「統合失調症の障害年金は収入があっても、もらえるのか」
「働いていると、審査の基準は厳しくなるのか。」
「受給できたあとの収入との調整は?」
このようなことでお悩みでしょうか?
統合失調症で障害年金をもらい忘れていませんか?
精神疾患でも年間最低60万円以上の受給が可能です。
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、13年以上にわたり累計約3,600件の「統合失調症など障害年金の無料相談から申請サポート」に携わってまいりました。
統合失調症の障害年金は、定められている認定基準に沿って審査されます。
しかし、統合失調症や精神疾患がある方が働いていたり収入がある場合、審査やそのあとのお仕事が不安との声を頂きます。
収入との調整や統合失調症の障害年金認定基準を解説します。
働いている場合の審査は難しいのか
よく寄せられるご質問に「働いていて仕事をしている(収入がある)場合、統合失調症で障害年金の審査は難しいのか?」というものがあります。
結論から申し上げます。
パートタイムで働いている場合は問題ないことも多いです。
しかし、正社員としてのフルタイム勤務や、安定した収入がある場合には審査が難しくなる傾向があります。
障害年金が主に、生活の所得補償を目的として支給されるためです。
つまり、通常の仕事ができるほど回復していると判断される場合、審査が厳しくなるのです。
この点については、感覚で理解いただけるかと思います。
「病歴・就労状況申立書」で詳しく、働いている経緯や状況を伝える必要があります。
障害者雇用など、いろいろな理由もありますので。
受給できた後の収入との調整
一方で受給できた後、障害基礎、厚生どちらの年金でも収入(所得)による制限はありません。
まず原則として、障害年金に所得による支給制限はありません。
所得による支給制限があり支給停止されるのは、20歳前傷病による障害基礎年金だけです。
ですから、受給後のお仕事や転職等で悩まれる必要はございません。
お仕事ができればそれが一番いいことです。この後具体的な認定基準等をお話していきます。
受給資格
統合失調症で障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。
初診日と保険料納付要件はそれぞれご確認下さい。
精神疾患の認定基準
まず、精神疾患全体の認定基準は共通のため、以下参照下さい。
精神疾患全体の基準は、等級について次のように規定しています。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
→身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできない又は行えない程度 |
2級 | 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
→家庭内の軽食・最低限の洗濯等はできるが、それ以上の活動はできない程度 |
3級 | 精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの →労働することはできるが、健常者と同等に労働することはできない程度。 |
実際、この表を見てもいまいちピンとこないと思いますが、以下の文章が重要になります。
精神の疾患の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとする。
精神疾患は、多種であり、かつその症状は同一原因であっても多様である。
したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する。
この内容が精神疾患で請求する場合特有のもので、病歴や仕事、日常生活の状況により審査されるということになります。
つまり、統合失調症がどの程度重いのかうまくお医者さんとコミュニケーションが取れていないことも多く、診断書の内容が症状にあっていない場合が多くあります。
統合失調症で障害年金が難しい大きな理由です。
病歴、治療の経過、仕事や日常生活の状況などを主治医にうまく伝えることが大事です。
日常生活の用が不能 → 著しい制限 →労働に著しい制限という感覚がわかりますでしょうか。
統合失調症の認定要領
受給するためには、統合失調症という病名だけでなく、認定基準に該当するかどうかを理解することが重要です。
(1)各等級の障害状態の例示
等級 | 障害の状態 |
1 級 | 高度の残遺状態又は病状があるため高度の人格変化、思考障害その他もう想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の介護が必要なもの。 |
2級 | 残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他もう想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの。 |
3級 | 残遺状態又は病状があり人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他もう想・幻覚等に異常体験があり、労働が制限を受けるもの。 |
(2)統合失調症の認定にあたっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。
統合失調症は予後不良の場合もあり、国年令別表・厚年令別表第1に定める障害の状態に該当すると認められるものが多い。
しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもある。
したがって、統合失調症として障害年金の認定を行うものに対しては、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。
(3)統合失調症の日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない。
その他以下の療養状況を考慮
- 仕事の種類
- 内容
- 就労状況
- 仕事場で受けている援助の内容
- 他の従業員との意思疎通の状況等を十分考慮
- 日常生活能力を判断
仕事をしていても状態により対象になると記載されています。
(4)人格障害は、原則として統合失調症の障害年金認定の対象とならない。
(5)神経症にあっては、その症状が長期間持続し一見重症なものであっても、原則として障害年金認定の対象とならない。
ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。
詳しくは、神経症で障害年金の申請はできるのか?に記載しています。
日常の生活能力について
最初に記載したように、診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の記載内容が重要です。
統合失調症は、症状が軽快したり増悪したりすることがあり、また人によって症状も様々です。
認定は入院の有無や経過も重要な要素ですが、やはり日常生活能力の程度が大きな影響を与えます。
お医者さんに日常生活の状態をよく伝え理解してもらい、適切な診断書を作成していただくことが必要です。
幻聴や妄想
統合失調症で受給できる場合の代表的な症状です。
しかし、幻聴や妄想が必須条件というわけではありません。
初期の頃は幻聴や妄想があったが今はほとんど見られず、暴言や破壊行為を繰り返す、または陰性症状(無気力・無表情・鈍磨)を示す場合も審査で評価され、障害年金の申請が可能です。
病識がない場合
統合失調症の方は病識がない場合も多く、日常がその状態のため慣れが生じてしまうことがあります。
自己判断で受診を中断するケースも多く、認定日当時の診断書が取れず、やむを得ず事後重症請求になることもあります。
また、カルテがなかったり医院が廃業したりする場合、初診の証明が困難となることがあります。
統合失調症は初診日が特定できない場合が多く、不支給となるケースも少なくありません。申請の準備は慎重に行いましょう。
このあたりは複雑になってくるので、無料相談で行っています。ぜひご利用ださい。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
統合失調症など、精神疾患の審査に「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が運用されています。
審査で不支給と決定された割合が「都道府県間で異なる」ため、認定事務の実態を調査したところ、地域差があることがわかったためです。
地域差をなくし、統一する趣旨になり「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」で、等級を判定します。
統合失調症に関する等級判定ガイドラインの具体的な等級や運用状況については、精神の障害に係る等級判定ガイドライン~精神疾患の審査は厳しいのかにまとめました。
参考引用:日本年金機構『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等
薬で治まっている状態
ある質問を頂きました。
Q.家族が、数年前に統合失調症と診断され、現在も心療内科に通院しています。
現在、薬で被害妄想などはなんとか治まっていますが、働くことはおろか、無気力状態で家の中の家事等は一切できない状態です。
このような状態で障害年金の対象になるでしょうか。
A.お仕事ができる状態ではなく、日常生活にもかなりの支障が出てらっしゃるようですので、たとえ薬で一部の症状が治まっているにしても、対象になると思われます。
勿論、初診日や納付の要件を満たしていることが前提となります。
統合失調症で障害年金を受給するためには、日常生活への影響や医療記録との整合性が重要であり、それに基づいて障害等級が判定されます。
少しでも、統合失調症にかかる公的な年金に関して理解が深まれば幸いです。
障害年金専門の社労士 経験13年、相談累計3,668件(令和6年8月末現在) 受給率97.8%。
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令和6年版厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に-(本文)|厚生労働省
精神の障害による障害の程度は、次により認定する。