発達障害の障害年金をもらい忘れていませんか?
発達障害で障害年金を受給するため、大切なポイント
- 初診日(先天性疾患)
- 日常生活能力と障害特性(仕事、食事や他人との意思伝達など)
- 病歴・就労等申立書と診断書の整合性(出生や幼少期から)
受給例紹介、金額はいくらもらえる?認定基準を専門の女性社労士が解説!
発達障害も障害年金の対象です
発達障害の年金請求は、本人以外に親御さんからの相談も多くあります。

親御さんも、さぞご心配だと思います。

では、具体的にどうすれば、発達障害で障害年金を受給できるのでしょうか?以下の順でお話します。
- 受給事例
- もらえる金額
- 認定基準
- 仕事(就労)との関係
発達障害の障害年金受給例
いろいろなケースがございますが、実際に受給した例は参考になると思います。
発達障害で障害厚生年金2級
認定 | 障害厚生年金2級 事後重症請求 |
相談者 | 50代男性 千葉県松戸市 |
傷病 | 広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害 |
受給額 | 約160万円 |
20年程前に会社の異動で業務内容が変更に。
複雑で臨機応変な対応が必要となりましたが、新しい業務を覚えられませんでした。
そのとき特に人に対する態度、コミュニケーション能力に問題があり、そこを周りから指摘を受け自分自身も思い悩むようになったそうです。
その後医療機関を受診し、パニック障害・うつ病と診断。
会社を退職し再就職してもトラブルやミスが多く、短期間での就職と解雇の繰り返しでした。
- 自分本位で話したり動いたりしてしまう。
- 言葉のキャッチボールが出来ず、会話が成り立たない。
- 介護の仕事では、利用者に担当を断られることが多かった。
自分でその理由が理解出来ず、自殺未遂をするまで追い詰められていきました。
ご本人は病気なので仕方がないのですが、周りはなかなか理解してくれない。
そのジレンマがストレスになり、追い詰められてしまったようです。
その後受診された病院で、広汎性発達障害と診断され治療を受けていらっしゃいます。
初診日が厚生年金加入時でしたので、厚生年金を請求。
病歴・就労状況等申立書は、出生時から記載した為3枚に及びました。
請求から72日で厚生年金2級に認定。
どうしても厚生年金2級を取得したいというお気持ちをとても強くお持ちでした。

ご希望通りの結果となり、本当によかったです。
アスペルガー症候群で障害厚生年金2級(遡及請求4年)
認定 | 障害厚生年金2級 遡及請求4年 |
相談者 | 30代男性 埼玉県和光市在住 |
傷病 | アスペルガー症候群 |
受給額 | 約120万円 遡及約480万円 |
子供の頃から、同一性保持の傾向や対人関係が苦手でした。
特に受診することはなく、4年制大学を卒業し就職。
社会人になってから、うつ病の症状が出始め受診しアスペルガーと診断。
現在は、障害者雇用で就労中。
当初は、ご本人が年金事務所で手続きを進めていらっしゃったのですがとても無理とのこと。
ご相談を受け受任しました。
厚生年金の遡及請求をし、認定日と現在の両方厚生年金2級に認定されました。
発達障害の年金の場合、初診が大人になってからでも幼少期からの病歴の申立書を求められます。

これが、結構大変です。
自閉症アスペルガーで障害基礎年金1級(遡及請求1年)
認定 | 障害基礎年金1級 遡及請求1年 |
相談者 | 20代女性 東京目黒区 |
傷病 | 自閉症アスペルガー症候群 |
受給額 | 約100万円 遡及約100万円 |
もう一件ご紹介します。お母さまからのご依頼でした。
ご相談時、あと2カ月弱で21歳のお誕生日というところです。
20歳の誕生日の前日が認定日。
しかし、1年過ぎてしまうと、診断書が2枚必要になってしまう為大急ぎで準備です。
診断書は1度訂正をお願いしましたが、なんとか間に合って認定日の診断書のみで申請。
外出は一人では困難、1人での留守番も2時間が限度とのこと。
生後まもなくから触れられることを嫌がり、多動傾向で目が離せない。
お母さまのご苦労ご心労はいかばかりかと、胸が苦しくなります。
障害基礎年金1級に認められました。
申請から決定までは41日間。
基礎年金1級という最良な結果に、お母さまにも喜んで頂けました。
発達障害で障害年金の金額はいくら
発達障害で障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
発達障害の障害基礎年金額
発達障害で障害年金が認定され、もらえる金額は障害基礎年金か障害厚生年金かで異なります。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
もちろん全員が該当するわけではないのですが、まだ障害年金を請求していないとき、最大5年分遡ることができるのです。これを遡及請求(そきゅうせいきゅう)といいます。
障害等級 | 金額 |
障害基礎年金
1級 |
993,750円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
795,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。

