
高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金はもらえる?
結論から申し上げますと、高次脳機能障害・アルツハイマー病でも障害年金を受給できる可能性があります。
ただし、受給できるかどうかは病名だけでは決まりません。日常生活への支障、仕事への影響、診断書の内容、申請書類の整合性を総合的に確認する必要があります。
「高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金は難しいと聞いたが、もらえるのか」
「実際に受給した例を知りたい」
「もらえる金額や認定基準を確認したい」
このようなお悩みをお持ちの方に向けて、専門家の視点から解説します。
このページでわかること
- 高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金を受給できるケース
- 初診日と申請で大切なポイント
- 認定基準と等級の考え方
- 実際の受給事例
- もらえる金額の目安
- 働いている場合や施設入所中の注意点
高次脳機能障害・アルツハイマー病でも、適切に準備すれば障害年金を受給できる可能性があります。
実際に、年間60万円以上を受給している方もいらっしゃいます。1級に認定されれば、年額100万円を超えるケースもあります。
この記事の内容は以下からすぐ確認できます。
執筆者紹介|障害年金専門社労士 但田美奈子
はじめまして。
当事務所で障害年金の申請サポートを担当しております、但田美奈子です。
経験15年以上・累計相談件数4,250件(令和8年8月末現在)・受給率97.8%。
高次脳機能障害・アルツハイマー病をはじめ、さまざまな傷病のご相談に対応してまいりました。
高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金を申請するポイント

高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金を受給するためには、症状名だけでなく、原因、初診日、日常生活や仕事への支障、診断書の内容を整理することが重要です。
高次脳機能障害で障害年金を受給するために大切なポイントは、次の3つです。
- 初診日を特定すること(原因が事故か病気か、低酸素脳症かなど)
- 記憶力低下、注意障害、失語症などにより、仕事や日常生活にどの程度の制限があるかを診断書に反映すること
- 病歴・就労状況等申立書と診断書の整合性をとること
特に、交通事故、脳出血、脳梗塞、急性硬膜下血腫、低酸素脳症、認知症など、原因によって初診日の考え方や必要書類が変わることがあります。
高次脳機能障害・アルツハイマー病の障害年金はいくら?

高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金が受給できた場合、等級や初診日に加入していた年金制度により金額が変わります。
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
- 障害基礎年金:1級・2級
- 障害厚生年金:1級・2級・3級
初診日に国民年金に加入していた方は障害基礎年金、厚生年金に加入していた方は障害厚生年金の対象になります。
また、遡及請求が認められる場合は、最大5年分まで遡って受け取れる可能性があります。
障害基礎年金額と子の加算
| 障害等級 | 金額 |
| 1級 | 1,059,125円/年 +子の加算 |
| 2級 | 847,300円/年 +子の加算 |
子の加算

18歳の年度末までの子がいる場合、子の加算がつきます。
| 子の人数 | 金額 |
| 1人目・2人目 | 1人につき 243,800円/年 |
| 3人目以降 | 1人につき 81,300円/年 |
障害厚生年金額と配偶者加給年金
高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害厚生年金1級又は2級に認定された場合、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が支給されます。
3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。
| 障害厚生年金 | 金額 |
| 1級 | 報酬比例額×1.25 +配偶者加給年金 |
| 2級 | 報酬比例額 +配偶者加給年金 |
| 3級 | 最低保障額 635,500円/年 |
配偶者加給年金

障害厚生年金1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されることがあります。
| 障害等級 | 金額 |
| 1級・2級 ※3級はなし |
243,800円/年 |
年金生活者支援給付金
高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害基礎年金1級又は2級を受給する場合、要件を満たすと年金生活者支援給付金が加算されます。
| 等級 | 金額 |
| 1級 | 月額7,025円 |
| 2級 | 月額5,620円 |
高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金を受給した事例

実際に受給した例は、申請を検討するうえで参考になります。
高次脳機能障害で障害厚生年金2級に認定された事例
| 認定 | 障害厚生年金2級 障害認定日請求 |
| 相談者 | 30代男性 神奈川県足柄下郡 |
| 傷病 | 高次脳機能障害 |
| 金額 | 年額約110万円 |
原因は業務中の交通事故でした。
最初は腰痛などの症状でしたが、事故の際に頭部を打たれていました。
その後、記憶、注意、遂行機能、社会的行動、学習などの障害が現れ、仕事を続けることが難しくなりました。
日常生活でも援助が必要な状態でした。
交通事故の場合、加害者との関係で第三者行為災害の書類が必要になることがあります。
書類の準備は大変でしたが、障害認定日請求を行い、無事に障害厚生年金2級に決定しました。
若年性認知症で障害基礎年金2級に認定された事例
| 認定 | 障害基礎年金2級 障害認定日請求 |
| 相談者 | 50代男性 千葉県市川市 |
| 傷病 | 急性硬膜下血腫(若年性認知症) |
| 金額 | 年額約80万円 |
ご相談は弟さんからでした。
現在は有料老人ホームで生活されていました。
長年のアルコール依存症と転倒による急性硬膜下血腫により、若年性認知症と診断されていました。
取得した診断書は、大幅な訂正が必要な内容でした。
施設では介添えや設備がありますが、単身で生活するとしたらどうなのか、という観点で記載していただく必要がありました。
施設にいるから補助があり大丈夫と見られると、実際の生活能力が正しく伝わらないことがあります。
診断書を訂正していただき、無事に障害基礎年金2級に決定しました。
高次脳機能障害・アルツハイマー病の障害年金を受給できる条件

