「うつ病で障害年金を申請すると、もらえる金額はいくら?」
「うつ病による障害年金の受給例や認定基準について知りたい。」
このような疑問に、専門の女性社会保険労務士がわかりやすくお答えします。
はじめまして。東京の社会保険労務士の但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、13年以上にわたり、累計約3,600件の「うつ病などの障害年金申請のサポート」に携わってまいりました。
うつ病で障害年金を申請する要件
最初に、うつ病で障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。
初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、最後に説明するうつ病の「認定基準に該当」すれば、障害年金の受給ができます。
大切なことは「うつ病という名称ではなく、病状がどのような状態であれば、認定基準に該当するのか」を十分に理解することです。
テレビや新聞でも話題になっているように、パワハラや(心理的負荷による)労災を含め、うつ病による障害年金申請に関する相談が大変増えています。
しかし、「うつ病での受給は難しいのでは?」という声も多く寄せられています。
実際のところはどうなのでしょうか。
![解説](https://km-sr.com/wp-content/uploads/baton4-3.gif)
以下の順番で詳しく解説いたします。
- 金額はいくらもらえるのか
- 受給事例
- 認定基準
うつ病で障害年金の金額はいくら?
うつ病で障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
実際、受給が決まっても「いくらもらえるのか」がご心配だと思います。
そこで、うつ病で受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。
- 基礎年金は1級と2級
- 厚生年金は1級と2級、3級
このように、障害年金は基礎年金と厚生年金が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。
もらえる金額もこれに伴って説明していきます。
また、受給した後、国民年金保険料が免除になる制度がありますので、ご検討下さい。
うつ病の障害基礎年金額
うつ病で障害年金が認定された後もらえる金額は、障害基礎年金か障害厚生年金かで異なります。
障害等級 | 金額 |
障害基礎年金
1級 |
1,020,000円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
816,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ることになります。
初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。
![社労士より](https://km-sr.com/wp-content/uploads/tada03-6.gif)
一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 234,800円 |
3人目以降 | 1人につき 78,300円 |
うつ病の障害厚生年金額
うつ病で障害年金1級、2級に認定された場合、障害基礎年金に厚生年金が加算されます。
3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。
障害厚生年金の金額は、給与や厚生年金を納めていた期間(年齢)に比例するため、人により金額はまったく違います。
例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。
障害基礎年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害基礎年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
612,000円/年
金額は一律 |
配偶者加給年金
うつ病で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。
その場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
234,800円 |
年金生活者支援給付金
うつ病の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
年金生活者支援給付金は基礎年金も厚生年金も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
1級 | 月6,638円 |
2級 | 月5,310円 |
以上、もらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。
障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。
障害年金の受給が無事決まった後、金額はいくらもらえるのでしょうか?
受給例
実際にうつ病で受給した例は、参考になると思います。
いろいろなケースがございますが、どのような症状で受給できたのか。ざっとご参考ください。
障害基礎年金2級-80万円
認定 | 障害基礎年金2級 事後重症請求 |
相談者 | 50代男性 東京都江戸川区 |
傷病 | うつ病 |
年金額 | 約80万円 |
奥さまからの相談依頼でした。
ご自身で遡及請求を行った結果、障害認定日(初診日から1年半経った時点)も現在の状態も不支給となりました。
ご提出された書類を持参いただき、審査請求についてのご相談をお受けしました。
診断書の「日常生活能力の判定」および「日常生活能力の程度」は、十分に障害基礎年金2級に該当する状態でした。
しかし、コメント欄が「就労の状況についての記載」に終始していました。
さらに、診断書にはご自身の実際の状況ではなく、本人が、あたかもうつ病でも仕事内容が順調であるかのように話されたことが記載されていました。
審査途中でカルテの提出を求められたそうで、就労の状況が不支給の判断のもとになったと推測されます。
診断書の重要性と再請求の提案
![解説](https://km-sr.com/wp-content/uploads/baton4-3.gif)
提出した診断書の重要性は絶大です。当たり前ですが、後から取り消すことはできません。
審査請求を行いつつ、新しい再請求(事後重症請求)を時期を見て行うことをご提案いたしました。
つまり、両建てで挑む形になります。
審査請求は残念ながら認められませんでしたが、再請求では無事に障害基礎年金2級の認定を受けることができ(期間は約4か月)、奥様にも喜んでいただけました。
