「今から糖尿病で障害年金を申請したいが、もらえる金額はいくら?」
「糖尿病による障害年金の受給例や、認定基準について知りたい。」
このような疑問に、わかりやすくお答えします。
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、13年以上にわたり累計約3,600件の「糖尿病など障害年金の相談と申請サポート」に携わってまいりました。
糖尿病で障害年金の申請を忘れていませんか?
具体的にどうすれば、糖尿病で障害年金を受給できるのでしょうか?
以下の順でお話します。
- もらえる金額
- 受給事例
- 受給資格
- 認定基準
1型・2型糖尿病は障害年金の対象です
糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害等、いろいろな合併症があります。
徐々に悪化していくことも多いため、初診日の特定など難しいことも多くあります。
糖尿病には1型・2型がございますが、認定基準に1型、2型における違いはありません。
いずれの糖尿病も障害年金の対象となります。
1型・2型糖尿病の障害年金は、必要なインスリン治療を行っても、なお血糖値のコントロールが困難な方が申請対象です。
認定要領に詳しく記載しますが、コントロールできる場合、残念ですが対象となりません。
糖尿病で障害年金の金額はいくら
糖尿病で障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
実際、受給が決まったはいいが「いくらもらえるのか」が最も重要なところです。
そこで、糖尿病で受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。
- 基礎::1級と2級
- 厚生::1級、2級、3級
このように、障害年金は基礎と厚生が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。
もらえる金額もこれに伴って説明していきます。
糖尿病の障害基礎年金額
糖尿病で障害基礎年金の、1級又は2級に認定されたときの金額を解説していきます。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
障害等級 | 金額 |
障害厚生年金
1級 |
1,020,000円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
816,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ることになります。初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。
一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 234,800円 |
3人目以降 | 1人につき 78,300円 |
糖尿病の障害厚生年金額
糖尿病で障害厚生年金1級、又は2級に認定された場合、障害基礎年金に加えて厚生年金が加算されます。
3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。
障害厚生年金の金額は、給与や勤めていた期間(年齢)に比例するため、人によりまったく違います。
例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。
障害厚生年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
612,000円/年
金額は一律 |
配偶者加給年金
糖尿病で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。その場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
234,800円 |
年金生活者支援給付金
糖尿病の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
年金生活者支援給付金は基礎も厚生も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
1級 | 月6,638円 |
2級 | 月5,310円 |
以上、糖尿病でもらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。
障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。
糖尿病の障害年金受給例
糖尿病で実際に受給した例は参考になると思います。
いろいろなケースがございますが、どのような症状で受給できたのかご参考ください。
糖尿病性網膜症で障害基礎年金2級-80万円
認定 | 障害基礎年金2級 事後重症請求 |
相談者 | 50代男性 神奈川県川崎市 |
傷病 | 糖尿病性網膜症 |
金額 | 約80万円 |
網膜症で合併症の一つです。
ご年配のお母さまからお電話でご連絡を受け、お会いしてご相談を受けました。
親御さんからのご相談も多いのですが、ご高齢のお母様のお気持ちを思うとぜひお力になりたいと思います。
左眼は殆ど見えない状態。右眼もかなり視力が落ちています。
糖尿病網膜症は精密眼底検査をすると、その進みぐあいにより大きく三段階に分けられます。
自宅内は日頃の慣れと感覚で生活していますが、基本手探りの為日常生活はかなりご不便な状況。
この自宅と外出時というのも、ご本人様にとっては感覚がまったく違います。
障害年金の審査では、なかなかそこまで汲み取って頂けないのが悔しいところ・・・。
年金事務所とやり取りをして、受診状況等証明書は取得されていました。
その後お母さまが書類の多さや内容に手続きをする自信がないと、代理請求のご依頼を頂きました。
年金保険料の納付についても、確認したところ納付要件は満たしていらっしゃったので診断書の依頼に。
糖尿病から眼の疾患に関して障害年金を申請する場合、視力視野共数値の状況で決まります。
障害者手帳を取得された時の視力では、障害等級2級にわずかに届かない状態・・・。
しかし2年以上前ですので進行している可能性は高いと考えました。
実際に診断書を取得してみると、視力は以前よりいい数値だったのですが、手帳には記載のない視野の障害が。
通常合併症での申請の場合、糖尿病での初診が障害年金の初診となるのがほとんどです。
但し、目が見えにくいことで初めて眼科を受診され、糖尿病であることが判明した為、眼科が初診日でした。
珍しいことですが、初診の病院は眼科でも内科でも問題ありません。
診断書を書いていただくのに時間がかかってしまいましたが、申請し49日で障害基礎年金2級の決定。
お母さまにも喜んで頂けて、本当によかった!
