「ストーマ(人工肛門・人工膀胱)で障害年金を申請したいが、もらえる金額はいくら?」
「ストーマによる障害年金の受給例や、認定基準について知りたい。」
このような疑問に、わかりやすくお答えします。
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、13年以上にわたり累計約3,600件の「ストーマなど障害年金の無料相談から申請サポート」に携わってまいりました。
ストーマ(人工肛門・人工膀胱)、尿路変更等で障害年金の申請を忘れていませんか?
具体的に、どうすればストーマ、尿路変更等で障害年金を受給できるのでしょうか?
以下の順でお話します。
- もらえる金額
- 受給事例
- 受給資格
- 認定基準
ストーマで障害年金の金額はいくら
ストーマで障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
実際、受給が決まっても「いくらもらえるのか」がご心配だと思います。
そこで、ストーマで受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。
- 基礎::1級と2級
- 厚生::1級、2級、3級
このように、基礎と厚生が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。
もらえる金額もこれに伴って説明していきます。
ストーマの障害基礎年金額
ストーマで、障害基礎年金の1級又は2級に認定されたときの金額を解説していきます。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
障害等級 | 金額 |
障害厚生年金
1級 |
1,020,000円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
816,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ることになります。
初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。
一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 234,800円 |
3人目以降 | 1人につき 78,300円 |
ストーマの障害厚生年金額
ストーマで、障害厚生年金1級又は2級に認定された場合、障害基礎年金に加えて厚生年金が加算されます。
3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。
障害厚生年金の金額は、給与や勤めていた期間(年齢)に比例するため、人によりまったく違います。
例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。
障害厚生年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
612,000円/年
金額は一律 |
配偶者加給年金
ストーマで1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。
その場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
234,800円 |
年金生活者支援給付金
ストーマの障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
年金生活者支援給付金は基礎も厚生も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
1級 | 月6,638円 |
2級 | 月5,310円 |
以上、ストーマでもらえる金額の詳細は下記にまとめました。
障害年金のもらえる金額はいくらなのか?に概要をまとめました。
ストーマの障害年金受給例
ストーマで実際に受給した例は参考になると思います。
いろいろなケースがございますが、どのような症状で受給できたのか。ざっとご参考ください
大腸癌で人工肛門。障害厚生年金3級-60万円
認定 | 障害厚生年金3級 障害認定日請求 |
相談者 | 40代男性 東京都世田谷区 |
傷病 | 大腸癌(人工肛門装着) |
金額 | 約60万円 |
大腸癌手術後に人工肛門装着をされました。
初診は厚生年金加入中で、潰瘍性大腸炎のためでした。
大腸ガン発病は国民年金加入中で、初診から十数年後のことです。
今回、無事厚生年金で認められました。
現在も元気にお仕事されています。
潰瘍性大腸炎の初診日とストーマ装着との因果関係が証明できないと、障害厚生年金は否定され障害基礎年金になることもありえます。
初診日とストーマ装着との因果関係など考えさせられる事例でした。
人工透析なども同じなのですが、発病してから長い時間が経ち、それから障害年金の認定基準にあたることがあるからです。
ストーマ(人工肛門)を設置された場合、厚生年金3級に認定される可能性があります。
しかし、初診との関係など複雑な点もあります。
潰瘍性大腸炎で障害厚生年金3級(遡及請求5年)-400万円
認定 | 障害基礎年金2級 遡及請求5年 |
相談者 | 50代男性 茨城県潮来市 |
傷病 | 潰瘍性大腸炎(尿路変更) |
金額 | 約80万円 遡及金額400万円 |
潰瘍性大腸炎でストーマ(人工肛門)造設。
その後すぐに尿路変更。
無事、障害基礎年金2級認定。
時効分はありますが、5年遡及決定です。
実は、最初は他の社労士に頼んでいらしたようです。
しかし、なかなか事が進まず契約を解除された後、茨城県からご相談に来ていただき当事務所にご依頼頂きました。
東京駅まで高速バスでくると2時間かからないそうです。
東京駅にバスが付くということで、そのままご相談にきて頂きました。
当事務所は東京駅から徒歩でも15分くらいです。
お会いするのは、当初の一回だけであとはメールやお電話、FAX等ですすめていく形で大丈夫です。
年金証書が届いたとのこと。早いっ!びっくりしました。
受給資格
ストーマで障害年金を申請するために大切なことです。
受給資格を得るために以下の3つが大切になります。
初診日と保険料納付
ストーマで障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。
初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日にこの後述べる「ストーマの認定基準に該当」すれば、受給できます。
ストーマで障害年金を申請するために大切なことです。
「初診日の確定」と「ストーマ・尿路変更等になった原因・因果関係」を根拠をもって証明できるかどうか。
ストーマは障害認定日の特例あり
障害年金を請求できるのは、原則として「初診から1年6か月を経過した日」です。
しかし、人工肛門を造設し又は尿路変更術を施した場合、それらを行った日から起算して6月を経過した日です。
1年6か月待たなくても障害年金の請求が可能です。
※詳細はストーマの障害認定日の特例
認定基準
続いてストーマの認定基準です。
※以下、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第18節/その他の疾患による障害|日本年金機構をわかりやすく加筆・修正。
受給資格を得るために大切なことは、ストーマの障害年金認定基準に該当するかどうかを十分に理解することです。
障害
等級 |
障害の状態 |
---|---|
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 身体の機能に労働が制限を受けるか、又は制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
- 障害の程度は、次表の一般状態区分表のオに該当するものは1級に。
- 同表のエ又はウに該当するものは2級に。
- 同表のウ又はイに該当するものは3級におおむね相当するので、認定に当たっては参考とする。
区分 | 一般状態 |
---|---|
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの。例えば軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
ストーマの障害認定日の特例
障害認定日は、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)又は尿路変更術を施した日ですが、以下のように細かく規定されまました。
〇人工肛門を造設し又は尿路変更術を施した場合、それらを行った日から起算して6月を経過した日。
〇新膀胱を造設した場合はその日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く)とする。
6か月経過というのは、一時的は駄目という意味です。
なお、ストーマの障害程度を認定する時期は、例外もあります(初診日から起算して 1年6月を超える場合を除く)。
1.人工肛門を造設し、かつ新膀胱を造設した場合
人工肛門を造設した日から起算して6月を経過した日又は新 膀胱を造設した日のいずれか遅い日とする。
2.人工肛門を造設し、かつ尿路変更術を施した場合
それらを行った日のいずれか遅い日から起算して6月を経過した日とする。
3.人工肛門を造設し、かつ完全排尿障害状態にある場合
人工肛門を造設した日又は完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から起算して6月を経過した日とする。
障害年金の対象となるストーマとは
様々な病気や障害などが原因で、腹壁に造られた便や尿の排泄口のことをストーマ(人工肛門・人工膀胱)といいます。
また、手術を受けられた方をオストメイトと呼びます。
ストーマ(人工肛門・人工膀胱)は大きく分けて3種類ありますが、障害年金の対象となる可能性があります。
- 便が排泄される消化管ストーマであるコロストミー(小腸ストーマ)・イレオストミー(結腸ストーマ)
- 尿が排泄される尿路ストーマであるウロストミー
- 消化管ストーマと尿路ストーマの両方を造設するダブルストーマ
日本では約18万人がオストメイトであると推計されています。
ストーマ(人工肛門)は様々な病気の治療の一環として造られます。
直腸や肛門がん等の治療で肛門を切除してしまう場合につくられる人工肛門を、永久的人工肛門といいます。
治療のため一時的に行う人工肛門は、障害年金の対象とはなりません。
また、人工膀胱も回腸導管・尿管皮膚瘻・膀胱肉腫・膀胱腫瘍などの病気にかかった場合、治療の一環としてつくられます。
ストーマ(人工肛門・人工膀胱)の造設は、原則として障害厚生年金の3級に該当しますが、ほかに障害があると2級に該当する可能性も出てきます。
3級は障害厚生年金(共済年金)しかありませんので、初診日が国民年金の場合該当しません。
病気によって、人工肛門に加え以下のような新膀胱や尿路変更などの複数の手術を行う必要がありますので、その場合2級になる可能性もございます。
- 人工肛門を造設し、かつ新膀胱を造設したもの又は尿路変更術を施したもの
- 人工肛門を造設し、かつ完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にあるもの
なお、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)は全身状態・術後の経過及び予後・原疾患の性質・進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級の年金に認定するとあります。
クローン病での受給
ストーマとは少し違いますが、クローン病で障害年金が受給できるかどうか相談を頂きました。
Q:下痢、体重減、発熱で苦しみ病院をいくつか転々としましたが原因がわからず、大学病院の内科を紹介されてクローン病と診断されました。
約3か月の入院、投薬にて社会復帰できるようになりましたが、その後も大量下血等で入退院を繰り返し、現在に至っております(月一度、同病院にて通院加療中)。
このような状態で障害年金の受給はできますでしょうか?
さぞや、日常生活がお辛いと存じます。
クローン病は、症状が一度落ち着いても再発を繰り返しながら徐々に病気は進行していく場合が多くあります。
クローン病など難病の障害等級の認定に当たっては、日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に判定するとされています。
日常生活能力の判定とは上記で述べたようなものですので、ご参考下さい。
また、日常生活で困っていること、介助が必要ならその内容、働いている場合はどういう仕事をしているのかなど総合的に判断されます。
もちろん、最初にお医者さんにかかった初診日とそれ以前の年金の納付状況が、条件に合わなくてはなりません。
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