この記事の目次

うつ病で障害年金は難しいのか

うつ病で障害年金を申請するために大切なこと

テレビや新聞でも話題になっているように、うつ病による障害年金の申請に関する相談が急増しています。

厚生労働白書としても「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」と題し、初めて、こころの健康について論じています。

しかし、多くの方から「うつ病での受給は難しいのでは?」という声も寄せられています。

確かに、うつ病などの精神疾患は、肢体(体)などの障害年金に比べ難しい場合が多くあります。

但田社労士より

理由は、病状を数値で明確に表すことができないからです。

重要なのは「うつ病」という病名ではなく、病状が障害年金の認定基準に該当するかどうかを正確に伝えることです。

以下の2点が特に大切です。

  1. 実際の障害状態と医師の診断書との整合性
  2. 診断書と病歴・就労等申立書の整合性

これらのポイントを押さえて、スムーズに申請を進めましょう。

解説

以下の項目で、受給に関する詳細を解説いたします。

  1. 受給例
  2. 金額はいくらもらえるのか
  3. 認定基準

うつ病の障害年金受給例

東京の受給例を紹介します実際に「うつ病」でご相談頂き、無事受給できた例をご紹介致します。

いろいろなケースがございますので、ご参考ください。

再請求での認定基礎2級-80万円

認定 障害基礎年金2級 事後重症請求
相談者 50代男性 東京都江戸川区
傷病 うつ病
金額 約80万円

事後重症による請求

奥さまからの相談依頼でした。

ご自身で遡及請求を行った結果、「障害認定日(初診日から1年半経った時点)」も「現在の状態」も不支給となりました。

ご提出された書類を持参いただき、審査請求についてのご相談をお受けしました。

診断書の「日常生活能力の判定」および「日常生活能力の程度」は、十分に障害基礎年金2級に該当する状態でした。

しかし、コメント欄が「就労の状況についての記載」に終始していました。

さらに、診断書にはご自身の実際の状況ではなく、本人が、あたかもうつ病でも仕事内容が順調であるかのように話されたことが記載されていました。

審査途中でカルテの提出を求められたそうで、就労の状況が不支給の判断のもとになったと推測されます。

診断書の重要性と再請求の提案

解説

提出した診断書の重要性は絶大です。

当たり前ですが、後から取り消すことはできません。

審査請求を行いつつ、新しい再請求(事後重症請求)を時期を見て行うことをご提案いたしました。

つまり、両建てで挑む形になります。

審査請求は残念ながら認められませんでしたが、再請求では無事に2級の認定を受けることができ(期間は約4か月)、奥様にも喜んでいただけました。

社労士

一度ダメだったとしても、もう一度行う再請求という道もあります。

遡及請求5年厚生2級-930万円

認定 障害厚生年金2級 遡及請求5年
相談者 女性 東京都品川区
傷病 うつ病
金額 約170万円 遡及請求約930万円

遡及請求

厚生年金に加入されている時期にうつ病の初診日がありました。

初診日は約6年前で、発症後は休職を経て現在は退職されています。

初診日は大阪でしたが、受診状況等申立書は問題なく取得できました。

認定日頃は現在のクリニックで受診されていたため、その時と現在の2枚の診断書を提出し申請しました。

配偶者の関係証明の重要性と手続き

今回、パートナー様との関係証明に時間を費やされました。

長く入籍されていないことや、認定日頃に住民票が別だった時期があったためです。

追加書類を求められ、当時の結婚式の証明書や請求書まで提出することになりました。

こういった場合、役所が事情を考慮してくれないこともあります。

個別対応が難しいため、仕方ない面もあります。

その分、私たち社会保険労務士の出番です。

申請から決定までの期間は243日(約8か月)かかりました。

審査には照会が入ったため時間がかかりましたが、無事に障害厚生年金2級の受給が認められ、遡及も5年認められました。

社労士より

配偶者の加給年金も無事認定。一番いい結果となりました。

受給事例集

受給事例が増えてきましたので、以下にまとめました。

それぞれ異なる疾患や状況に対応しており、障害年金を受給するための参考として役立てていただければ幸いです。

東京 江戸川区 江東区
神奈川 埼玉 千葉

受給されたお客様の声

但田社労士より解説

うつ病などで受給された「お客様の声」を掲載しております(傷病別掲載)。

また、Googleマイビジネスのクチコミにも多く感想の声を頂いております!ありがとうございます。

お客様の声

うつ病で障害年金の金額はいくら?

