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がんで障害年金は難しいのか

がんで障害年金を申請するために大切なこと

「がんで障害年金を受給するのは難しいのか?」という質問をよくいただきます。

結論から申し上げますと、がんは他の疾患と比べて、受給が難しい傾向にあります。

なぜ「がん」は難しいのか?

がんの初期段階では、仕事や日常生活を通常通りに送ることができる方が多く、そのため障害年金の対象となりにくいためです。

但田社労士より

これはがんの特性によるものであり、がん患者の方々が、限界まで頑張られた結果、逆に受給が難しいケースも多いのです。

がんで障害年金を受給するためには「障害の程度」が重要な要素です。

たとえば、がんによって人工肛門の設置が必要となった場合など、固定的な症状があるケースでは、受給の可能性が高まります。

しかし、特にがんの初期段階では、障害の程度が低くなり、審査を通過するのは、非常に困難な場合が多くあります。

ステージ4の段階で審査請求まで進めたにもかかわらず、残念ながら受給が認められなかったケースもございました。

しかし、あきらめる必要はありません。

受給可能な状態に該当する場合もありますので、まずは正確な情報を得て伝えることが大切です。

※おおむねの等級の目安はがんによる一般状態区分表に記載しております。

解説

では、具体的にどうすれば、がんで障害年金を受給できるのでしょうか?

以下の点について順に解説していきます。

  • 受給事例
  • もらえる金額
  • 認定基準

がんの障害年金受給例

がんで障害年金の受給例を紹介します

実際に「胃、上咽頭、肝臓、直腸がん」でご相談頂き、無事受給できた例をご紹介致します。

いろいろなケースがございますので、ご参考ください。

胃がんで障害厚生年金3級~90万円

認定 障害厚生年金3級 障害認定日請求
相談者 50代 男性 千葉県船橋市
傷病 胃全摘術後(胃がん)
金額 約90万円

障害認定日による請求

がんによる胃の全摘出後、後遺症に悩まされながらも、障害厚生年金3級を受給された方のケースをご紹介します。

5年ほど前から毎年健康診断で胃の内視鏡検査を受けており、3年前にピロリ菌が陽性と判明し、駆除を実施しました。

その後、2年前の内視鏡検査で胃がんが発見されました。

自覚症状は全くなかったものの、毎年の健康診断が早期発見に繋がったのです。

ピロリ菌の除菌後でも、一定数の方ががんを発症する可能性があります。

この方もその一例で、すぐに胃の全摘手術を受けた後、翌月には仕事に復帰されました。

経過は順調だったものの、食後に強いダンピング症状が出現しました。

ダンピング症候群は、胃切除後に摂取した食物が急速に小腸に流入することで引き起こされます。

手術の後遺症も障害年金対象に

この症状により、体重は手術前の64kgから50kgに減少。

といった症状が現れ、仕事においても集中力が持続せず、一時間ほど働くと何も考えられない状態に陥ることがありました。

改善が見られないため、欠勤が増え、現在は時短勤務やシフト勤務について会社と相談中です。

その結果、収入にも影響が出てきています。

ご相談いただいたのは、認定日(初診から1年6ヶ月経過日)頃で、初診時の病院に今も通院されていたため、すぐに診断書を依頼し障害厚生年金を請求しました。

その結果、わずか43日という短期間で厚生年金3級に認定されました。

社労士より

このケースは、がんそのものだけでなく、手術後の後遺症も障害年金の対象となることを示しています。

肝硬変・肝がんで障害厚生年金2級(遡及請求1.5年)~300万円

認定 障害厚生年金2級 遡及請求1.5年
相談者 50代男性 千葉県浦安市
傷病 肝硬変・肝がん
金額 約230万円 遡及金額約300万円

遡及請求

肝臓がんにより、就労や日常生活が困難になった方の事例をご紹介します。

ご相談者は2年半前に肝臓がんと診断され、現在も在職中ですが、通勤や退勤は奥様の車での送り迎えが必要です。

さらに、体調不良による早退や欠勤が頻繁で、自宅ではほとんど横になって過ごされています。

障害認定日(初診日から1年6ヶ月経過時)と現在の診断書を取得し、障害厚生年金の遡及請求を行いました。

就労状況が重要な要素

がんによる障害年金の審査では、就労状況が重要な要素となるため、現状を詳細に病歴・就労状況等申立書に記載しました。

その結果、無事に障害認定日で2級(遡及請求1.5年)に認定されました。

社労士

一番いい結果となり、本当によかったです。

受給事例集

受給事例が増えてきましたので、以下にまとめました。

それぞれ異なる疾患や状況に対応しており、障害年金を受給するための参考として役立てていただければ幸いです。

胃・上咽頭・直腸がんの受給例

悪性リンパ種で障害厚生年金2級

がんで障害年金の金額はいくら

がんで障害年金 金額はいくらもらえる

がんで障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?