![社労士](https://km-sr.com/wp-content/uploads/tada03-6.gif)
一度ダメだったとしても、もう一度行う再請求という道もあります。
障害厚生年金2級(遡及請求5年)-930万円
認定 | 障害厚生年金2級 遡及請求5年 |
相談者 | 女性 東京都品川区 |
傷病 | うつ病 |
年金額 | 約170万円 遡及請求約930万円 |
厚生年金に加入されている時期にうつ病の初診日がありました。
初診日は約6年前で、発症後は休職を経て現在は退職されています。
初診日は大阪でしたが、受診状況等申立書は問題なく取得できました。
認定日頃は現在のクリニックで受診されていたため、その時と現在の2枚の診断書を提出し申請しました。
配偶者の関係証明の重要性と手続き
今回、パートナー様との関係証明に時間を費やされました。
長く入籍されていないことや、認定日頃に住民票が別だった時期があったためです。
追加書類を求められ、当時の結婚式の証明書や請求書まで提出することになりました。
こういった場合、役所が事情を考慮してくれないこともあります。
個別対応が難しいため、仕方ない面もあります。
その分、私たち社会保険労務士の出番です。
申請から決定までの期間は243日(約8か月)かかりました。
審査には照会が入ったため時間がかかりましたが、無事に障害厚生年金2級の受給が認められ、遡及も5年認められました。
![社労士より](https://km-sr.com/wp-content/uploads/tada03-6.gif)
配偶者の加給年金も無事認定。一番いい結果となりました。
受給事例集
うつ病での受給例が多くなりましたので、地域別にまとめました。
東京 | 江戸川区 | 江東区 |
神奈川 | 埼玉 | 千葉 |
うつ病の障害年金認定基準
申請のために大切なポイント
- 初診日の特定
- 実際の障害状態と、医師の診断書との整合性
- 診断書と病歴・就労等申立書の整合性
まず、精神疾患全体の認定基準は共通のため、以下参照下さい。
この中で重要なのは、精神疾患は「多種でありかつその症状は同一原因であっても多様である」の部分です。
したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮することが重要です。
詳しくは精神疾患で障害年金をもらえる状態と認定基準とはをご覧ください。
うつ病は気分(感情)障害
続いて、うつ病の障害年金認定基準になります。
ちなみに、うつ病は審査上「気分(感情)障害」という名称で分類されています。
![社労士より](https://km-sr.com/wp-content/uploads/tada03-6.gif)
気分の問題でもないと思うのですが、文句を言ってもはじまりません。
認定基準は上から、常時援助 → 著しい制限 → 労働制限となっていきます。
(1)うつ病で各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。
等級 | 状 態 |
1 級 | 高度の気分、意欲・行動及び高度の思考障害の病相期があり、かつこれが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの |
2級 | 気分、意欲・行動及び思考障害の病相期があり、かつこれが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限をうけるもの |
3級 | 気分、意欲・行動及び思考障害の病相期があり、その症状は著しくないがこれが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの |
(2)認定にあたっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。
イ うつ病は、本来、症状の著明な時期と症状が消失する時期を繰り返す。
したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮。
また、うつ病とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定。
(3)日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
また、うつ病で現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず。
その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分考慮したうえで日常生活能力を判断。
(4)人格障害は、原則としてうつ病の認定の対象とならない。
(5)神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則としてうつ病の認定の対象とならない。
ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。
詳しくは、神経症で障害年金の申請はできるのか?をご覧下さい。
障害年金の中でも相談が非常に多いのが精神疾患です。主に精神病と神経症があります。神経症は障害年金の対象となるのでしょうか。専門の社労士が解説。
なお、認定にあたっては、精神病の病態がICD-10コードによる病態区分のどの区分に属する病態であるかを考慮し判断すること。
等級判定ガイドライン
精神の疾患の審査にガイドラインが運用されています。
審査の地域格差をなくすためのものです。
うつ病に関する等級判定ガイドラインの運用状況については、以下のリンク先で詳細にまとめています。
精神疾患での、障害年金の審査が等級判定ガイドラインにより大きく変わりました。専門の女性社労士が解説。
働いているときの審査
よくご質問をいただくのが、仕事をしていて収入があるが受給できるのかというものです。
パートタイムのお仕事については問題ありませんが、正社員などの場合は審査が厳しくなる傾向があります。
通常に働ける状態に近ければ、審査がより厳しくなる理由については、肌感覚でご理解いただけるかと思います。
よくご質問を頂くのが、精神疾患で仕事をしていたり、収入があったりしても障害年金の対象になるのか?ということです。障害年金の認定基準は、日常生活に著しい制限があるのか?労働(仕事)の制限はあるのか?により判断されます。
うつ病の障害年金申請はいろいろと複雑な点もあり、女性社労士が受給資格の初回無料相談でサポートしています。
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国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害
令和6年4月分からの年金額
障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました