「双極性障害で障害年金は難しいと聞くが、私はもらえるのか」
「実際に受給した例を知りたい」
「もらえる金額はどのくらいだろう」
このようなことでお悩みでしょうか?
双極性障害で障害年金をもらい忘れていませんか?
精神疾患でも年間最低60万円以上の受給が可能です。
はじめまして。障害年金の専門社労士、但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、13年以上にわたり累計約3,600件の「双極性障害など障害年金の無料相談から申請サポート」に携わってまいりました。
双極性障害で障害年金は難しいのか
テレビや新聞でも話題になっているように、精神疾患による障害年金の申請に関する相談が急増しています。
厚生労働白書としても「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」と題し、初めて、こころの健康について論じています。
しかし、受給するのは難しいのでは?との声も多く寄せられています。
確かに、双極性障害などの精神疾患は、肢体(体)などの障害年金に比べ難しい場合が多くあります。
理由は、病状を数値で明確に表すことができないからです。
大切なことは「双極性障害」という名称ではなく、病状がどのような状態であれば、認定基準に該当するのか」十分に理解することです。
以下の2点が特に大切です。
- 実際の障害状態と医師の診断書との整合性
- 診断書と病歴・就労等申立書の整合性
双極性障害による、障害年金申請に関する相談が大変増えております。
これらのポイントを押さえて、スムーズに申請を進めましょう。
以下の項目で、受給に関する詳細を解説いたします。
- 受給例
- 金額はいくらもらえるのか
- 認定基準
双極性障害の受給例
実際に「双極性障害」でご相談頂き、無事受給できた例をご紹介致します。
いろいろなケースがございますので、ご参考ください。
障害厚生年金3級(遡及請求3年)-180万円
認定 | 障害厚生年金3級 遡及請求3年 |
相談者 | 女性 東京都杉並区 |
傷病 | 双極性障害 抑うつ症状 |
金額 | 約60万円 遡及約180万円 |
元々外資系の会社に勤務されていました。
出張も多く激務のうえ、人間関係のトラブルもあり、以下の症状が現れました。
- 不眠
- 気分の落ち込み
- 極度の不安感・焦燥感
会社で倒れてしまうこともあったそうです。
今ではすぐにブラック企業と認定されますが、「24時間働けますか?」というキャッチコピーがはやった時代でした。
当時はこれが普通だと思われていました。
何よりもまず、体が第一です。
真面目な人ほど頑張りすぎてしまうので、ぜひお体を大切にしてください。
うつ病から双極性感情障害への経過
当初は双極性ではなく、うつ病と診断され休職されました。
抗うつ薬・抗不安薬・睡眠剤等の投薬治療を受けていましたが、抑うつ症状が続き、ほとんど寝たきりの状態でした。
病状が好転しないため、会社から転院を指示され次の病院へ。
3週間の入院を経て一旦復職したものの、躁転が見られ双極性感情障害と診断されました。
現在は短いスパンで躁状態になることがありますが、抑うつ症状が強い状態です。
初診日が在職中だったため、障害厚生年金を請求し無事厚生年金3級(遡及請求3年)の認定を受けました。
診断書の内容から見ても、妥当な結果です。
請求から決定までの期間は72日でした。
長い人生ですので、少しゆっくりしましょう。
ちなみに、厚生年金には3級がありますが、基礎年金は2級からしかありません。
3級と2級の間にはかなりハードルがあります。本当にここがもどかしいところです。
休職中で障害厚生年金2級-150万円
認定 | 障害厚生年金2級 障害認定日請求 |
相談者 | 男性 東京 |
傷病 | 双極性障害 |
金額 | 約150万円 |
休職中で、初診日は厚生年金加入時でした。
初診当時はうつ病の診断がされ、同じクリニックで半年後に双極性障害と診断されました。
うつ病での初診から1年3か月が経過しており、障害認定日を待って請求することにしました。
主治医に診断書をお願いしたところ、「うつ病は関係なく双極性障害と診断したところが初診となる。まだ1年6カ月経っていないので診断書は書けない」との返事でした。
初診日の定義と申請への影響
初診日は、あくまでお医者さんに最初にかかった日です。
ただ、ご本人と医師との信頼関係を壊したくないのと、その頃ちょうど復職を検討している時期でもあったため、少し時期を待つことにしました。
その後退職され、関西の実家に戻られてから連絡を頂き、請求に向けての準備を再スタートしました。
前述のように、障害認定日時点の診断書の初診日は双極性障害の初診日として記載しました。
加えて同じクリニックでうつ病の受診状況等証明書も記載して頂きました。
また、診断書に「20歳の頃精神科受診あり」との記述があったため、本人に確認しました。
その後5年近く問題はなかったこと、受診はされていないことを申立書に記載しました。
しかし、審査途中で20歳頃の精神科受診についての照会があり、追加書類を提出することになりました。
結果、請求通りの初診日で障害厚生年金2級(認定日)、3級(請求時)で認定されました。
等級についても納得のいくもので、期間は約4か月かかりました。
3年前に請求していたとしたら在職中だったこともあり、障害認定日で3級に該当するかしないかだったと思います。
時間はかかりましたが、結果として一番いい結果になったのではないでしょうか。
地域別受給例
受給事例が多くなってきたので、地域別にまとめました。
東京 | 埼玉 | 神奈川 |
双極性障害で障害年金の金額はいくら?