実際、受給が決まっても「いくらもらえるのか」がご心配だと思います。

そこで、がんで受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。

障害年金には、「基礎」と「厚生」の2つがあります。

  1. 基礎::1級と2級
  2. 厚生::1級、2級、3級

このように、基礎と厚生が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。

もらえる金額もこれに伴って説明していきます。

また、受給した後、国民年金保険料が免除になる制度がありますので、ご検討下さい。

障害年金の額

がんの障害基礎年金額

がんで、障害基礎年金の1級又は2級に認定されたときの金額を解説していきます。

障害基礎年金の等級 金額
1級 1,020,000円/年
+子の加算
2級 816,000円/年
+子の加算

受給権を得た後、翌月分から支給されます。

この金額を6等分して偶数月に受け取ることになります。

初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。

※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。

子の加算

18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。

社労士より

一般的には高校卒業までということです

子の人数 金額
1人目/2人目 1人につき 234,800円
3人目以降 1人につき 78,300円

年金手帳と通帳

がんの障害厚生年金額

がんで、障害厚生年金1級又は2級に認定された場合、基礎に厚生が加算されます。

3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。

金額は、給与や勤めていた期間(年齢)に比例するため、人によりまったく違います。

例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。

障害厚生年金 金額
1級 報酬比例額加算×1.25
+ 配偶者加給年金
2級 報酬比例額加算×1.0
+ 配偶者加給年金
3級 612,000円/年 金額は一律

配偶者加給年金

がんで1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。

よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。

但田社労士より

その場合、配偶者である夫についても加給年金※が支給されます。

※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。

障害等級 金額
1級・2級
(3級はなし)
234,800円

年金手帳

年金生活者支援給付金

がんの障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。

年金生活者支援給付金は、基礎も厚生も変わらず2級以上であれば支給されます。

金額は毎年変動します。

等級 金額
1級 月6,638円
2級 月5,310円

以上、がんでもらえる金額の詳細は下記にまとめました。

障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。

受給資格

がんの受給資格

がんで障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。

  1. 初診日~いつお医者さんに行ったか
  2. 保険料納付要件~保険料は納めていたか
  3. 認定基準~基準にあたっているか

初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日に「悪性新生物による障害の認定基準に該当」すれば、受給できます。

障害認定日は初診日から1年6か月経過したところになります。

がんの認定基準

がんで障害年金 認定基準とは

続いて「がん」の認定基準です。

がんにより障害年金を受給するためには、まず「がんの障害年金認定基準」に該当するかどうかを十分に理解することが大切です。

〇がんの障害認定日は、原則として初診日から1年6か月経過した時点に設定されます。

〇審査基準は、がんそのものによって生じる障害だけでなく、治療の副作用によって生じる障害も対象となります。

解説

少し難しいのですが、以下がんの障害認定基準です。

悪性新生物(がん)による障害の程度

  1. 組織所見とその悪性度
  2. 一般検査及び特殊検査
  3. 画像検査等の検査成績
  4. 転移の有無
  5. 病状の経過と治療効果等
  6. これらの要素を総合的に評価し、具体的な日常生活状況を基に判断されます。
  7. 特に、がんの認定時期以降、少なくとも1年以上の療養を必要とするものとなります。
程度 がんの状態
1級 長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 日常生活が著しい制限を受けるか、又は著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 労働が制限を受けるか、又は制限を加えることを必要とする程度のものに該当する程度のもの

日本年機構 上野年金事務所

認定要領

障害年金の解説

悪性新生物(以下、がんと記載)は全身に発生する可能性があるため、病状や障害は人により様々です。

そのため、認定基準を補うために「認定要領」で、より詳細な等級判定の考え方が示されています。

がんの検査には、一般検査に加えて以下のような高度な検査が用いられます。

がんによる障害は次の3種類に区分。

  1. がんそのもの(原発巣、転移巣を含む。)によって生じる、局所の障害
  2. がんそのもの(原発巣、転移巣を含む。)による、全身の衰弱又は機能の障害
  3. がんに対する治療の効果として、起こる全身衰弱又は機能の障害

がんそのものによって生じる局所や機能障害だけでなく、治療(抗がん剤や放射線治療の副作用)として引き起こされる全身の衰弱や障害も、障害年金の対象となります。

がんによる一般状態区分表

がんによる障害が、どの程度生活に影響を及ぼしているかが、障害等級判定の重要なポイントです。

認定要領では、医学的な所見を参考にしつつも「日常生活の認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する」と明記されています。

認定要領の一般状態区分表には、日常生活への影響度が5段階に区分され例示されていますが、右の数字が等級の目安となります。

区分 一般状態 等級の目安
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば軽い家事、事務など

→がんによる著しい全身倦怠

3級
がんで歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

→がんによる衰弱又は障害

2級または3級
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

→がんによる衰弱又は障害

2級
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

→がんによる著しい衰弱又は障害のため

1級

がんが原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものと認められる。

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