「統合失調症で障害年金を受給した例を知りたい。」
「今から障害年金を申請したいが、もらえる金額や認定基準を知りたい。」
そのようなご相談に向けて解説致します。
はじめまして。
社会保険労務士の但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、12年以上(累計約3,500件)「統合失調症など障害年金申請のサポート」に携わってまいりました。
精神疾患による「統合失調症等の障害年金申請に関する相談」が大変増えています。
受給するのは難しいという声も目立ちますが、実際のところどうなのでしょうか?

統合失調症に焦点を当て、以下の順番で詳しく解説いたします。
- 受給事例 実際に受給された例
- もらえる金額 いくらもらえるのか
- 受給資格 受給するための要件
- 認定基準 認められる基準
受給事例
障害基礎年金2級(遡及請求5年)
認定 | 障害基礎年金2級 遡及請求5年 |
相談者 | 50代男性 東京都品川区在住 |
傷病 | 統合失調症 |
受給額 | 約80万円 遡及請求約420万円 |
統合失調症を発症されたのは20歳頃。
町中の人から罵声を浴びせられるようになりました。
それが幻覚や幻聴とは思いもよらず、いつも身の危険を感じ怯えていたそうです。
しかし、難しいもので統合失調症の場合は、ご本人にとっては真実なのです。
その後、初めて精神科を受診されたのは26歳頃(平成6年)。
1ヶ月程通院されましたが、その後気持ちが楽になり受診されていない期間が続きました。
その間はお仕事も通常にできていて、社会生活も普通に問題なく過ごしていた。
しかし7年後の平成13年、夜勤が続き疲れもたまり精神的にも肉体的にも限界にきたようです。
あの幻覚幻聴が再燃し、現実との区別がつかず混乱状態に。
別病院の精神科を受診され、統合失調症で現在まで治療を続けています。
現在は週に3,4回、短時間体調をみながらアルバイトを。
お話を確認し 統合失調症は社会的治癒にあったとして、再発した平成13年を初診日として障害基礎年金を申請。
無事初診日も認められ、障害基礎年金2級(遡及請求5年)に認定。
決定後、丁寧なお礼のメールを頂きました。
「先週の金曜日に、国民年金証書が無事に送られて来て、支給決定しました。
本当に、ありがとうございました!感謝しても感謝仕切れないかぎりです。
但田さまのご尽力のたまものだと思います。本当にありがとうございます。」

こちらこそ、ご丁寧なご連絡を頂けると本当にうれしいです!
障害厚生年金2級受給
認定 | 障害厚生年金2級 事後重症請求 |
相談者 | 40代男性 東京都大田区在住 |
傷病 | 統合失調症 |
受給額 | 約150万円 |
奥様からお電話でご連絡を頂き、日本橋の事務所でのご相談から依頼でした。
統合失調症発症時以下のような症状。
- 何者かに監視されている。
- 思考を読み取られている感覚
- 職場で自分が孤立するよう誰かが差し向けているという思いが頭から離れない
- 頭痛と疲労感
脳に異常はなく、統合失調症と診断され治療を継続。
現在、就労継続支援事業所で1日4時間程のお仕事が精いっぱいの状況。
収入が少ないことを気にして、食事の回数を減らすこともあるとのこと。
統合失調症の初診は厚生年金加入時でしたので、障害厚生年金(事後重症)申請。
無事、統合失調症で障害厚生年金2級に認定されました。
請求から決定まで64日間。
障害年金を受給できることで、収入の心配が少しはなくなります。

まず療養して頂きたいなと思います。
地域別受給事例
受給例が増えてきたので、地域別にわけました。
東京 | 江戸川区・江東区 |
千葉 | 埼玉 |
統合失調症で障害年金の金額
障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?等級ごとの金額や加算される手当を解説していきます。
統合失調症の障害基礎年金額
統合失調症で障害年金が認定された後もらえる金額は、障害基礎年金か障害厚生年金かで異なります。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
もちろん全員が該当するわけではないのですが、まだ障害年金を請求していないとき、最大5年分遡ることができるのです。これを遡及請求(そきゅうせいきゅう)といいます。
障害等級 | 金額 |
障害基礎年金
1級 |
993,750円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
795,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。

一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 228,700円 |
3人目以降 | 1人につき 76,200円 |
統合失調症の障害厚生年金額
統合失調症で障害年金1級、2級に認定された場合、障害基礎年金に厚生年金が加算されます。
3級は厚生年金しかありません。
障害厚生年金の金額は、給与や厚生年金を納めていた期間(年齢)に比例するため、人により金額はまったく違います(給与30万円と45万円で1.5倍違います)。
障害基礎年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害基礎年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
596,300円
金額は一律 |
配偶者加給年金
統合失調症で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるとき、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
228,700円 |
年金生活者支援給付金
統合失調症の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
障害年金を受給した際「年金生活者支援給付金」が加算して支給されるようになりました。
年金生活者支援給付金は基礎年金も厚生年金も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
2級 | 月5,140円 |
1級 | 月6,425円 |
以上、もらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。
障害年金の受給が無事決まった後、金額はいくらもらえるのでしょうか?
受給資格
特に診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の記載内容が重要です。
私は統合失調症と診断されたので、障害年金を貰えますよね?と相談されることがありますが、病名のみで受給できる訳ではないのです。