双極性障害で障害年金が無事受給できたあと、金額はいくらもらえるのでしょうか?
実際、受給が決まっても「いくらもらえるのか」がご心配だと思います。
そこで、双極性障害で受給できる等級ごとの金額や、加算される手当を解説していきます。
- 基礎::1級と2級
- 厚生::1級、2級、3級
このように、基礎と厚生が組み合わさって、2階建ての仕組み(3級は厚生年金のみ)になっています。
もらえる金額もこれに伴って説明していきます。
また、受給した後、国民年金保険料が免除になる制度がありますので、ご検討下さい。
双極性障害の障害基礎年金額
双極性障害で、障害基礎年金の1級又は2級に認定されたときの金額を解説していきます。
障害基礎年金の等級 | 金額 |
1級 | 1,020,000円/年 +子の加算 |
2級 | 816,000円/年 +子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ることになります。
初回は臨時で奇数もありえますが、以後必ず偶数月に2か月分まとめて受け取る形になります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。
一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目/2人目 | 1人につき 234,800円 |
3人目以降 | 1人につき 78,300円 |
双極性障害の障害厚生年金額
双極性障害で、障害厚生年金1級又は2級に認定された場合、基礎年金に厚生年金が加算されます。
3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。
金額は、給与や勤めていた期間(年齢)に比例するため、人によりまったく違います。
例えば、給与が30万円の方と45万円の方では、受給金額に1.5倍の差が生じます。
障害厚生年金 | 金額 |
1級 | 報酬比例額加算×1.25 + 配偶者加給年金 |
2級 | 報酬比例額加算×1.0 + 配偶者加給年金 |
3級 | 612,000円/年 金額は一律 |
報酬比例部分に300月みなしあり
報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます。
例えば、会社に入社後、それほどたたずしてうつ病になり障害年金の受給を開始した場合など。
最低25年は年金を納付したものとして、ある程度の額の厚生年金が受給できるようになっています。
また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金の計算の基礎とはされません。
年金制度自体は批判も多いのですが、なかなか手厚くなっています。
計算の基礎となるのは、障害認定日までに納付したものまでです。
配偶者加給年金
双極性障害で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、どうなるでしょうか。
その場合、配偶者である夫についても加給年金※が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級 (3級はなし) |
234,800円 |
年金生活者支援給付金
双極性障害の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
年金生活者支援給付金は、基礎も厚生も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
等級 | 金額 |
1級 | 月6,638円 |
2級 | 月5,310円 |
以上、双極性障害でもらえる金額の詳細は下記にまとめました。
双極性障害の障害年金でもらえる金額はいくら?に概要をまとめました。
双極性障害の時効と遡及請求
残念ながら双極性障害には時効があります。
申請しなければ、過去のものは最大5年間で消滅してしまいます。
もし遡って請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
これを遡及請求といいます。
受給資格
双極性障害で障害年金を申請するために、絶対にはずせない3つの要件があります。
初診日と保険料納付要件を満たしたうえで、障害認定日に「双極性障害の認定基準に該当」すれば、受給できます。
障害認定日は初診日から1年6か月経過したところになります。
精神疾患の認定基準
まず、精神疾患全体の認定基準は共通のため、以下参照下さい。
精神疾患全体の基準は、等級について次のように規定しています。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
→身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできない又は行えない程度 |
2級 | 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
→家庭内の軽食・最低限の洗濯等はできるが、それ以上の活動はできない程度 |
3級 | 精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの →労働することはできるが、健常者と同等に労働することはできない程度。 |
実際、この表を見てもいまいちピンとこないと思いますが、以下の文章が重要になります。
精神の疾患の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとする。
つまり、双極性障害がどの程度重いのかうまくお医者さんとコミュニケーションが取れていないことも多く、診断書の内容が症状にあっていない場合があります。
双極性障害で障害年金が難しい大きな理由です。
つまり病歴、治療の経過、仕事や日常生活の状況などを主治医にうまく伝えることが大事です。
精神疾患は多種多様であり、その症状は同一の原因であっても非常に異なることがあります。
そのため、認定にあたっては以下の点が重要です。
- 具体的な日常生活状況の評価: 日常生活における具体的な困難の状況を詳細に判断します。
- 原因および経過の考慮: 精神疾患の原因とその経過をしっかりと考慮することが必要です。
これらの要素を総合的に判断することで、障害年金の認定が行われます。
双極性障害の認定要領
