
「筋ジストロフィーで障害年金は難しいと聞くが、私はもらえるのか?」
「実際に受給した例を知りたい」
「もらえる金額はどのくらいだろう」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
筋ジストロフィーでも、適切に準備すれば障害年金を受給することは可能です。
実際に、年間60万円以上の受給ができた方が多く、さらに過去の遡及請求で160万円以上が認められたケースもあります。
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
経験15年以上。累計相談件数3,945件(令和7年9月末現在)。受給率97.8%です。
「筋ジストロフィーなど障害年金の無料相談から申請サポート」に携わってまいりました。
この記事では、受給のポイントや実際の事例、もらえる金額の目安を詳しく解説します。
申請を迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
筋ジストロフィーも障害年金の対象です
筋ジストロフィーで受給するのは難しいのでは?との声も多く寄せられています。
当初、筋ジストロフィーと診断されないケースも多くありますし、病院を転々としたり、初診日がかなり昔にあったりすることも多くあります。
具体的にどうすれば、障害年金を受給できるのでしょうか?以下の順でお話します。
- もらえる金額
- 受給事例
- 障害年金を受給できる条件
- 認定基準
筋ジストロフィーで障害年金の金額はいくら?(制度別)

筋ジストロフィーで障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
実際、受給が決まっても「いくらもらえるのか」がご心配だと思います。
そこで、筋ジストロフィーで受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。
- 基礎::1級と2級
- 厚生::1級、2級、3級
このように、基礎と厚生が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。
もらえる金額もこれに伴って説明していきます。
また、受給した後、国民年金保険料が免除になる制度がありますので、ご検討下さい。

筋ジストロフィーの障害基礎年金額と子の加算
筋ジストロフィーで、障害基礎年金の1級又は2級に認定されたときの金額を解説していきます。
| 障害等級 | 金額 |
| 1級 | 1,039,625円/年 +子の加算 |
| 2級 | 831,700円/年 +子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
1年の金額を6等分して、偶数月に受け取ることになります。
初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。

18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。
一般的には高校卒業までということです
| 子の人数 | 金額 |
| 1人目/2人目 | 1人につき 239,300円/年 |
| 3人目以降 | 1人につき 79,800円/年 |
筋ジストロフィー の障害厚生年金額と配偶者加給年金
筋ジストロフィーで、障害厚生年金1級又は2級に認定された場合、障害基礎年金に加えて厚生年金が加算されます。
3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。
障害厚生年金の金額は、給与や勤めていた期間(年齢)に比例するため、人によりまったく違います。
例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。
| 障害厚生年金 | 金額 |
| 1級 | 報酬比例額加算×1.25 + 配偶者加給年金 |
| 2級 | 報酬比例額加算×1.0 + 配偶者加給年金 |
| 3級 | 623,800円/年 金額は一律 |
報酬比例部分に300月みなしあり
報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます。
例えば、会社に入社後、それほどたたずしてうつ病になり障害年金の受給を開始した場合など。
最低25年は年金を納付したものとして、ある程度の額の厚生年金が受給できるようになっています。
また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金の計算の基礎とはされません。
年金制度自体は批判も多いのですが、なかなか手厚くなっています。
計算の基礎となるのは、障害認定日までに納付したものまでです。

筋ジストロフィーで1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。
その場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
| 障害等級 | 金額 |
| 1級・2級 (3級はなし) |
239,300円/年 |
年金生活者支援給付金
筋ジストロフィーの障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
年金生活者支援給付金は基礎も厚生も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
| 等級 | 金額 |
| 1級 | 6,813円/月 |
| 2級 | 5,450円/月 |
筋ジストロフィーの時効と遡及請求
残念ながら筋ジストロフィーでの請求には時効があります。
申請しなければ、過去のものは最大5年間で消滅してしまいます。
これを遡及請求といいます。
筋ジストロフィーで受け取れる年金額の目安
生涯を通じた給与とボーナスの平均(例:生涯をならした平均給与500万円)を基にした、おおよその受給額です。
あくまで目安としてご参考ください(令和7年度水準)。
| ケース | 年収モデル | 等級 | 年金の種類 | 受給額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 自営業・主婦など(国民年金のみ) | ― | 2級 | 障害基礎年金 | 831,700円/年(69,308円/月) | 定額、収入に関係なし |
| ② 自営業・主婦など | ― | 1級 | 障害基礎年金 | 1,039,625円/年(86,635円/月) | 2級の1.25倍 |
| ③ 会社員・平均年収300万円 | 300万円 | 3級 | 障害厚生年金 | 623,800円/年(51,983円/月) | 最低保障額(年収に関係なく) |
| ④ 会社員・平均年収300万円 | 300万円 | 2級 | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 約1,440,000〜1,560,000円/年(120,000〜130,000円/月) | 基礎年金+報酬比例約5〜6万円 |
| ⑤ 会社員・平均年収500万円 | 500万円 | 2級 | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 約1,920,000〜2,040,000円/年(160,000〜170,000円/月) | 基礎年金+報酬比例約10万円 |
| ⑥ 会社員・平均年収500万円 | 500万円 | 1級 | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 約2,400,000〜2,520,000円/年(200,000〜210,000円/月) | 2級の1.25倍 |
以上、筋ジストロフィーでもらえる金額の詳細は障害年金のもらえる金額はいくらなのか?にまとめました。
ベッカー型筋ジストロフィーでの受給例