統合失調症で障害年金を受給するために大切なポイントです。
- 初診日の特定(特に病歴が長くなりがち)
- 陽性症状と陰性症状が、日常生活能力の判定欄と程度欄にどの程度影響があるか、診断書に整合性が取れて記載されている。
- 病歴・就労等申立書と診断書に整合性がある。
受給資格を得るために以下の3つが大切になります。
初診日と保険料納付要件はそれぞれご確認下さい。
具体的に審査はどのような基準なのかを解説します。
※以下、日本年金機構に掲載されている認定基準をもとにわかりやすく加筆修正。
精神疾患の認定基準
まず、精神疾患全体の認定基準となります。
精神疾患で障害年金をもらうために大切なことは、どのような状態であれば精神疾患で障害年金の認定基準に該当するのかです。
統合失調症の認定基準
大切なことは統合失調症という病名ではなく、障害年金の認定基準に該当するかどうかを十分に理解することです。
(1)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおり。
等級 | 障害の状態 |
1 級 | 高度の残遺状態又は病状があるため高度の人格変化、思考障害その他もう想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の介護が必要なもの。 |
2級 | 残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他もう想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの。 |
3級 | 残遺状態又は病状があり人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他もう想・幻覚等に異常体験があり、労働が制限を受けるもの。 |
(2)統合失調症の認定にあたっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。
※統合失調症は予後不良の場合もあり、国年令別表・厚年令別表第1に定める障害の状態に該当すると認められるものが多い。
しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもある。
したがって、統合失調症として障害年金の認定を行うものに対しては、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。
(3)統合失調症の日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない。
その他以下の療養状況を考慮
- 仕事の種類
- 内容
- 就労状況
- 仕事場で受けている援助の内容
- 他の従業員との意思疎通の状況等を十分考慮
- 日常生活能力を判断

仕事をしていても状態により対象になると記載されています。
(4)人格障害は、原則として統合失調症の障害年金認定の対象とならない。
(5)神経症にあっては、その症状が長期間持続し一見重症なものであっても、原則として障害年金認定の対象とならない。
ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。
詳しくは、神経症で障害年金の申請はできるのか?に記載しています。
障害年金の中でも相談が非常に多いのが精神疾患です。主に精神病と神経症があります。神経症は障害年金の対象となるのでしょうか。専門の社労士が解説。
日常の生活能力について
最初に記載したように、診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の記載内容が重要です。
軽快したり増悪したりするものです。
また、人によって症状も様々です。
認定は、入院の有無や経過ももちろん重要な要素ですが、やはり日常生活能力によるところが大きいです。

お医者さんに、日常生活の状態をよく伝え理解してもらい、適切な診断書を作成していただくことが必要です。
〇幻聴や妄想
統合失調症で障害年金を受給できる場合の代表的な症状としては、幻聴や妄想があります。
では、受給の必須条件かというと、そんなことはありません。
初期の頃は、幻聴や妄想は出ていたが今は殆どみられず、暴言や破壊行為を繰り返している。又は陰性症状で、無気力・無表情で何事にも鈍磨になっている。
これらの症状も審査では評価されますので障害年金の申請はできます。
〇病職がないとき
統合失調症の方は病識がない場合も多く、基本的に日常がその状態のため慣れが生じてしまうのです。
自己判断で受診を中断されているケースも多いので、認定日当時の診断書が取れず、やむを得ず事後重症請求になることもあります。
またカルテがなかったり医院が廃業したりと、統合失調症の障害年金申請は病状が長くなると初診の証明が困難を極めることもあります。
統合失調症は初診日が特定できない場合が多く、不支給となることも(かなり多く)ありますので、申請の準備は慎重にしましょう。
このあたりは複雑になってくるので、無料相談で行っています。ぜひご利用ださい。
等級判定ガイドライン
統合失調症の障害年金審査にガイドラインがございます。
統合失調症の障害年金審査における地域格差をなくすためのものであり下にまとめました。
精神疾患での、障害年金の審査が等級判定ガイドラインにより大きく変わりました。専門の女性社労士が解説。
薬で治まっている状態
ある質問を頂きました。
Q.家族が、数年前に統合失調症と診断され、現在も心療内科に通院しています。
現在、薬で被害妄想などはなんとか治まっていますが、働くことはおろか、無気力状態で家の中の家事等は一切できない状態です。
このような状態で障害年金の対象になるでしょうか。
A.お仕事ができる状態ではなく、日常生活にもかなりの支障が出てらっしゃるようですので、たとえ薬で一部の傷病が治まっているにしても対象になると思われます。

勿論、初診日や納付の要件を満たしていることが前提となります。
働いている場合の審査
仕事をして働いていたり収入がある場合も審査判断はわかれます。
フルタイムに近いほど、やはり審査は難しい傾向があります。
仕事をしていると日常の生活能力があると見られやすいですし、障害の状態も軽いと判断されやすくなります(特にフルタイムに近いほど)
仕事や収入があると精神疾患で障害年金の申請はできないのかに詳しくまとめました。
よくご質問を頂くのが、精神疾患で仕事をしていたり、収入があったりしても障害年金の対象になるのか?ということです。障害年金の認定基準は、日常生活に著しい制限があるのか?労働(仕事)の制限はあるのか?により判断されます。
統合失調症の障害年金申請はいろいろと複雑な点もあり、女性社労士が初回無料相談で受給判定や申請サポートをしています。
精神の障害による障害の程度は、次により認定する。
「統合失調症」とは
障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法