「うつ病で障害年金を受給した例を知りたい。」
「今から障害年金を申請したいが、もらえる金額や認定基準を知りたい。」
そのようなご相談に向けて解説致します。
はじめまして。
社会保険労務士の但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、12年以上(累計約3,500件)「うつ病など障害年金申請のサポート」に携わってまいりました。
TVや新聞でも話題になっておりますが、パワハラや(心理的負荷による)労災等を含めて、うつ病による障害年金申請に関する相談が大変増えております。
しかし、受給するのは難しいのでは?との声も多く寄せられています。

実際のところはどうなのでしょう?以下の順番で詳しく解説いたします。
- 受給事例
- いくらもらえるのか
- 受給資格(認定基準)
うつ病の障害年金受給例
いろいろなケースがございますが、まず実際に受給した例が参考になると思います。
障害基礎年金2級
認定 | 障害基礎年金2級 事後重症請求 |
相談者 | 50代男性 東京都江戸川区 |
傷病 | うつ病 |
受給額 | 約80万円 |
奥さまからの相談依頼。
ご自身でうつ病の遡及請求をした結果、障害認定日(初診日から1年半経ったとき)も現在も不支給という結果。
提出された書類をお持ち頂き、審査請求についての相談をお受けしました。
診断書の日常生活能力の判定、日常生活能力の程度は十分基礎年金2級に該当している状態でした。
しかし、コメント欄が就労の状況についての記載に終始していました。
診断書にご自身の実際の状況ではなく、ご本人があたかもうつ病でも仕事内容が順調であるかのごとく話したことが記載されています・・・。
審査途中でカルテの提出を求められたそうです。
就労の状況、それが不支給の判断のもとになったと推測します。
提出した診断書の力は絶大です。

当たり前ですが、後から取り消すことはできません。
審査請求しつつ、時期をみて再請求(事後重症請求)のご提案をいたしました。
つまり両建てです。
審査請求は残念ながら認められませんでしたが、再請求では無事障害基礎年金2級になり(期間は約4か月)、奥様にも喜んで頂けました。

一度ダメだったとしても、もう一度行う再請求という道もあります。

障害厚生年金2級(遡及請求5年)
認定 | 障害厚生年金2級 遡及請求5年 |
相談者 | 女性 東京都品川区 |
傷病 | うつ病 |
受給額 | 約170万円 遡及請求約930万円 |
厚生年金に加入されている時がうつ病の初診ひ(6年程前)。
発症後、休職を経て現在は退職されています。
初診日は大阪でしたが、受診状況等申立書は問題なく取得できました。
認定日頃は現在のクリニックで受診されていましたので、その時と現在2枚の診断書を提出し申請
長く入籍されていないのと、認定日頃住民票が別だった時期もありました。
追加書類を求められ当時の結婚式の証明書や請求書まで提出することに。
こういったところは、役所に考慮して頂けません・・・。
各一的な処理というので仕方ないのでしょうね。
その分私達社労士の出番です。
申請から決定まで期間は、243日(約8か月)。
審査は照会が入った分時間がかかりましたが、無事障害厚生年金2級(遡及5年)受給。
配偶者の加給も無事認定。

一番いい結果となりました。
受給事例集
うつ病での受給例がかなり多くなりましたので、地域別にまとめました。
東京 | 江戸川区 | 江東区 |
神奈川 | 埼玉 | 千葉 |
うつ病で障害年金の金額はいくら?
うつ病で障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
等級ごとの金額や加算される手当を解説していきます。
うつ病の障害基礎年金額
うつ病で障害年金が認定された後もらえる金額は、障害基礎年金か障害厚生年金かで異なります。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
もちろん全員が該当するわけではないのですが、まだ障害年金を請求していないとき、最大5年分遡ることができるのです。これを遡及請求(そきゅうせいきゅう)といいます。
障害等級 | 金額 |
障害基礎年金
1級 |
993,750円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
795,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。

