「がんで障害年金を受給した例を知りたい。」
「今から障害年金を申請するが、もらえる金額や認定基準を知りたい。」
そのようなご相談に向けて解説致します。
はじめまして。
社会保険労務士の但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、12年以上(累計約3,500件)「がんなど障害年金申請のサポート」に携わってまいりました。
がんで障害年金を受給するため重要なのは、障害の程度(重さ)となります。
結論から申しますと、がんで人工肛門になった場合など固定した症状がある場合は別として、障害年金を受給するのは(特に初期段階では)かなり困難です。
何故がんで障害年金は難しいのか
(病気の特性として)初期の段階では、お仕事や日常生活を通常に送られている場合が多いからです(勿論ご本人は大変ですが)。
実際、ステージ4の段階で審査請求まで行っても、認められなかった例もございます。
しかし、受給できる状態であきらめる必要はございません。

具体的にどうすれば、がんで障害年金を受給できるのでしょうか?以下の順でお話します。
- 受給事例
- もらえる金額
- 認定基準
がんの障害年金受給例
胃、上咽頭、肝臓、直腸がんなどいろいろな事例があります。ぜひ参考下さい。
胃がんで障害厚生年金3級
認定 | 障害厚生年金3級 認定日請求 |
相談者 | 50代 男性 千葉県船橋市 |
傷病 | 胃全摘術後(胃がん) |
受給額 | 約90万円 |
がんで胃全摘出後の後遺症に悩まされ、障害厚生年金3級を受給されました。
5年程前から健康診断で、毎回胃の内視鏡検査をされていたとのこと。
3年前にピロリ菌が陽性となり駆除を実施。
そのあと、2年前の内視鏡検査で胃がんと診断。
自覚症状は全くなかったそうですが、毎年の健康診断で発見されたかたちです。
ピロリ菌除菌をしても、やはり一定数はがんになられる方もいらっしゃいます。
すぐに胃の全摘手術を受け、翌月に仕事復帰。
経過は順調でしたが、食後に強いダンピング症状が出現しました。
ダンピング症候群は、胃切除後摂取した食物が急速に小腸に流入するために起こります。
- 食事の量は増えず手術前64kgだった体重は50kg
- ダンピング症状
- 発汗
- めまい
- 頭痛
会社でも集中力が持続せず、仕事をはじめて一時間程経つと何も考えられない状態。
改善がみられない為欠勤が多く、現在時短勤務・シフト勤務を会社と相談中。
その分お給料にも影響してきます。
ご相談頂いたのが認定日(初診から1年6月経過日)頃。
初診の病院に今も通院されていますので、すぐに診断書を依頼し障害厚生年金を請求。
ろ43日という短期間で厚生年金3級に認定。
がんそのもののだけでなく、手術後の後遺症も障害年金の対象になります。

ご相談ください。
肝硬変・肝がんで障害厚生年金2級(遡及請求1.5年)
認定 | 障害厚生年金2級 遡及請求1.5年 |
相談者 | 50代男性 千葉県浦安市 |
傷病 | 肝硬変・肝がん |
受給額 | 約230万円 遡及金額約300万円 |
がんの初診日は2年半前。
在職中ですが肝臓がんによって、就労および日常生活がかなり困難に。
通勤退勤は、奥様が車で送り迎え。
体調不良時の早退欠勤も多く、自宅では殆ど横になっているとのこと。
障害認定日(初診日から1年6か月経過時)と現在の診断書を取得し、障害厚生年金の遡及請求。
がんは就労状況も重視されます。現状をしっかりと病歴・就労状況等申立書に記載。
無事、障害認定日で2級(遡及請求1.5年)に認定。

1一番いい結果となり本当によかったです。
受給事例集
件数が多くなってきたため、受給例をまとめました。
がんで障害年金の金額はいくら
がんで障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
等級ごとの金額や加算される手当を解説していきます。
がんの障害基礎年金額
がんで障害年金が認定された後もらえる金額は、障害基礎年金か障害厚生年金かで異なります。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
もちろん全員が該当するわけではないのですが、まだ障害年金を請求していないとき、最大5年分遡ることができるのです。これを遡及請求(そきゅうせいきゅう)といいます。
障害等級 | 金額 |
障害基礎年金
1級 |
993,750円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
795,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。