高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金を申請するためには、次の3つの重要な要件があります。
初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日に認定基準に該当すれば、障害年金を受給できる可能性があります。
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。
精神疾患の障害年金認定基準

高次脳機能障害・認知症などは、精神の障害の認定基準により判断されます。
精神疾患全体の基準では、等級について次のように考えます。
| 障害の程度 | 障害の状態 |
| 1級 |
身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできない又は行えない程度 |
| 2級 |
家庭内の軽食・最低限の洗濯等はできるが、それ以上の活動はできない程度 |
| 3級 |
労働することはできるが、健常者と同等に労働することはできない程度 |
精神疾患は、原因、症状、治療、病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定されます。
高次脳機能障害・アルツハイマー病では、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害、日常生活や仕事への支障を具体的に整理することが重要です。
高次脳機能障害・アルツハイマー病の認定基準

障害年金を受給するためには、高次脳機能障害・アルツハイマー病による障害の状態が、障害年金の認定基準に該当するかを確認することが大切です。
高次脳機能障害は、脳損傷に起因する認知等全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となります。
主な症状としては、失語、失行、失認のほか、記憶、注意、遂行機能、社会的行動などがあります。
また、リハビリテーションにより好転がみられる場合もあるため、療養や症状の経過を十分に考慮します。
| 障害の程度 | 障害の状態 |
| 1級 | 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの |
| 2級 | 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活に著しい制限を受けるもの |
| 3級 | 認知障害、人格変化又はその他の精神神経症状により、労働が制限を受けるもの |
認定にあたっては、脳の器質障害による多様な症状を総合して、全体像から判断します。
現に仕事に従事している場合でも、働いていることだけをもって、直ちに日常生活能力が向上したとは判断されません。
仕事の種類、内容、就労状況、職場で受けている援助、他の従業員との意思疎通などを確認したうえで、日常生活能力が判断されます。
交通事故が原因の場合の注意点
交通事故など第三者の行為によって高次脳機能障害となった場合、障害年金と損害賠償の調整が問題になることがあります。
第三者行為災害に該当する場合は、通常の障害年金の書類に加えて、事故や損害賠償に関する書類が必要になることがあります。
状況により必要書類や調整の内容が変わるため、早めに確認することが大切です。
施設入所中の場合の注意点
有料老人ホームや施設で生活している場合、施設の支援を受けて生活が成り立っていることがあります。
そのため、診断書では「施設で生活できているか」だけでなく、「単身で生活するとしたらどうか」という観点も重要です。
施設の介助や設備があるから生活できている場合、その支援がなければどの程度困難なのかを具体的に整理することが大切です。
よくあるご質問
Q. 高次脳機能障害でも障害年金はもらえますか?
高次脳機能障害でも、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などにより、日常生活や仕事に支障がある場合は、障害年金を受給できる可能性があります。
Q. アルツハイマー病や若年性認知症でも障害年金の対象になりますか?
対象になる可能性があります。年齢、初診日、加入していた年金制度、日常生活能力、診断書の内容などを確認して判断します。
Q. 交通事故が原因の高次脳機能障害でも請求できますか?
請求できる可能性があります。ただし、第三者行為災害として、事故や損害賠償に関する書類が必要になることがあります。
Q. 働いていると高次脳機能障害の障害年金は難しいですか?
働いていることだけで直ちに対象外になるわけではありません。仕事内容、職場での援助、意思疎通、記憶や注意の問題、業務上の制限などを確認します。
Q. 施設に入っている場合、診断書で注意することはありますか?
施設の支援により生活が成り立っている場合があります。そのため、単身で生活した場合にどの程度の援助が必要かという観点も重要です。
高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金を検討中の方へ
高次脳機能障害・アルツハイマー病の障害年金は、原因、初診日、保険料納付要件、障害認定日の状態、現在の症状、診断書、病歴・就労状況等申立書によって判断が分かれます。
特に、交通事故が原因の場合、施設入所中の場合、診断書の内容が実際の生活状況と合っていない場合は、早めに状況を整理することが大切です。
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高次脳機能障害・アルツハイマー病で障害年金を申請できるか、初診日、診断書、交通事故、施設入所中の申請に不安がある場合は、状況に応じて確認いたします。
参考資料
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害
令和8年4月分からの年金額等について
令和6年版厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に-