実際に筋ジストロフィーで障害年金を受給した例をご紹介します。
いろいろなケースがございますので、ご参考ください。
| 認定 | 認定日 障害厚生年金3級
現在 障害厚生年金2級 遡及請求3.5年 |
| 相談者 | 30代男性 東京都江戸川区 |
| 傷病 | ベッカー型筋ジストロフィー |
| 金額 | 約120万円 遡及金額160万円 |

ベッカー型筋ジストロフィーで障害年金を受給された方の実例をご紹介します。
子供の頃から運動が苦手で、脚がつりやすいことがありましたが、具体的な筋ジストロフィーの症状は出ていませんでした。
日常生活に大きな問題もなく過ごされていましたが、約3年前から、走ると脚がもつれたり、膝が崩れて転倒したりといった症状が現れました。
その後、ベッカー型筋ジストロフィーと診断されました。
病気は徐々に進行し、現在は日常生活の動作にかなりの支障が出ています。
この方の初診日は厚生年金加入時期にあたるため、障害厚生年金の遡及請求を行いました。
提出された診断書は「肢体の診断書」です。
結果として、筋ジストロフィーの認定日時点では障害手当金相当(治っていないため、3級14号と認定)とされ、請求時点では厚生年金2級と認定されました。
認定とタイムラグについて
年金証書が届いた時点では、筋ジストロフィー請求時点の厚生年金2級はまだ決定されておらず、年金事務所で確認しても3級14号のままでした。
2週間ほど待って再確認したところ、筋ジストロフィーの厚生年金2級に決定されていました。
このように、認定日の証書が届いても、請求時の等級がすぐに反映されない場合があります。
この方も当初、厚生年金2級になるとは思っていなかったため、とても驚かれていました。
いい結果で本当によかったです。以上のように、障害年金の認定には時間がかかることがあり、タイムラグが生じることもあるため、注意が必要です。
障害年金を受給できる条件

筋ジストロフィーで障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。
初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日に「人工関節の認定基準に該当」すれば、受給できます。
認定基準

大切なことは障害の状態が「筋ジストロフィーの障害年金認定基準」に該当するかどうかを十分に理解することです。
以下、国民年金・厚生年金保険肢体の機能障害認定基準をわかりやすく加筆修正。
ここでは、筋ジストロフィーの肢体機能の認定基準を示します(一部抜粋掲載)。
| 等 級 | 筋ジストロフィーの状態 |
| 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
| 2級 | 1級と同じ状態であり、日常生活が著しい制限を受けるか、制限を加えることを必要とする程度のもの |
| 3級 | 身体の機能に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
(注)筋ジストロフィーの状態が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領による。
なお、筋ジストロフィーが上肢及び下肢の広範囲にわたり、上肢と下肢の状態が相違する場合、重い方の肢で判断し認定。
筋ジストロフィーで認定を得るために大切なこと

筋ジストロフィーで障害年金の認定(受給決定)を得るうえで最も重要なのは、進行性の病態を正確に伝え、障害等級の認定基準に該当していることを医学的・生活面の両方から証明することです。
以下の3つが特に重要なポイントになります。
1. 診断書作成で必ず押さえるべき3点
医師に診断書を作成いただく際、以下の点が等級判定に大きく影響します。
1.進行性の明記
疾患が進行性であり、現在の病態がどの段階にあるかを明確に記載してもらう。
2.具体的な筋力評価
徒手筋力テスト(MMT)など、筋力低下の程度や関節可動域(ROM)の制限を数値で記録。
3.肢体機能障害の具体化
上肢・下肢それぞれの動きに生じている支障を、日常生活動作(ADL)欄に過不足なく反映。
2. 申立書(ご本人の声)で説得力を高める
審査官に生活上の困難さを正確に伝えるため、申立書では次を具体的に書きます。
1.動作の困難さ
例:「階段を自力で上がれない」「しゃがむと立ち上がれない」「歩行に杖・装具が必要」など。
2.仕事における配慮
業務内容の軽減、座り作業への限定、休憩回数の増加など、受けている配慮を具体的に記述。
3.症状の進行過程
初診時から現在まで、生活機能がどのように低下していったのかを、時系列で説明する。
3. 重複障害の有無も確認する
筋ジストロフィーでは、進行に伴い、呼吸機能低下・心機能障害・嚥下障害が生じる場合があります。
これらの障害がある場合は、該当する診断書も合わせて提出することで、より上位の障害等級につながる可能性があります。
もっとも重要なのは、診断書・申立書・検査結果など、すべての書類間で情報の矛盾がないこと。
「進行性の病態」と「日常生活上の困難さ」が一貫して伝わると、認定の可能性が大きく高まります。
令和7年4月分からの年金額等について
引用元: 日本年金機構:令和7年4月分(6月13日(金曜)支払分)からの年金額。法律の規定により、令和6年度から原則1.9%の引き上げとなります。
肢体の機能の障害 認定基準 肢体の機能の障害については、次のとおりである。
引用元:日本年金機構国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第7節 肢体の障害 第4 肢体の機能の障害






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