障害厚生年金3級(遡及請求5年)-480万円
認定 | 障害厚生年金3級 遡及請求5年 |
相談者 | 40代男性 東京都江東区 |
傷病 | 糖尿病 |
金額 | 約90万円 遡及金額480万円 |
現在も在職中で、治療をしながらお仕事を続けていらっしゃいます。
初診日は10年前。総合病院が初診で現在も同じ病院のいくつかの科で受診中。
障害認定日頃から、糖尿病の血糖コントロールが不良であった為、遡及請求することに。
しかし現在の診断書では血糖コントロールが少し改善されていたため、足変形の障害の診断書も提出。
無事、障害認定日で受給でき5年分の遡及が決定。
また、年金証書を受け取られてから1か月程して、次回の診断書提出のスパンが1年→3年に変更になりました。
これも大きいです。1年と3年ではご本人の負担がかなり違いますから。
受給資格
脳出血で障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。
初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日に後で述べる「糖尿病の認定基準に該当」すれば、受給できます。
初診日の確定
糖尿病は初診日の確定が難しいため、相当因果関係を特定できるかどうかが大事になります。
例えば、自営業で国民年金加入中に糖尿病になり受診。
数年後、自営業を辞めて会社員になり、その数年後に脳梗塞で倒れました。
この場合、障害年金の初診日は、糖尿病でしょうか?脳梗塞でしょうか?
この場合、障害年金申請できるかどうかは、相当因果関係があるかどうかで考えます。
認定基準では脳梗塞は相当因果関係がないとされているので、糖尿病ではなく脳梗塞を初診として障害厚生年金の申請となります。
糖尿病から人工透析になるケースも多いため、人工透析もご参照下さい。
糖尿病と相当因果関係
糖尿病と相当因果関係があるもの
- 糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病性動脈閉塞症等
糖尿病と相当因果関係がないもの
- 脳内出血
- 脳梗塞
例えば、糖尿病が原因で人工透析となった場合、糖尿病の初診日が障害年金の初診日となります。
糖尿病は治療歴が何十年という方も少なくありません。
ひとつの病院にずっと通院されていたり、糖尿病手帳など他の資料で初診日が証明できたりできれば問題ありません。
しかし、転院を繰り返されていたり治療を中断されていたりする場合、初診日の証明は困難を極めます。
例えば、糖尿病から人工透析になった場合など、非常に長いあいだ(何十年など)に悪くなっていくので、カルテがないのはよくある話なのです。
- カルテがない。
- 病院がない。
- 医師がもういない。
このように糖尿病の初診日を証明できない場合がかなりあります。
声を大にして言いたい!カルテの保存義務5年これ、何とかならないのでしょうか。
あきらめずに何かしら記録を探っていくしかありません。
認定基準
※日本年金機構の国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第15節 代謝疾患による障害をわかりやすく加筆修正。
次に認定基準をお話ししていきます。
糖尿病の場合、障害年金の認定基準が少し特殊です。
受給資格を得るために大切なことは、糖尿病の障害年金認定基準に該当するかどうかを十分に理解することです。
原則として糖尿病、糖尿病性と明示されたすべての合併症が対象。
注意点として、病名よりも日常生活などいろいろな観点からの判断となります。
糖尿病による障害の程度は以下を十分考慮し総合的に判断。
- 合併症の有無及びその程度
- 代謝のコントロール
- 治療及び症状の経過
- 具体的な日常生活状況等
糖尿病の合併症(糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症など)については、対象疾患ごとの認定基準(腎疾患や眼の障害など)によって判定されます。
糖尿病の障害年金申請は、初診日や合併症などいろいろと複雑な点もあり受給資格は初回無料相談中です。メールやお電話で問合せ下さい。
その時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状で次のように判断。
障害等級 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
糖尿病の障害年金認定要領
- 代謝疾患は、認定の対象となる障害は糖尿病が圧倒的に多い。
- 糠尿病とは、インスリンの作用不足に基づく代謝異常でその中心をなすのは高血糖。
- 糖尿病による障害は合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状治療及び症状の経過、具体的な日常生活等を十分考慮し総合的に認定。
糖尿病障害の程度を一般状態区分表で示す。
区分 | 一般状態 |
---|---|
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく発病前と同等にふるまえる |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできる。例えば軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが日中の50%以上は起居している |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており自力では屋外への外出等がほぼ不可能 |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られる |
糖尿病については、必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもので、次のいずれかに該当するものを障害年金3級とする。
ただし、検査日より前に 90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていることについて、確認のできた者に限り糖尿病の認定を行う。
症状・検査成績及び具体的な日常生活状況等により、さらに上位等級になる可能性もある。
ア.内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時又は随時の血清Cベプチド値が 0.3ng/ml未満を示し、一般状態区分表のウ又はイに該当。
イ.意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が、平均して月1回以上ある。
ウ.インスリン治療中に、糖尿病ケトアシドーシス又は高血糖高浸透圧症候群による入院が、年1回以上ある。
イ、ウは一般状態区分表のイ又はウに該当。
合併症がある場合
合併症 | 認定基準 |
尿病性網膜症を合併した場合、眼の障害。 | 糖尿病性網膜症による眼の障害眼の障害の認定基準 |
糖尿病性神経障害は、激痛、著明な知覚の障害、重度の自律神経症状等があるものは、神経系統 | 肢体の障害の認定基準 |
糖尿病性腎症(人工透析等) | 腎疾患による障害の認定基準 |
※単なる痺れ、感覚異常は受給対象となりません。ただし、糖尿病性神経障害が長期間持続するものは3級に該当します。
糖尿病の障害年金申請は、初診日の確定などいろいろと複雑な点もあり、女性社労士が初回無料相談で受給判定と申請サポートを行っています。
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