うつ病で障害年金。金額はいくらもらえる?

うつ病で障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?

実際、受給が決まっても「いくらもらえるのか」がご心配だと思います。

そこで、うつ病で受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。

障害年金には、「基礎」と「厚生」の2つがあります。

  1. 基礎::1級と2級
  2. 厚生::1級、2級、3級

このように、基礎と厚生が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。

もらえる金額もこれに伴って説明していきます。

また、受給した後、国民年金保険料が免除になる制度がありますので、ご検討下さい。

障害年金の額

うつ病の障害基礎年金額

うつ病で、障害基礎年金の1級又は2級に認定されたときの金額を解説していきます。

障害基礎年金の等級 金額
1級 1,020,000円/年
+子の加算
2級 816,000円/年
+子の加算

受給権を得た後、翌月分から支給されます。

この金額を6等分して偶数月に受け取ることになります。

初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。

※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。

子の加算

18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。

社労士より

一般的には高校卒業までということです

子の人数 金額
1人目/2人目 1人につき 234,800円
3人目以降 1人につき 78,300円

年金の相談

うつ病の障害厚生年金額

うつ病で、障害厚生年金1級又は2級に認定された場合、基礎年金に厚生年金が加算されます。

3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。

金額は、給与や勤めていた期間(年齢)に比例するため、人によりまったく違います。

例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。

障害厚生年金 金額
1級 報酬比例額加算×1.25
+ 配偶者加給年金
2級 報酬比例額加算×1.0
+ 配偶者加給年金
3級 612,000円/年 金額は一律

報酬比例部分に300月みなしあり

報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます。

例えば、会社に入社後、それほどたたずしてうつ病になり障害年金の受給を開始した場合など。

最低25年は年金を納付したものとして、ある程度の額の厚生年金が受給できるようになっています。

また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金の計算の基礎とはされません。

但田社労士より解説

年金制度自体は批判も多いのですが、なかなか手厚くなっています。

計算の基礎となるのは、障害認定日までに納付したものまでです。

配偶者加給年金

うつ病で、1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。

よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。

但田社労士より

その場合、配偶者である夫についても加給年金※が支給されます。

※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。

障害等級 金額
1級・2級
(3級はなし)
234,800円

年金手帳

年金生活者支援給付金

うつ病の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。

年金生活者支援給付金は、基礎も厚生も変わらず2級以上であれば支給されます。

金額は毎年変動します。

等級 金額
1級 月6,638円
2級 月5,310円

うつ病の時効と遡及請求

残念ながらうつ病での請求には時効があります。

申請しなければ、過去のものは最大5年間で消滅してしまいます。

もし遡って請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。

これを遡及請求といいます。

うつ病でもらえる金額の詳細は下記にまとめました。

うつ病の障害年金でもらえる金額はいくら?に概要をまとめました。

受給資格

うつ病の受給資格

うつ病で障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。

  1. 初診日~いつお医者さんに行ったか
  2. 保険料納付要件~保険料は納めていたか
  3. 認定基準

初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日に「うつ病の認定基準に該当」すれば、障害年金の受給ができます。

