「20歳前傷病による障害基礎年金は、給与が増えると障害年金は減らされてしまうのか?」
「障害基礎年金の収入(所得)と支給停止の関係が知りたい」
このような疑問に、わかりやすくお答えします。
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋で13年以上にわたり、累計3,600件以上の「障害年金申請の相談」に応じてきました。
まず原則として、障害年金に所得による支給制限はありません。
所得による支給制限があり支給停止されるのは、20歳前傷病による障害基礎年金だけです。
20歳前傷病の障害基礎年金とは
20歳誕生日より前、つまり未成年で年金制度に加入していないときに「初診日がある傷病」を、障害年金で「20歳前傷病」と言います。
この場合、障害基礎年金が支給されます。
ちなみに、もし厚生年金に加入していれば、障害厚生年金の対象です。
初診日が20歳より前にある場合、そもそも年金制度に加入していないのですから、そもそも納付することができません。
そのため、20歳前傷病による障害年金は、納付要件は問われないことになっています。
しかし、特に知的障害など子供の頃(20歳前)からの障害の場合、必ず20歳前の対象であり所得制限が問題となります。
知的障害
知的障害は、原則として、生まれた日が初診日とみなされます。
もし初めて受診した日が厚生年金加入中だったとしても、原則として出生日が初診日(基礎年金対象)となります。
発達障害
発達障害の場合は、知的障害を伴うかどうかの判断となります。
伴ってない場合、初めて病院にかかった日が初診日となります。
20歳前傷病の所得による支給制限
収入(所得)による支給停止は、20歳前傷病の所得制限と言われるものです。
そもそも納付をしていないので、所得が増えた場合支給停止することもありえるという考え方からきています。
質問を頂いたので、それに沿って解説していきます。
Q:平成8年(当時学生)にネフローゼ症候群で入院。
その後定期通院による温存療法を続けていたが、腎機能が低下し透析導入しました。
この場合、学生の頃(20歳前)が初診日かと思います。
現在は通院しながら働いており、所得の制限などはかかりますでしょうか?
初診当時は20歳前となりますね。20歳前傷病での障害年金には、所得制限があります。
障害年金の請求をして無事認定されても、所得制限にかかる場合支給停止となります。
20歳前に初診日のある障害基礎年金については、ご相談者が元々保険料を納付していないことから、所得制限が設けられているからです。
先ほど記載したように、特に知的障害や発達障害で子供の頃(20歳前)からの障害が対象の場合です。
初診日が20歳前となることから、この所得制限が問題となります。
所得制限にかかる支給停止金額
前年の所得額が4,721,000円を超える場合、年金の全額が支給停止。
3,704,000円を超える場合、2分の1の金額が支給停止となります。
67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ)
出典:日本年金機構
〇昭和31年4月2日以後生まれ
扶養家族がない場合の所得制限(扶養家族1人につき 380,000加算されます)
前年所得 | 支給 | 支給年金 |
4,721,000円超 | 全額停止 | – |
3,704,001~
4,721,000円 |
2分1停止 | 496,875円(1級)
397,500円(2級) |
3,704,000円以下 | 全額支給 | 1,020,000円(1級)
816,000円(2級) |
所得制限の期間
1年間(1月~12月)の所得の額が限度額を超えると、翌年10月分から翌々年9月分までの1年間につき、全額または半額の支給が停止されます。
ちなみに、支給の停止は1年1年で判断され、所得制限にかからなければ再び支給が開始されます.
いずれにしても、請求はされておいた方がよろしいかと思います。
20歳前に傷病を負った人の障害基礎年金については、年金の加入を要件としていないことから、年金の支給に関して制限や調整があります。