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発達障害で受給は難しいのか

発達障害で障害年金 申請するために大切なこと

テレビや新聞でも話題になっているように、精神疾患による障害年金の申請に関する相談が急増しています。

厚生労働白書としても「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」と題し、初めて、こころの健康について論じています。

発達障害は近年認知が進んだため相談も多くありますが、受給するのは難しいのでは?との声も多く寄せられています。

「発達障害という名称ではなく、病状がどのような状態であれば、認定基準に該当するのか」十分に理解することです。

発達障害で障害年金を受給するための大切なポイント

  1. 初診日(先天性疾患)
  2. 日常生活能力と障害特性(仕事、食事や他人との意思伝達など)
  3. 病歴・就労等申立書と診断書の整合性(出生や幼少期から)
  4. 労働と日常生活のバランス

労働と日常生活のバランス

4番の「どこまで、どう働くことができるのか」という点も重要です。

仕事をしているという理由で受給が難しく不支給(や支給停止)になる場合も多くあります。

仕事ができるということは、日常生活能力が向上したとみなされやすいのです。

〇就労と日常生活のバランス

但田社労士より解説

例えば、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度の就労など。

保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務等、就労の状態を詳しく伝えることが大事です。

〇現に労働に従事している場合の日常生活能力の判断

発達障害は、本人以外に親御さんからの相談も多くあり、親御さんも、さぞご心配だと思います。

解説

では、具体的にどうすれば、発達障害で障害年金を受給できるのでしょうか?

以下の順でお話します。

  1. もらえる金額
  2. 受給事例
  3. 認定基準

発達障害で障害年金の金額はいくら

発達障害で障害年金 金額はいくらもらえる

発達障害で無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?

実際、受給が決まっても「いくらもらえるのか」がご心配だと思います。

そこで、発達障害で受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。

障害年金には、「基礎」と「厚生」の2つがあります。

  1. 基礎::1級と2級
  2. 厚生::1級、2級、3級

このように、基礎と厚生が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。

もらえる金額もこれに伴って説明していきます。

また、受給した後、国民年金保険料が免除になる制度がありますので、ご検討下さい。

障害年金の額

発達障害の障害基礎年金額

発達障害で、障害基礎年金の1級又は2級に認定されたときの金額を解説していきます。

障害基礎年金の等級 金額
1級 1,020,000円/年
+子の加算
2級 816,000円/年
+子の加算

受給権を得た後、翌月分から支給されます。

この金額を6等分して偶数月に受け取ることになります。

初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。

※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。

子の加算

18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。

 

社労士より

一般的には高校卒業までということです

子の人数 金額
1人目/2人目 1人につき 234,800円
3人目以降 1人につき 78,300円

相談

発達障害の障害厚生年金額

発達障害で、障害厚生年金1級又は2級に認定された場合、障害基礎年金に加えて厚生年金が加算されます。

3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。

障害厚生年金の金額は、給与や勤めていた期間(年齢)に比例するため、人によりまったく違います。

例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。

障害厚生年金 金額
1級 報酬比例額加算×1.25
+ 配偶者加給年金
2級 報酬比例額加算×1.0
+ 配偶者加給年金
3級 612,000円/年 金額は一律

報酬比例部分に300月みなしあり

報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます。

例えば、会社に入社後、それほどたたずしてうつ病になり障害年金の受給を開始した場合など。

最低25年は年金を納付したものとして、ある程度の額の厚生年金が受給できるようになっています。

また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金の計算の基礎とはされません。

但田社労士より解説

年金制度自体は批判も多いのですが、なかなか手厚くなっています。

計算の基礎となるのは、障害認定日までに納付したものまでです。

配偶者加給年金

発達障害で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。

よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。

その場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。

※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。

障害等級 金額
1級・2級
(3級はなし)
234,800円

年金生活者支援給付金

発達障害の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。

年金生活者支援給付金は基礎も厚生も変わらず2級以上であれば支給されます。

金額は毎年変動します。

等級 金額
1級 月6,638円
2級 月5,310円

以上、発達障害でもらえる金額の詳細は下記にまとめました。

障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。

時効と遡及請求

残念ながら発達障害には時効があります。

申請しなければ、過去のものは最大5年間で消滅してしまいます。

もし遡って請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。

これを遡及請求といいます。

発達障害の受給例

相談

実際に「発達障害」でご相談頂き、無事受給できた例をご紹介致します。

いろいろなケースがございますので、ご参考ください。

広汎性発達障害で障害厚生年金2級~160万円

認定 障害厚生年金2級 事後重症請求
相談者 50代男性 千葉県松戸市
傷病 広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害
金額 約160万円

障害認定日による請求

20年程前に会社の異動で業務内容が変更に。

複雑で臨機応変な対応が必要となりましたが、新しい業務を覚えられませんでした。

そのとき特に人に対する態度、コミュニケーション能力に問題があり、そこを周りから指摘を受け自分自身も思い悩むようになったそうです。

その後医療機関を受診し、パニック障害・うつ病と診断。

会社を退職し再就職してもトラブルやミスが多く、短期間での就職と解雇の繰り返しでした。

  1. 自分本位で話したり動いたりしてしまう。
  2. 言葉のキャッチボールができず、会話が成り立たない。
  3. 介護の仕事では、利用者に担当を断られることが多かった。

自分でその理由が理解できず、自殺未遂をするまで追い詰められていきました。

ご本人は病気なので仕方がないのですが、周りはなかなか理解してくれない。

そのジレンマがストレスになり、追い詰められてしまったようです。

その後受診された病院で、広汎性発達障害と診断され治療を受けていらっしゃいます。

初診日が厚生年金加入時でしたので、厚生年金を請求。

病歴・就労状況等申立書は、出生時から記載した為3枚に及びました。

請求から72日で厚生年金2級に認定。

どうしても厚生年金2級を取得したいというお気持ちをとても強くお持ちでした。

社労士より

ご希望通りの結果となり、本当によかったです。

アスペルガー症候群で障害厚生年金2級(遡及請求4年)-480万円

認定 障害厚生年金2級 遡及請求4年
相談者 30代男性 埼玉県和光市在住
傷病 アスペルガー症候群
金額 約120万円 遡及約480万円

遡及請求

子供の頃から、同一性保持の傾向や対人関係が苦手でした。

特に受診することはなく、4年制大学を卒業し就職。

社会人になってから、うつ病の症状が出始め受診しアスペルガーと診断。

現在は、障害者雇用で就労中。

当初は、ご本人が年金事務所で手続きを進めていらっしゃったのですがとても無理とのこと。

ご相談を受け受任しました。

厚生年金の遡及請求をし、認定日と現在の両方厚生年金2級に認定されました。

発達障害の年金の場合、初診が大人になってからでも幼少期からの病歴の申立書を求められます。

社労士

これが、結構大変です。

自閉症アスペルガーで障害基礎年金1級(遡及請求1年)-100万円

認定 障害基礎年金1級 遡及請求1年
相談者 20代女性 東京目黒区
傷病 自閉症アスペルガー症候群
金額 約100万円 遡及約100万円

もう一件ご紹介します。お母さまからのご依頼でした。

ご相談時、あと2カ月弱で21歳のお誕生日というところです。

20歳の誕生日の前日が認定日。

しかし、1年過ぎてしまうと、診断書が2枚必要になってしまう為大急ぎで準備です。

診断書は1度訂正をお願いしましたが、なんとか間に合って認定日の診断書のみで申請。

外出は一人では困難、1人での留守番も2時間が限度とのこと。

生後まもなくから触れられることを嫌がり、多動傾向で目が離せない。

お母さまのご苦労ご心労はいかばかりかと、胸が苦しくなります。

障害基礎年金1級に認められました。

申請から決定までは41日間。

基礎年金1級という最良な結果に、お母さまにも喜んで頂けました。

受給資格

発達障害の受給資格

発達障害で障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。

  1. 初診日~いつお医者さんに行ったか
  2. 保険料納付要件~保険料は納めていたか
  3. 認定基準

初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日に「発達障害の認定基準に該当」すれば、受給できます。

障害認定日は初診日から1年6か月経過したところになります。

精神疾患の障害年金認定基準

精神疾患で障害年金 認定基準

まず、精神疾患全体の認定基準は共通のため、以下参照下さい。

精神疾患全体の基準は、等級について次のように規定しています。

障害の程度 障害の状態
1級 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできない又は行えない程度

2級 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

家庭内の軽食・最低限の洗濯等はできるが、それ以上の活動はできない程度

3級 精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

労働することはできるが、健常者と同等に労働することはできない程度。

実際、この表を見てもいまいちピンとこないと思いますが、以下の文章が重要になります。

精神の疾患の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとする。

精神疾患は、多種であり、かつその症状は同一原因であっても多様である。

したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する。

但田社労士より

この内容が精神疾患の障害年金を請求する場合特有のものです。

病歴や仕事、日常生活の状況により審査されるということになります。

発達障害がどの程度重いのかうまくお医者さんとコミュニケーションが取れていないことも多く、診断書の内容が症状にあっていない場合が多くあります。

発達障害が難しい大きな理由です。

解説

病歴、治療の経過、仕事や日常生活の状況などを主治医にうまく伝えることが大事です。

日常生活の用が不能 → 著しい制限 →労働に著しい制限という感覚がわかりますでしょうか。

発達障害の認定要領

発達障害で障害年金 認定基準とは

受給資格を得るために大切なことは、発達障害の障害年金認定基準に該当するかどうかを、十分に理解することです。

代表的な発達障害の主な障害特性に応じて、日常の生活能力を考える必要があります。

  1. 自閉症スペクトラム(ASD)
  2. 注意欠如多動性障害(ADHD)
  3. 学習障害(LD)

(1) 発達障害の認定基準

  1. 自閉症スペクトラム
  2. アスペルガー症候群
  3. その他の広汎性、学習、注意欠陥多動性その他これに類する脳機能の疾患
  4. その症状が通常低年齢において発現する

年金と通帳

(2) たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の発達障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない。

日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。

また、その他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(3) 通常低年齢で発症する疾患であるが、知的疾患を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は当該受診日を初診日とする。

(4) 認定基準の一部例示は次のとおり。

発達の程度 発達の状 態
1級 社会性やコミュニケーション能力が欠如している。

かつ、発達状態の著しく不適応な行動が見られるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

2級 社会性やコミュニケーション能力が乏しい。

かつ、発達状態の不適応な行動が見られるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

3級 発達の社会性やコミュニケーション能力が不十分。

かつ、発達状態の社会行動に問題が見られるため、労働が著しい制限を受けるもの

(4) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

(5)就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。

精神の障害に係る等級判定ガイドライン

精神の障害に係る等級判定ガイドライン~判定平均と程度

発達障害など、精神疾患の審査に「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が運用されています。

審査で不支給と決定された割合が「都道府県間で異なる」ため、認定事務の実態を調査したところ、地域差があることがわかったためです。

地域差をなくし、統一する趣旨になり「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」で、等級を判定します。

発達障害に関する等級判定ガイドラインの具体的な等級や運用状況については、精神の障害に係る等級判定ガイドライン~精神疾患の審査は厳しいのかにまとめました。

参考引用:日本年金機構『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等

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国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害

令和6年版厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に-(本文)|厚生労働省

令和6年4月分からの年金額等について

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