一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 228,700円 |
3人目以降 | 1人につき 76,200円 |
うつ病の障害厚生年金額
うつ病で障害年金1級、2級に認定された場合、障害基礎年金に厚生年金が加算されます。
3級は厚生年金しかありません。
障害厚生年金の金額は、給与や厚生年金を納めていた期間(年齢)に比例するため、人により金額はまったく違います(給与30万円と45万円で1.5倍違います)。
障害基礎年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害基礎年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
596,300円/年
金額は一律 |
配偶者加給年金
うつ病で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるとき、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
228,700円 |
年金生活者支援給付金
うつ病の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
障害年金を受給した際「年金生活者支援給付金」が加算して支給されるようになりました。
年金生活者支援給付金は基礎年金も厚生年金も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
1級 | 月6,425円 |
2級 | 月5,140円 |
以上、もらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。
障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。
障害年金の受給が無事決まった後、金額はいくらもらえるのでしょうか?
うつ病の受給資格と認定基準
大切なことは「うつ病がどのような状態であれば、認定基準に該当するのか」を十分に理解することです。
以下のような点が、申請のポイントになります。
- 初診日の特定
- 実際の障害状態と医師の診断書に整合性
- 診断書と病歴・就労等申立書の整合性
受給資格
うつ病で障害年金の受給資格を得るために以下3つが大切になります。
- 初診日
- 保険料納付要件
- 認定基準
初診日と保険料納付要件をまとめました。
障害年金をもらうために大切な3つの要件(初診日・保険料納付・認定基準)
この後認定基準を解説していきます。
精神疾患の認定基準
精神疾患全体の認定基準は共通のため、以下参照下さい。
精神疾患で障害年金をもらうために大切なことは、どのような状態であれば精神疾患で障害年金の認定基準に該当するのかです。
※日本年金機構の国民年金・厚生年金保険障害認定基準をわかりやすく加筆修正。
うつ病の障害年金認定基準
続いて、うつ病の認定基準になります。
受給資格を得るために大切なことは、うつ病がどのような状態であれば、認定基準に該当するのかを十分に理解することです。
ちなみに審査上、気分(感情)障害という名称で分類されています。

気分の問題でもないと思うのですが、文句を言ってもはじまりません。
黄色部分で審査の感覚はつかめますでしょうか。
認定基準は上から、常時援助 → 著しい制限 → 労働制限となっていきます。
(1)うつ病で各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおり。
等級 | 状 態 |
1 級 | 高度の気分、意欲・行動及び高度の思考障害の病相期があり、かつこれが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの |
2級 | 気分、意欲・行動及び思考障害の病相期があり、かつこれが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限をうけるもの |
3級 | 気分、意欲・行動及び思考障害の病相期があり、その症状は著しくないがこれが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの |
(2)認定にあたっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。
イ うつ病は、本来、症状の著明な時期と症状が消失する時期を繰り返す。
したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮。
また、うつ病とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定。
(3)日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
また、うつ病で現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず。
その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分考慮したうえで日常生活能力を判断。
(4)人格障害は、原則としてうつ病の認定の対象とならない。
(5)神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則としてうつ病の認定の対象とならない。
ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。
詳しくは、神経症で障害年金の申請はできるのか?をご覧下さい。
障害年金の中でも相談が非常に多いのが精神疾患です。主に精神病と神経症があります。神経症は障害年金の対象となるのでしょうか。専門の社労士が解説。
なお、認定にあたっては、精神病の病態がICD-10コードによる病態区分のどの区分に属する病態であるかを考慮し判断すること。
等級判定ガイドライン
精神の疾患の審査にガイドラインが運用開始されています。
審査の地域格差をなくすためのものです。
うつ病に係る等級判定ガイドライン運用。審査の状況にまとめました。
精神疾患での、障害年金の審査が等級判定ガイドラインにより大きく変わりました。専門の女性社労士が解説。
働いているときの審査
よくご質問をいただくのが、仕事をしていて収入があるが受給できるのかというものです。
パート程度のお仕事は問題ないのですが、正社員等の場合審査が厳しくなってきます。
通常に働ける状態に近ければ審査が厳しくなるのは、何となく肌感覚でご理解頂けるとは思います。
よくご質問を頂くのが、精神疾患で仕事をしていたり、収入があったりしても障害年金の対象になるのか?ということです。障害年金の認定基準は、日常生活に著しい制限があるのか?労働(仕事)の制限はあるのか?により判断されます。
うつ病の障害年金申請はいろいろと複雑な点もあり、女性社労士が受給資格の初回無料相談でサポートしています。
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精神の障害による障害の程度は、次により認定する。
「うつ病」とは
令和5年4月分からの年金額等について
障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました