュニケーションが取れていないことも多く、診断書の内容が症状にあっていない場合が多くあります。
高次機能障害で障害年金が難しい大きな理由です。
病歴、治療の経過、仕事や日常生活の状況などを主治医にうまく伝えることが大事です。
日常生活の用が不能 → 著しい制限 →労働に著しい制限という感覚がわかりますでしょうか。
高次機能障害の認定基準
少し長くなりますが、厚生労働省による高次脳機能障害の記載を抜粋します。
受給資格を得るために大切なことは、高次機能障害の障害年金認定基準に該当するかどうかを十分に理解することです。
1.症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能を含む)とは。
- 先天異常
- 頭部外傷
- 変性疾患
- 新生物
- 中枢神経等の器質
を原因として生じる精神疾患に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経等を原因として生じる症状性の精神疾患を含むもの。
なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動(以下「精神作用物質使用によるという。) についてもこの項に含めます。
また、その他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断する。
もう想、幻覚等のあるものについては、統合失調症・統合失調症型及び妄想性並びに気分(感情)障害に準じて取り扱い。
2.高次脳機能障害について、障害認定基準は以下のようになります。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため常時の援助が必要なもの |
2級 | 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため常時の援助が必要なもの |
3級 | 1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの 2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの |
3.脳の器質障害については、精神と神経を区分して考えることはその多岐にわたる臨床症状から不能。
原則としてそれらの諸症状を総合して、全体像から総合的に判断する。
4.精神作用物質使用による精神疾患
ア アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神疾患によるものである。
精神病性を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、対象とならない。
イ 精神作用物質使用による精神疾患は、その原因に留意し、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。
5.高次脳機能障害とは脳損傷に起因する認知等全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。
その主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶、注意、遂行機能、社会的行動などがある。
なお、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。
また、失語については、言語機能の認定要領による。
6.日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない。
その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
高次機能障害など、精神疾患の審査に「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が運用されています。
審査で不支給と決定された割合が「都道府県間で異なる」ため、認定事務の実態を調査したところ、地域差があることがわかったためです。
地域差をなくし、統一する趣旨になり「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」で、等級を判定します。
高次機能障害に関する等級判定ガイドラインの具体的な等級や運用状況については、精神の障害に係る等級判定ガイドライン~精神疾患の審査は厳しいのかにまとめました。
参考引用:日本年金機構『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等
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国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害
令和6年4月分からの年金額等について
令和6年版厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に-(本文)|厚生労働省