一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 228,700円 |
3人目以降 | 1人につき 76,200円 |
発達障害の障害厚生年金額
発達障害で障害年金1級、2級に認定された場合、障害基礎年金に厚生年金が加算されます。
3級は厚生年金しかありません。
障害厚生年金の金額は、給与や厚生年金を納めていた期間(年齢)に比例するため、人により金額はまったく違います(給与30万円と45万円で1.5倍違います)。
障害基礎年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害基礎年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
596,300円
金額は一律 |
配偶者加給年金
発達障害で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるとき、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
228,700円 |
年金生活者支援給付金
発達障害の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
障害年金を受給した際「年金生活者支援給付金」が加算して支給されるようになりました。
年金生活者支援給付金は基礎年金も厚生年金も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
2級 | 月5,140円 |
1級 | 月6,425円 |
以上、もらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。
障害年金の受給が無事決まった後、金額はいくらもらえるのでしょうか?
受給資格
受給資格を得るために以下の3つが大切になります。
初診日と保険料納付要件
- 初診日
- 保険料納付要件
- 認定基準
初診日と保険料納付要件まとめ。
障害年金をもらうために大切な3つの要件(初診日・保険料納付・認定基準)
精神疾患の認定基準
※以下、「日本年金機構」に掲載されている認定基準をもとにわかりやすく加筆修正。
まず、精神疾患全体の障害年金認定基準。
精神疾患で障害年金をもらうために大切なことは、どのような状態であれば精神疾患で障害年金の認定基準に該当するのかです。
発達障害の認定基準
受給資格を得るために大切なことは、発達障害の障害年金認定基準に該当するかどうかを、十分に理解することです。
代表的な発達障害の主な障害特性に応じて、日常の生活能力を考える必要があります。
- 自閉症スペクトラム(ASD)
- 注意欠如多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
(1) 発達障害の認定基準
- 自閉症スペクトラム
- アスペルガー症候群
- その他の広汎性、学習、注意欠陥多動性その他これに類する脳機能の疾患
- その症状が通常低年齢において発現する
(2) たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の発達障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない。
日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。
また、その他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
(3) 通常低年齢で発症する疾患であるが、知的疾患を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は当該受診日を初診日とする。
(4) 認定基準の一部例示は次のとおり。
発達の程度 | 発達の状 態 |
1級 | 社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ発達状態の著しく不適応な行動が見られるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 | 社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ発達状態の不適応な行動が見られるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
3級 | 発達の社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ発達状態の社会行動に問題が見られるため、労働が著しい制限を受けるもの |
(4) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
(5)就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。
仕事(就労)と発達障害
どこまで、どう働くことができるのか?という点も重要になります。
仕事をしているという理由で不支給(や支給停止)になる場合も多くあります。
仕事ができるということは、日常生活能力が向上したとみなされやすいのです。
しかし、就労と日常生活のバランスが重要になります。
- 就労系障害福祉サービス
- 障害者雇用制度の就労
- 保護的な環境したでの、専ら単純かつ反復的な業務

等、就労の状態を詳しく伝えることが大事となります。
現に労働に従事している場合の日常生活能力の判断
- その療養状況を考慮する
- 仕事の種類
- 内容
- 就労状況
- 仕事場で受けている援助の内容
- 他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認
等級判定ガイドライン
年金の審査にガイドラインが運用されました。
審査の地域格差をなくすためのものです。
精神疾患での、障害年金の審査が等級判定ガイドラインにより大きく変わりました。専門の女性社労士が解説。
発達障害の年金申請はいろいろと複雑な点もあり、女性社労士が初回無料相談で受給判定と申請サポートを行っています。
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害
「発達障害」とは