「双極性障害で障害年金を受給した例を知りたい。」
「今から障害年金を申請したいが、もらえる金額や認定基準を知りたい。」
そのようなご相談に向けてお話しします。
はじめまして。
社会保険労務士の但田美奈子(ただみなこ)と申します。
東京日本橋にて、10年以上「双極性障害など障害年金申請のサポート」を行っております。
精神疾患による、障害年金申請の相談が大変増えております。
しかし、受給するのは難しいという声も目立ちます。

実際のところはどうなのでしょう?以下の順番で詳しく解説いたします。
- 受給事例 実際に受給された例
- もらえる金額 いくらもらえるのか
- 受給資格 受給するための要件
- 認定基準 認められる基準
受給例
受給するのは難しいという声も、ネット上目立ちますが現実はどうなのでしょうか。
実際に受給したいろいろなケースがございます。参考下さい。
障害厚生年金3級(遡及請求3年)
認定 | 障害厚生年金3級 遡及請求3年 |
相談者 | 女性 東京都杉並区 |
傷病 | 双極性障害 抑うつ症状 |
受給額 | 約60万円 遡及約180万円 |
元々外資系の会社に勤務されていました。
出張も多く激務のうえ人間関係のトラブルもあり以下の症状が。
- 不眠
- 気分の落ち込み
- 極度の不安感焦燥感に襲われる
会社で倒れてしまうこともあったそうです。
いまだとすぐブラック企業認定ですが・・・。
24時間働けますか?というキャッチコピーがはやった時代もあり、当時は普通だと思われていたとのこと。
何にしてもまず、体が第一です。
真面目な人ほど頑張ってしまうので、お体を大事にしていきましょう。
当初は双極性でなく、うつ病と診断され休職されました。
抗うつ薬・抗不安薬・睡眠剤等の投薬治療を受けていましたが、抑うつ症状が続き殆ど寝たきり状態。
病状が好転しない為、会社から転医を指示され次の病院へ。
3週間の入院を経ていったん復職したが、躁転がみられ双極性感情障害と診断。
現在は短いスパンで躁状態になることがあるが、抑うつ症状が強い状態。
初診日が在職中だったため、障害厚生年金を請求し無事厚生年金3級(遡及3年)認定。
診断書の内容から、妥当な結果です。請求から決定まで期間は72日でした。
長い人生。少しゆっくりしましょう。
ちなみに厚生年金は3級があるのですが、基礎年金は2級からしかありません。
3級と2級の間は、かなりハードルがあります。

本当にここがもどかしいところです。
休職中で障害厚生年金2級
認定 | 障害厚生年金2級 |
相談者 | 男性 東京 |
傷病 | 双極性障害 |
受給額 | 約150万円 |
休職中で、初診日は厚生年金加入時。
初診当時はうつ病の診断(同じクリニックで)半年後に双極性障害と診断。
うつ病での初診からは1年3ヶ月経過しており、障害認定日を待って請求をすることに。
主治医に診断書をお願いしたところ。
うつ病は関係なく双極性障害と診断したところが初診となる=まだ1年6カ月経っていない・・・というお返事。
だから、まだ診断書は書けないというものでした。

初診日はあくまでお医者さんに最初にかかった日です。
ただ、ご本人と医師との信頼関係を壊したくないのと、その頃丁度復職を検討している時期でもあった為少し時期を待つことに。
その後退職され、関西の実家に戻られて連絡を頂きました。
そこから、請求に向けての準備再スタートです。
前述のように、障害認定日時点の診断書の初診は双極性障害初診の日でそのまま記載。
加えて同じクリニックでうつ病の受診状況等証明書も記載頂きました。
また診断書に「20歳の頃精神科受診あり」との記述があったので本人に確認。
その後5年近く問題はなかったこと、受診はされていないことを申立書に記載。
やはり、審査途中で20歳頃の精神科受診についての照会があり追加書類提出・・・。
結果、請求通りの初診日で障害厚生年金2級(認定日)、3級(請求時)で認定されました。
等級についても納得のいくものでした。期間は約4か月。
3年前に請求していたとしたら在職中だったこともあり、障害認定日で3級に該当するかしないかだったと思います。

時間はかかりましたが、結果として一番いい結果になったのではないでしょうか。
地域別受給例
受給事例が多くなってきたので、地域別にまとめました。
東京 | 埼玉 | 神奈川 |
双極性障害で障害年金の金額はいくら
双極性障害で障害年金はいくらもらえるのでしょうか?等級ごとの金額や加算される手当を解説していきます。
双極性障害の障害基礎年金額
双極性障害で障害年金が認定された後、もらえる金額は障害基礎年金か障害厚生年金かで異なります。
もし遡及請求できる場合、最大で5年間遡って受け取れます。
もちろん全員が該当するわけではないのですが、まだ障害年金を請求していないとき、最大5年分遡ることができるのです。これを遡及請求(そきゅうせいきゅう)といいます。
障害等級 | 金額 |
障害基礎年金
1級 |
993,750円/年
+子の加算 |
障害基礎年金
2級 |
795,000円/年
+子の加算 |
受給権を得た後、翌月分から支給されます。
この金額を6等分して偶数月に受け取ります。
※決定が早い場合など、初回のみは(奇数月分の)1か月分支給ということもあります。
子の加算
18歳の年度末までの、子供がいる場合に加算されます。

一般的には高校卒業までということです
子の人数 | 金額 |
1人目
2人目 |
1人につき 228,700円 |
3人目以降 | 1人につき 76,200円 |
双極性障害の障害厚生年金額
双極性障害で障害年金1級、2級に認定された場合、障害基礎年金に厚生年金が加算されます。
3級は厚生年金しかありません。
障害厚生年金の金額は、給与や厚生年金を納めていた期間(年齢)に比例するため、人により金額はまったく違います(給与30万円と45万円で1.5倍違います)。
障害基礎年金
1級 |
報酬比例額加算×1.25
+配偶者加給年金 |
障害基礎年金
2級 |
報酬比例額加算×1.0
+配偶者加給年金 |
障害厚生年金
3級 |
596,300円
金額は一律 |
配偶者加給年金
双極性障害で1級又は2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるとき、配偶者加給年金が支給されます(配偶者の年収が850万円未満)。
よくご質問を受けますが、奥様が障害厚生年金2級以上を受給した場合、配偶者である夫についても加給年金が支給されます。
※配偶者自身が20年以上の加入期間の老齢厚生年金や、障害年金を受給していないこと(受給するまではもらえます)。
障害等級 | 金額 |
1級・2級
(3級はなし) |
228,700円 |
年金生活者支援給付金
双極性障害の障害年金は、年金生活者支援給付金という手当も加算されます。
障害年金を受給した際「年金生活者支援給付金」が加算して支給されるようになりました。
年金生活者支援給付金は基礎年金も厚生年金も変わらず2級以上であれば支給されます。
金額は毎年変動します。
2級 | 月5,140円 |
1級 | 月6,425円 |
以上、もらえる金額には年収などにより、いろいろと例外もあります。
障害年金の受給が無事決まった後、金額はいくらもらえるのでしょうか?

以下のような点が、障害年金を申請する際のポイントになります。
- 初診日の特定
- Ⅰ型はうつと躁状態。Ⅱ型は主にうつ状態で診断書を作成したときの実生活との整合性
- 病歴・就労等申立書と診断書の内容の整合性
受給資格
受給資格を得るために以下の3つが大切になります。
- 初診日
- 保険料納付要件
- 認定基準
初診日と保険料納付要件まとめ。
障害年金をもらうために大切な3つの要件(初診日・保険料納付・認定基準)
認定基準は国の基準に沿っての解説のためかなり複雑になります。