障害認定日は初診日から1年6か月経過したところになります。

精神疾患の障害年金認定基準

精神疾患で障害年金 認定基準

まず、精神疾患全体の認定基準は共通のため、以下参照下さい。

精神疾患全体の基準は、等級について次のように規定しています。

障害の程度 障害の状態
1級 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできない又は行えない程度

2級 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

家庭内の軽食・最低限の洗濯等はできるが、それ以上の活動はできない程度

3級 精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

〇精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

労働することはできるが、健常者と同等に労働することはできない程度

実際、この表を見てもいまいちピンとこないと思いますが、以下の文章が重要になります。

精神の疾患の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとする。

精神疾患は、多種であり、かつその症状は同一原因であっても多様である。

したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する。

但田社労士より

この内容が精神疾患の障害年金を請求する場合特有のもので、病歴や仕事、日常生活の状況により審査されるということになります。

うつ病がどの程度重いのか、うまくお医者さんとコミュニケーションが取れていないことも多く、診断書の内容が症状にあっていない場合が多くあります。

うつ病で障害年金が難しい大きな理由です。

解説

病歴、治療の経過、仕事や日常生活の状況などを主治医にうまく伝えることが大事です。

日常生活の用が不能 → 著しい制限 →労働に著しい制限という感覚がわかりますでしょうか。

うつ病の障害年金認定要領

うつ病で障害年金 認定基準とは?

続いて、うつ病の認定要領になります。

ちなみに、うつ病は審査上「気分(感情)障害」という名称で分類されています。

社労士より

気分の問題でもないと思うのですが、文句を言ってもはじまりません。

認定基準は上から、常時援助 → 著しい制限 → 労働制限となっていきます。

(1)うつ病で各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。

等級 状 態
1 級 高度の気分、意欲・行動及び高度の思考障害の病相期があり、かつこれが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
2級 気分、意欲・行動及び思考障害の病相期があり、かつこれが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限をうけるもの
3級 気分、意欲・行動及び思考障害の病相期があり、その症状は著しくないがこれが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

(2)認定にあたっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。

イ うつ病は、本来、症状の著明な時期と症状が消失する時期を繰り返す。

したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮。

また、うつ病とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定。

(3)日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

また、うつ病で現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず。

その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分考慮したうえで日常生活能力を判断。

(4)人格障害は、原則としてうつ病の認定の対象とならない。

(5)神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則としてうつ病の認定の対象とならない。

ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。

詳しくは、神経症・パーソナル障害と障害年金。精神病の病態を示しているのかをご覧下さい。

なお、認定にあたっては、精神病の病態がICD-10コードによる病態区分のどの区分に属する病態であるかを考慮し判断すること。

無年金を避けるため

精神の障害に係る等級判定ガイドライン

精神の障害に係る等級判定ガイドライン~判定平均と程度

うつ病など、精神疾患の審査に「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が運用されています。

審査で不支給と決定された割合が「都道府県間で異なる」ため、認定事務の実態を調査したところ、地域差があることがわかったためです。

地域差をなくし、統一する趣旨になり「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」で、等級を判定します。

うつ病に関する等級判定ガイドラインの具体的な等級や運用状況については、精神の障害に係る等級判定ガイドライン~精神疾患の審査は厳しいのかにまとめました。

参考引用:日本年金機構『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等

働きながらの受給は難しいのか

よく寄せられるご質問に「仕事をしていて収入がある場合、障害年金の受給は難しいのか?」というものがあります。

結論から申し上げますと、パートタイムで働いている場合は問題ないことも多いですが、正社員としてのフルタイム勤務や、安定した収入がある場合には審査が難しくなる傾向があります。

障害年金が主に、生活の所得補償を目的として支給されるためです。

つまり、通常の仕事ができるほど回復していると判断される場合、審査が厳しくなるのです。

この点については、日常の感覚で理解いただけるかと思います。

働きながらの受給について、こちらでも概要をまとめております。

うつ病の障害年金は働きながらもらえるのか?収入との調整や審査基準

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国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害

令和6年4月分からの年金額について

令和6年版厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に-(本文)|厚生労働省

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