一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 228,700円 |
3人目以降 | 1人につき 76,200円 |
がんの障害厚生年金額
がんで障害年金1級、2級に認定された場合、障害基礎年金に厚生年金が加算されます。
3級は厚生年金しかありません。
障害厚生年金の金額は、給与や厚生年金を納めていた期間(年齢)に比例するため、人により金額はまったく違います(給与30万円と45万円で1.5倍違います)。
障害基礎年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害基礎年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
596,300円/年
金額は一律 |
配偶者加給年金
がんで1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるとき、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
228,700円 |
年金生活者支援給付金
がんの障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
障害年金を受給した際「年金生活者支援給付金」が加算して支給されるようになりました。
年金生活者支援給付金は基礎年金も厚生年金も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
1級 | 月6,425円 |
2級 | 月5,140円 |
以上、もらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。
障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。
障害年金の受給が無事決まった後、金額はいくらもらえるのでしょうか?
受給資格
※日本年金機構の悪性新生物(がん)認定基準をわかりやすく加筆・修正。
続いて癌の障害年金認定基準です。
初診日と保険料納付
受給資格を得るために以下の3つが大切になります。
- 初診日
- 保険料納付要件
- (認定基準)
初診日と保険料納付要件まとめ。
障害年金をもらうために大切な3つの要件(初診日・保険料納付・認定基準)
認定基準
受給資格を得るために大切なことは、がんの障害年金認定基準に該当するかどうかを十分に理解することです。
がんの障害認定日は原則通り、初診から1年6か月経ったところです。
がんによる年金の審査基準は、悪性新生物そのものによって生じるものだけではなく、治療の副作用によって生じる障害も対象になります。

少し難しいのですが、以下がんの障害認定基準です。
悪性新生物(がん)による障害の程度
- 組織所見とその悪性度
- 一般検査及び特殊検査
- 画像検査等の検査成績
- 転移の有無
- 病状の経過と治療効果等
- 以上を参考にして、具体的な日常生活状況等により総合的に判断。
- がんの認定の時期以後少なくとも、1年以上の療養を必要とするもの。
程度 | がんの状態 |
1級 | 長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 日常生活が著しい制限を受けるか又は著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 労働が制限を受けるか又は制限を加えることを必要とする程度のものに該当する程度のもの |
(1)悪性新生物(以下、がんと記載)は、全身のほとんどの臓器に発生するため、現れる病状は様々でありそれによる障害も様々。
(2)がんの検査には、一般検査の他に組織診断検査、腫瘍マーカー、超音波、x線CT、MRI、血管造影、内視鏡等があります。
(3)がんによる障害年金は次のように区分。
- がんそのもの(原発巣、転移巣を含む。)によって生じる局所の障害
- がんそのもの(原発巣、転移巣を含む。)による全身の衰弱又は機能の障害
- がんに対する治療の効果として起こる全身衰弱又は機能の障害
(4) がんによる障害年金の一般状態区分表
一般状態区分表
区分 | 一般状態 |
ア | がんが無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば軽い家事、事務など |
ウ | がんで歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | がんにより身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
(5) がんによる障害年金の程度は、基本的には認定基準に掲げられている障害の状態を考慮するものであるが、各等級に相当すると認められるものを一部例示する。
がんの障害年金該当状態例示
1 級 | がんによる著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの |
2 級 | がんによる衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 | がんによる著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
(6) がんそのものによるか又は治療の結果として起こる障害年金の程度は、認定要領により判断。
(7) がんによる障害の程度
最初に説明いたしました。
(8)がんが原発とされるものと組織上一いたするか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものと認められる。
がんの障害年金申請はいろいろと複雑な点もあり、女性社労士が初回無料相談で受給判定と申請サポートを行っています。
悪性新生物による障害 悪性新生物による障害の程度は、次により認定する。認定基準 悪性新生物による障害については、次のとおりである。
引用元:日本年金機構国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 悪性新生物による障害
がんと診断されてから必要なお金の一部は、公的医療保険などで負担が軽減できる場合があります。また、就業や収入の状況に合わせた支援制度も整備されています。
障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法