以下は読んでいくと相当な量です。受給判定はお電話やメールでもいたしますので、ご相談ください
精神疾患の認定基準
※以下、「日本年金機構」に掲載されている認定基準をもとにわかりやすく加筆修正。
まず、精神疾患全体の障害年金認定基準を参照下さい。
精神疾患で障害年金をもらうために大切なことは、どのような状態であれば精神疾患で障害年金の認定基準に該当するのかです。
双極性障害の障害年金認定基準
簡単な目安ですが次のような病状で、受給できる可能性があります。
- 日常生活が1人で、ほぼ困難な状態。
- 何も手につかないなど、日常生活が著しい制限を受けている。
- 長期の安静が必要な状態であり、生活に著しく支障がある。
- 働くことができないか、退職し仕事へ復帰が難しい状態。
加えて、双極性疾患での就労状態を判断。
初診日と1年6か月経過時、現在の各時点での仕事の状態(例:正社員、パート・短時間)も大事です。
もう一つ、日常生活の能力も判定します。
- 適切な食事(配膳から食事)
- 身辺の清潔保持(洗面や風呂・洗髪)
- 金銭管理と買い物(やりくりが独力でできるか)
- 通院と服薬の状態(規則的な通院や服薬)
- 他人との意思伝達及び対人関係(他人との意思疎通)
- 身辺の安全保持及び危機対応(事故から身を守れるか)
- 社会性(公共施設の利用など)
最終的に社会生活の様子や病状の長さ等で、双極性疾患を総合的に判断していきます。
双極性障害は、以前の名称である躁うつ病と呼ばれる方もいらっしゃいます。
うつ病と並び年金の対象となりますが、審査上では「気分(感情)障害」という名称で分類されています。

受給資格を得るために大切なことは、双極性障害が認定基準に該当するかどうかを十分に理解することです。
双極性障害は常時援助→著しい制限→労働が制限という流れとなります。
審査の感覚はつかめますでしょうか。
(1)双極性障害は各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
等級 | 双極性障害の状態 |
1 級 | 高度の気分、意欲・行動及び高度の思考の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの |
2級 | 気分、意欲・行動及び思考の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限をうけるもの |
3級 | 気分、意欲・行動及び思考の病相期があり、その症状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの |
(2)双極性障害年金の認定にあたっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。
本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。
したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。
また、双極性障害年金とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
(3)双極性疾患の日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない。
その療養状況を考慮するとともに仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分考慮したうえで日常生活能力を判断。
(4)人格障害は、原則として双極性疾患の認定の対象とならない。
神経症
神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても原則として双極性障害年金の認定の対象とならない。
ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。
詳しくは、神経症で障害年金の申請はできるのか?をご覧下さい。
障害年金の中でも相談が非常に多いのが精神疾患です。主に精神病と神経症があります。神経症は障害年金の対象となるのでしょうか。専門の社労士が解説。
等級判定ガイドライン
双極性障害年金の審査にガイドラインが運用されています。
審査の地域格差をなくすためのものであり、以下にまとめました。
精神疾患での、障害年金の審査が等級判定ガイドラインにより大きく変わりました。専門の女性社労士が解説。
働いている場合審査はどうなる
よくご質問をいただくのが、仕事をして収入があった場合、障害年金の対象になるのか?です。
等級によっても異なりますが、審査は基本的に日常生活に著しい制限があるかと労働(仕事)の制限により判断されます。
仕事や収入があると精神疾患で障害年金の申請はできないのかに詳しくまとめました。
よくご質問を頂くのが、精神疾患で仕事をしていたり、収入があったりしても障害年金の対象になるのか?ということです。障害年金の認定基準は、日常生活に著しい制限があるのか?労働(仕事)の制限はあるのか?により判断されます。
長く述べてまいりましたが、今後双極性障害の年金申請はますます増えますが、同時に審査は厳しくなっていくと思われます。
双極性障害で年金を申請し認められるのは、肢体(体)などの年金に比べて難しい場合が多いです。
双極性疾患は数値で明確に表すことができないからです。

ご本人のお話しと症状でお医者さんが判断するしかありません。
双極性障害年金はお医者さんの「診断書」と「病歴就労状況等申立書」によって決定されます。
しかし、ご本人の言い分とお医者さんの記載している内容がかなり乖離していることが多くあります。
コミュニケーション不足なのか、まだ診療期間が短いのか本当に伝わっていないのか?
双極性疾患をお医者さんが元気づけるため、「大丈夫だよ!」といわれることもあるでしょうし。
双極性障害で年金を受給するには、特にきちんと診断書と病歴就労状況等申立書の整合性をとっていくことがとても大事になります。
お医者さんのご意見を尊重したうえで、双極性障害の状態が自分の現在の状況とあっているのか、細かく伝えていく必要があります。
双極性障害の年金申請はいろいろと複雑な点もあり、女性社労士が初回無料相談で受給判定や申請サポートをしています。
双極性障害(躁うつ病)「双極性障害」とは
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害
令和5年4月分からの年金額等について
障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法