簡単な目安として、次のような病状で受給できる可能性があります。
- 日常生活がほぼ困難な状態。
- 何も手につかないなど、日常生活に著しい制限を受けている。
- 長期の安静が必要で、生活に著しく支障がある状態。
- 働くことができない、または退職し仕事への復帰が難しい状態。
加えて、就労状態も判断基準となります。
初診日から1年6か月経過時点、および現在の各時点での仕事の状態(例:正社員、パート・短時間勤務)も重要です。
もう一つ、日常生活の能力も判定します。
- 適切な食事(配膳から食事)
- 身辺の清潔保持(洗面や風呂・洗髪)
- 金銭管理と買い物(やりくりが独力でできるか)
- 通院と服薬の状態(規則的な通院や服薬)
- 他人との意思伝達及び対人関係(他人との意思疎通)
- 身辺の安全保持及び危機対応(事故から身を守れるか)
- 社会性(公共施設の利用など)
最終的に社会生活の様子や病状の長さ等で、総合的に判断します。
双極性障害は、以前の名称である躁うつ病と呼ばれることもあります。
うつ病と並び年金の対象となりますが、審査上では「気分(感情)障害」という名称で分類されています。
受給資格を得るために大切なことは、双極性障害が認定基準に該当するかどうかを十分に理解することです。
双極性障害は「常時援助が必要」→「著しい制限」→「労働が制限」という流れとなります。
審査の感覚はつかめますでしょうか。
(1)双極性障害は各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
等級 | 双極性障害の状態 |
1級 | 高度の気分、意欲・行動及び高度の思考の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの |
2級 | 気分、意欲・行動及び思考の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限をうけるもの |
3級 | 気分、意欲・行動及び思考の病相期があり、その症状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの |
(2)双極性障害年金の認定にあたっては、次の点を考慮のうえ慎重に行います。
本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。
したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。
また、双極性障害年金とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
(3)双極性疾患の日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない。
その療養状況を考慮するとともに仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分考慮したうえで日常生活能力を判断。
(4)人格障害は、原則として双極性疾患の認定の対象とならない。
神経症の認定
神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として双極性障害年金の認定の対象とはなりません。
ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱います。
詳しくは、神経症で障害年金の申請はできるのか?をご覧下さい。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
双極性障害など、精神疾患の審査に「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が運用されています。
審査で不支給と決定された割合が「都道府県間で異なる」ため、認定事務の実態を調査したところ、地域差があることがわかったためです。
地域差をなくし、統一する趣旨になり「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」で、等級を判定します。
双極性障害に関する等級判定ガイドラインの具体的な等級や運用状況については、精神の障害に係る等級判定ガイドライン~精神疾患の審査は厳しいのかにまとめました。
参考引用:日本年金機構『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等
働いている場合と審査の難しさ
よくご質問をいただくのが、「仕事をして収入があった場合、障害年金は難しくなるのか?」という点です。
等級によって異なりますが、審査は基本的に日常生活に著しい制限があるかどうか、および労働(仕事)の制限によって判断されます。
残念ながら、パートタイムのお仕事については問題ありませんが、正社員などの場合は審査が難しくなる傾向があります。
長く述べてまいりましたが、今後、双極性障害の年金申請はますます増えると予想されますが、同時に審査は難しくなっていくと思われます。
冒頭で申し上げたように、肢体(体)などの年金に比べて難しい場合が多くなります。
数値で明確に表すことができないからです。
ご本人の話や症状に基づき、お医者さんが判断するしかありません。
双極性障害年金は、お医者さんの「診断書」とご本人の「病歴・就労状況等申立書」によって決定されます。
しかし、ご本人の言い分とお医者さんの記載内容がかなり乖離していることが多くあります。
コミュニケーション不足なのか、診療期間が短いのか、本当に伝わっていないのかが問題となります。
お医者さんが元気づけるために「大丈夫だよ!」と言うこともあるでしょう。
双極性障害で年金を受給するには、特に診断書と病歴・就労状況等申立書の整合性をとることが非常に重要です。
お医者さんの意見を尊重しつつ、双極性障害の状態が自分の現在の状況に合っているかを細かく伝える必要があります。
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令和6年版厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に-(本文)|厚生労働省
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害
令和6年4月分からの年金額等について